以下の文章は、電子フロンティア財団の「Global Age Verification Measures: 2024 in Review」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

我々EFFは今年、子どものオンライン保護という大義名分のもとで導入が検討されている年齢確認制度について、その放棄をカナダからオーストラリアまで、世界中の政府に訴えかけてきた。こうした強制的な年齢確認の仕組みは、結局のところ監視システム以外の何物でもない。すべての人の表現の自由とプライバシーを脅かし、守ろうとするものよりも大きな害悪をもたらすのである。

オンラインだけが子どもたちを傷つけているわけではない

11月、オーストラリアのアンソニー・アルバネーゼ首相は、若者をソーシャルメディアの有害な影響から守るための法整備が必要だと声高に主張した。これを受けてオーストラリア議会はOnline Safety Amendment (Social Media Minimum Age) Bill 2024を可決した。16歳未満の子どものソーシャルメディア利用を禁じ、プラットフォームには3000万ドル以上の罰金を科すことで、ユーザの年齢確認のための「合理的な手段」――ただし何が合理的なのかは定義されていない――を講じるようを迫るものだ。これは、フランスが昨年導入した15歳未満の子どもの保護者同意なしのソーシャルメディアアクセス禁止や、ノルウェーが同様の禁止措置に追随を表明した動きと軌を一にしている。

しかし、ソーシャルメディアがそれほど有害だという研究結果はない。子どもたちが傷つくのは、インターネットの無限ループに陥った結果とは限らない。インターネットの外には、人々の経験に影響を与える広大な世界が広がっている。むしろ、あらゆる証拠が示すのは、多くの若者がソーシャルメディアから前向きな影響を受けているという事実だ。戦争や気候変動に関する真実のニュースは、オンラインだけでなく、朝食時のテーブルの新聞や街頭の広告でも目にする。いじめのような有害な行為も、オンラインとオフラインの双方で起こりうるのである。

インターネットは、コミュニティと自分らしさを見出そうとする若者と大人の双方にとってかけがえのない場所となっている。米国における年齢確認措置について、今年我々が指摘した通り、メンタルヘルス、セクシュアリティ、ジェンダーアイデンティティ、薬物依存など、深刻な問題について議論の場を設けたいオンラインサービスは、すべて未成年者を拒絶しなくてはならず、そのための年齢確認ツールを導入せざるを得なくなる。

子どものアクセス制限は、すべての人の自由を奪う

この波のように押し寄せる年齢確認法案によって、世界中の政府は、合法的な表現にアクセスするためだけに、インターネットユーザに重い負担を課し、匿名性やプライバシー、セキュリティの放棄を強要している。これは、その表現が性的あるいは露骨なコンテンツである場合でも、大人にとっては合法なはずのものだ。こうした法律は検閲法に他ならず、性的コンテンツを禁止するルールは往々にして、周縁化されたコミュニティとそれを支援するグループに最も大きな打撃を与える。歴史は過剰な検閲が避けられないことを教えている

カナダも今年、年齢確認措置(法案S-210)を導入した。これは露骨なコンテンツを「利用可能にする」すべての商業的インターネットサービスに年齢確認サービスの採用を義務付けることで、若者が性的に露骨な素材に触れることを防ごうとするものである。「ポルノ依存症の発達」や「とりわけ女性に対するハラスメントと暴力を容認する態度の発達につながるジェンダーステレオタイプの強化」といった害悪への対策として導入されたが、オンラインアクセスの際にすべての年齢の人々にIDの提示を求めることは、女性や若者の助けにはならない。こうした大規模サービスは、性的に露骨なコンテンツをホストまたは送信していることを知ると、自動化ツールと性急な人間の判断の両方を用いて、単純にそれを禁止するか削除することを選ぶだろう。これは、性的に露骨な素材を販売したり意図的に配布したりする人々だけでなく、知らずにそれを送信してしまった人々にも法的リスクをもたらすことになる。

データ監視の脅威――包括的なプライバシー保護の欠如

年齢確認が義務化されれば、ユーザは自分が提供したデータが保持され、予期せぬ方法で使用されたり、見知らぬ第三者と共有されたりしないことを確信できない。また、必要なIDを持っていない何百万人もの成人が、オンライン上の保護された表現へのアクセスを完全に遮断されることになる。

オンラインの年齢確認は、店頭で身分証を提示して商品を購入する行為とはまったく異なる。包括的なデータプライバシー法が存在しない地域では、監視のリスクは計り知れない。第一に、オンラインで識別情報を提供する人は、ウェブサイトがその情報をどれだけの期間保持し、どのように使用または開示するかを知る術がない。サードパーティの仲介業者、データブローカー、広告主など、データにアクセスできる可能性のあるすべての関係者にデータの削除を義務づけない限り、運転免許証などのセンシティブな文書の保存や処理を担当する企業でデータ侵害やその他のセキュリティ上の被害が発生した場合、ユーザは極めて危険な状況に置かれることになる。

第二に、対面での年齢確認とは異なり、潜在的な確認システムに準拠するためのウェブサイトの最も一般的な方法は、すべてのユーザに対して、データが豊富な政府発行のIDや個人を特定する情報を含むその他の文書を、一時的な提示ではなく、アップロードして提出することを要求するものとなるだろう。米国の裁判所に提出した意見書でEFFが説明したように、これは匿名性、プライバシー、セキュリティに関する深刻な懸念を引き起こす。ウェブサイトから情報を得るために、政府に対して自分が閲覧しているサイト――性的嗜好やその他の極めてプライベートな情報を明らかにする可能性がある――を開示する必要などないのである。

こうした提案は米国にも波及している。ニューヨーク州司法長官に提出したコメントで、我々はさまざまな年齢確認手法を分析した。その結果、正確でありながらプライバシーを保護できる手法は存在しないことが明らかになった。

有効な年齢確認方法をめぐる混迷が、その不存在を物語る

欧州委員会もでデジタルサービス法(第28条)の子どもの安全に関する条項の実施ガイドラインを作成中で、効果的な年齢確認の基準が策定されることになっている。同時に、2026年に予定されているEU全域でのデジタルIDの展開に先立ち、デバイスレベルの年齢確認を実装するための「ミニEU IDウォレット」の提案を募集している。一方で、小規模なソーシャルメディア企業や出会い系プラットフォームは、年齢確認はデバイスやアプリストアのレベルで行われるべきだと長年主張してきており、委員会の計画を支持する公算が大きい。2025年に向けて、EFFは、DSAのリスク軽減義務に従うためにポルノプラットフォームが年齢確認を採用することを委員会が促すようになるだろう。我々はこれらの動向を引き続き注視していく。

年齢確認の義務化は、オンライン上の若者を守るための正しいアプローチとは言えない。2025年も我々EFFは、世界中の政治家に対してこれらの欠点を認識するよう求め、すべての人々をオンラインの害悪から保護するために、より侵襲性の低いアプローチを模索するよう働きかけていく。

本稿は、我々EFFの「Year in Review」シリーズの一部である。2024年のデジタルライツをめぐる戦いに関する他の記事はこちら

Global Age Verification Measures: 2024 in Review | Electronic Frontier Foundation

Author: Paige Collings / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: December 27, 2024
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Edoardo Busti