以下の文章は、電子フロンティア財団の「Fighting Online ID Mandates: 2024 In Review」という記事を翻訳したものである。
今年、米国のおよそ半数の州がオンラインプラットフォームに年齢確認を義務づける法律を可決した。EFFはこれらの取り組みに反対の声を上げてきた。こうした法律はインターネットを検閲し、オンライン上の表現活動を制限するものだからだ。「子どもを守る」と謳われるこれらの法律だが、実際にはメリットよりもデメリットのほうが大きい。大人も子どもも含めたあらゆる人々の基本的な表現の自由を損ない、インターネットへのアクセスを妨げ、すべてのユーザのプライバシー、匿名性、セキュリティを危険にさらすのだ。
年齢確認法案の典型的な内容は、オンラインサービスに対し、特定のコンテンツやサービスへのアクセスを許可する前に、すべてのユーザの年齢確認を求める。その多くは、ID確認や生体認証スキャン、その他怪しげな「年齢推定」手法といった、プライバシーを侵害するツールを使用する。テキサス州のH.B. 1181、フロリダ州のH.B. 3、インディアナ州のS.B. 17などは、年齢確認を明確に義務づけている。一方で、ミシシッピ州のH.B. 1126、オハイオ州のParental Notification by Social Media Operators Act、連邦法の子どもオンライン安全法のように、年齢確認は不要と主張しながら、未成年者に特定のコンテンツや機能を見せた場合にプラットフォームに責任を負わせると脅す法案もある。これらの法案は疑問を投げかけている――年齢を確認せずに、どうやってプラットフォームはユーザが未成年者かどうかを判断できるのだろうか。
EFFの答えは明快だ。「できない」。そのため我々は、これらの法案を「暗黙の年齢確認義務化」と呼んでいる。表向きは年齢確認を否定しながら、結局のところプラットフォームに年齢確認を強いるか、あるいはさらに悪いことに、責任逃れのために「未成年者に有害」とされるコンテンツや機能を――若者に限らず――すべてのユーザに対して検閲することを強制するためだ。
年齢確認要件は、オンラインで若者を守るための方策として間違ったアプローチである。合法的なオンライン上の表現活動にアクセスするのに、極めてセンシティブな個人情報を提供したり、プライバシーを侵害する生体認証監視を必須化するようなことはあってはならない。
州の年齢確認法案に反対するEFFの活動
昨年、全米各地で若者向けの危険なソーシャルメディア規制が導入された。今年はさらに、この不適切な法案の波が押し寄せた。2024年12月時点で、ほぼすべての米国の州議会が少なくとも1つの年齢確認法案を提出し、約半数の州が少なくとも1つを可決している。
一方、裁判所はEFFの主張に同意している。全米各地の裁判所は、この「子どもの安全」を掲げる法案を繰り返し、一貫して違憲と判断し、インターネットユーザの修正第1条の権利を侵害することなくオンラインの年齢確認要件を課すことは事実上不可能だと認めている。2024年にはオハイオ州、インディアナ州、ユタ州、ミシシッピ州の連邦地方裁判所が、各州の年齢確認義務化を差し止めた。これらの判決は、こうした法律が違憲であるだけでなく、そもそも政策として間違ったアプローチであることを浮き彫りにした。立法者が若者を守りたいなら、インターネットを検閲したり、若者のアクセスを遮断するといった言論の制限によってではなく、すべてのユーザにとって喫緊の課題であるプライバシーと競争の問題に取り組む法案を推進すべきだ。
この立法攻勢に直面してデジタルライツを守り、州の年齢確認義務化を阻止するために、EFFが今年行った活動を振り返る。
カリフォルニア州
1月、我々は特に曖昧かつ拙劣な提案に対してパブリックコメントを提出した。カリフォルニア州の住民投票提案23-0035は、「子どもに対する当然の配慮と技能の責任」に違反した場合、オンライン情報提供者に最大100万ドルの損害賠償を請求できるというものだった。この提案の曖昧な基準と法外な法定賠償金によって、プラットフォームは法的リスクを回避するために、ユーザコンテンツの検閲や年齢確認を強いられ、未成年者も大人も含めた重要なオンライン上の議論へのアクセスが著しく制限されることを我々は指摘した。幸いにもこの法案は2024年の投票には掛けられなかった。
2月には、カリフォルニア州のAge Appropriate Design Code(AADC)が修正第1条に違反していると主張する法廷助言書を提出した。第9巡回区控訴裁判所に対し、AADCの年齢推定スキームと「有害なコンテンツ」の曖昧な定義に基づき、法律全体を違憲と判断するよう求めた。なお、この法案には、違憲の検閲条項から切り離せば存続できたかもしれないプライバシー条項もいくつか含まれていた。8月の判決で第9巡回区控訴裁判所は、AADCの一部が修正第1条に違反する可能性が高いと認め、憲法上の異議申し立てに耐えうるプライバシーファースト法の作り方について、立法府に有用な指針を示した。ただし、裁判所はAADCの年齢確認条項そのものを無効とする機会は見送った。
今年後半、性的に露骨なコンテンツを閲覧する際にインターネットユーザにIDの提示を求める州法案A.B. 3080に反対する書簡をカリフォルニア州議会に提出した。書簡では、政治家が「性的に露骨な」コンテンツを定義して、それに関わる人々に罰則を科す法案は、本質的に検閲法案であり、決して未成年者だけで収まることはないと説明した。法案は9月に頓挫し、我々は勝利を宣言した。
ニューヨーク州
同様に、ニューヨーク州がStop Addictive Feeds Exploitation(SAFE)for Kids Actを可決した後、この法案の実施規則作成を担う州司法長官に対し、年齢確認要件が万人のプライバシーと表現の自由の権利を侵害すると認識するよう求めるコメントを提出した。また、司法長官が募集したコメントに列挙された多数の年齢確認手法について、様々な専門家が指摘するように、プライバシーを守りつつ完全な正確性を担保できる方法は一つもないことも指摘した。
テキサス州
テキサス州でも戦いを展開した。同州は、性的な素材が3分の1以上を占めると州がみなしたすべてのウェブサイトに対し、大人を含むすべての州民への侵襲的な年齢確認措置の提出を義務づける法律を可決した。連邦地方裁判所が法律を差し止めた後、第5巡回区控訴裁判所はこれを覆して法律を発効させた――これにより、年齢確認義務化の合憲性をめぐって連邦巡回裁判所間で判断が分かれることになった。5月、我々は米国最高裁判所に対し、第5巡回区の判決を再審理し、最終的にテキサス州法を修正第1条違反で破棄するよう求める法廷助言書を提出した。
9月、最高裁判所がテキサス州の事件を受理した後、本案について別の法廷助言書を提出した。我々は、第5巡回区の誤った判決が、オンラインでのID提示義務が対面での年齢確認以上に修正第1条の権利を制限することを正しく認識してきた、数十年にわたる判例から逸脱していることを指摘した。このテキサス州法や技術の進歩をもってしても、オンラインの年齢確認義務化が、憲法上の権利を行使しようとする大人に課す弊害は軽減されないと説明したのだ。最高裁判所はFree Speech Coalition v. Paxton事件の口頭弁論を2025年2月に設定している。
ミシシッピ州
最後に、我々は連邦地方裁判所と第5巡回区控訴裁判所の両方に法廷助言書を提出し、ミシシッピ州の年齢確認義務化H.B. 1126に対する修正第1条違反の異議申し立てを支持した。この極めて広範な法律は、ソーシャルメディアサービスにすべてのユーザの年齢確認と未成年者ユーザの親の同意取得を義務づけ、さらに州当局が「有害」と判断した素材への未成年者のアクセスをブロックすることを求めている。
6月の地方裁判所への助言書では、オンラインの年齢確認法は実店舗でのID提示とは本質的に異なり、より大きな負担を強いるものである、と改めて訴えた。また、合法的な表現活動にオンラインでアクセスしようとする大人の権利にも重大な制約を課すことになる。地方裁判所は我々の主張に同意し、ミシシッピ州法を差し止める判決を下した。判決文には我々の法廷助言書が随所に引用されている。
ミシシッピ州が第5巡回区控訴裁判所に控訴した際、我々は新たな法廷助言書を提出し、今回はH.B. 1126が若者の表現の自由に及ぼす危険な影響に焦点を当てた。未成年者もまた、オンラインで保護された表現活動を行う権利を大人と同様に持っている。オンライン空間は、アートの創作や共有、宗教の実践、政治活動など、若者が自分のアイデンティティを探求できる多様で重要な場である。また、皮肉なことに、これらの法案が対処しようとするまさにその問題に関する重要なリソースやサポートを得られる場所でもある。我々は助言書で、ミシシッピ州のような年齢確認制度が、若者とこれらのオンライン空間――活発な自己表現と重要なサポートの場――との間に不必要かつ違憲な壁を築くことを裁判所に訴えた。
今後の展望
2024年が終わりを迎えようとしているが、オンラインの年齢確認との戦いは終わりが見えない。州法が次々と生まれる一方で、法的異議申し立ても相次いでおり、すでに数多くの訴訟が起こされている。
EFFの活動も続く。州の立法府や裁判所、米国の連邦レベル、そして世界中で、我々は引き続き、大人も若者も含めたすべてのユーザの表現の自由、プライバシー、セキュリティを守る政策を提唱していく。そして、皆さんの支援を得ながら、オープンなインターネットの未来のために戦い続け、すべてのユーザ――とりわけ若者――が監視や不当な制限を恐れることなく、デジタル世界を自由に行き来できる環境を守っていく。
本稿は、我々EFFの「Year in Review」シリーズの一部である。2024年のデジタルライツをめぐる戦いに関する他の記事はこちら。
Fighting Online ID Mandates: 2024 In Review | Electronic Frontier Foundation
Author: Molly Buckley / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: December 31, 2024
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Nadine E