以下の文章は、電子フロンティア財団の「Restrictions on Free Expression and Access to Information in Times of Change: 2024 in Review」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

今年は歴史的な1年となった。世界人口のほぼ半数が居住する国々で選挙が実施され、戦争が勃発し、そして複数の政府が崩壊もしくは混乱に陥った。また、新たな技術開発、政策変更、そして法制度の整備が進んだ年でもあった。その激動のなか、表現の自由はかつてないほど重要性を増した。それと同時に、世界中で表現の自由に対する数多くの挑戦を目の当たりにした。新たな言論規制法から全面的なインターネット遮断まで、2024年にオンライン上の表現の自由に対して確認された脅威のいくつかを紹介する。

インターネット遮断

少なくとも64カ国で国政選挙が実施された年において、インターネット遮断が日常的に行われたことは、残念ながら驚くべきことではない。インターネット遮断を監視し、KeepItOn Coalition(EFFも参加メンバーである)を運営するAccess Nowによれば、7カ国――コモロ、アゼルバイジャン、パキスタン、インド、モーリタニア、ベネズエラ、そしてモザンビーク――が選挙期間中に少なくとも部分的にインターネットアクセスを制限した。これらの制限は、現地の状況に関する情報共有を妨げるだけでなく、基本的なサービス、商取引、そしてコミュニケーションの利用をも阻害している。

紛争時における言論弾圧

しかし、インターネットアクセスを制限する口実として政府が用いるのは選挙だけではない。紛争やデモの際、インターネットインフラへのアクセスはコミュニケーションと報道に不可欠だ。政府はこれを認識しており、過去数十年にわたって情報の自由な流れを管理する手段としてアクセス制限を武器化してきた。今年、スーダンは紛争と避難民発生の最中に全面的な通信遮断を実施した。イラン政府は過去2年間、抗議行動の際にインターネットとソーシャルメディアへのアクセスを繰り返し制限してきた。そしてガザのパレスチナ人は、イスラエル当局によって引き起こされた度重なるインターネット遮断の対象となっている。

ソーシャルメディアプラットフォームもまた、とりわけパレスチナに関して、今年の言論の抑圧に加担している。我々は、イスラエル・サイバーユニットの要請に基づくテック企業の不当なコンテンツモデレーションをまとめ、「from the river to the sea」というスローガンの使用についてMetaの監督委員会に意見を提出した(これについて監督委員会は注目すべきことに同意を示した)。また、政府と企業によるプラットフォーム規制が表現に与える不均衡な影響について懸念を表明する意見を、国連表現の自由と意見に関する特別報告者に提出した。

オンライン上の表現の自由を確実に保護する取り組みにおいて、我々は2024年、独自のグローバルコンテンツモデレーション連合、Middle East Alliance for Digital RightsDSA Human Rights AllianceEDRI、そして多くの他の団体や連合と連携した。

コンテンツ、年齢、そしてIDに関する制限

2024年のもう一つの憂慮すべきトレンドは、複数の国がインターネットへのアクセスを年齢によって制限しようとする動きを強めたことである。これはしばしばオンラインでのID提示の義務づけという形態を取り、人々が望む形でIDを使用する能力を阻害している。カナダでは、過度に広範な年齢確認法案であるS-210が、若者が性的に露骨な内容のオンラインコンテンツに接触するのを防ごうとしているが、これはすべてのユーザがオンラインに接続する前にIDを提出することを要求するものだ。EFFが最初の導入以来反対している英国のオンライ安全法も、年齢確認を義務づけ、規制当局が未成年者に「有害」と判断した合法コンテンツを掲載するサイトやアプリに罰則を科そうとしている。同様に米国では、(いまだくすぶり続ける)子どもオンライン安全法が「合法だが不適切な」コンテンツのモデレーションを企業に要求し、ユーザのプライバシーを脅かす年齢確認を強制しようとしている。そして最近では、オーストラリアも曖昧な法律を制定し、10代の若者と子どもたちのソーシャルメディアへのアクセスを遮断しようとしており、これは表現の自由とプライバシーの保護という観点から大きな後退と言わざるを得ない。

これらの政府の取り組みは表向き子どもたちを害から守ることを掲げているが、私たちが繰り返し指摘してきた通り、学校やコミュニティでは得られない重要な情報へのアクセスを妨げることで、むしろ若者たちに害を及ぼす危険性をはらんでいる。

世界各国で制定されたこれらの規制によって、とりわけ大きな影響を受けているのがLGBTQ+コミュニティである。6月には、多くの国でオンライン上のLGBTQ+の声に対する検閲が勢いを増している実態を明らかにした。私たちは、人々にとって不可欠な情報とコミュニケーションの機会を奪おうとする政府の動きを、今後も注視していく。

サイバー犯罪

我々は長年にわたり、サイバー犯罪法の問題点を指摘してきた。2024年の取り組みの中心となったのは、サイバー犯罪捜査における国境を越えた証拠収集を各国に認める国連サイバー犯罪条約への対応だった。一見すると合理的に思えるかもしれないが、問題の本質は、多くの国が「サイバー犯罪」の名の下に言論を取り締まる手段として法を悪用していることにある。その典型例がヨルダンで、2023年に制定されたサイバー犯罪法は、LGBTQ+の人々、ジャーナリスト、人権活動家、そして政府批判を行う市民に対する弾圧の道具となっている。

EFFはヨルダンのサイバー犯罪法をはじめ、中国、ロシア、フィリピンなど、世界各地の問題のあるサイバー犯罪法と戦ってきた。今後もその取り組みを継続していく。

本稿は、我々EFFの「Year in Review」シリーズの一部である。2024年のデジタルライツをめぐる戦いに関する他の記事はこちら

Restrictions on Free Expression and Access to Information in Times of Change: 2024 in Review | Electronic Frontier Foundation

Author: Jillian C. York / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: December 29, 2024
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Ashim D’Silva