以下の文章は、電子フロンティア財団の「Decentralization Reaches a Turning Point: 2024 in review」という記事を翻訳したものである。
2024年、分散型ネットワークの着実な成長が、ソーシャルメディアのあり方を変容させた。Mastodon、Bluesky、Threadsはいまだ揺籃期にあるものの、ユーザに選択肢が与えられれば、イノベーションが活性化し、オンラインでの権利を守る良きツールと保護が実現されることをすでに示している。一つのビッグプレイヤーによる独占を防ぐデジタル環境への移行によって、ネットワークの回復力(resiliency)とユーザの自律性(autonomy)も大いに向上している。
分散型ネットワークの着実な成長
FediverseとThreads
Mastodonと最も関連の深い多様なサイトとサービスから構成されるFediverseは、今年も進化を続けた。MetaのThreadsがこのネットワークとの統合を開始したことは、同社にとって画期的な転換点となった。数年前まで、ユーザをプラットフォーム内に閉じ込める囲い込み戦略で悪名高い企業が相互運用性を受け入れれば、どのような変化がもたらされるのかについてEFFは夢見ていた。Threadsのユーザはホームプラットフォームを離れることなく、MastodonやFediverse全体(そしてBlueskyへも)に投稿をシェアできるようになり、Metaは何百万人ものユーザに相互運用性のメリットを紹介している。われわれはこの方向性が継続し、やがてはThreadsへの移行や離脱が容易になり、同じフェデレーション型のコミュニティをフォローしたり交流できるようになる日が来ることを期待している。
Threadsの巨大なユーザベース――1億人のデイリーアクティブユーザ――は、現在MastodonとBlueskyの双方を凌駕している。より開かれたネットワークへの統合は、分散型ソーシャルウェブの大衆化における転換点となる可能性を秘めている。あるいは、プライバシー、モデレーション、検閲に関するMetaの悪評は、多くのFediverseインスタンスにThreadsを事前にブロックするという選択を促し、ネットワークの分断を招くかもしれない。
われわれはThreadsとMastodon、Blueskyを比較し、モデレーション、ユーザの自律性、プライバシーの観点から検討を行った。この展開は分散化の可能性を示すと同時に、企業の巨人たちが表面的にはオープンなシステムに対しても依然として過度な影響力を及ぼすおそれがあることを思い起こさせる。
Blueskyの爆発的な成長
Threadsが純粋な数の上で支配的な地位を占める一方、Blueskyは今年、大躍進を果たした。年初の時点では20万人未満のユーザしかおらず、招待制だった。しかし2024年の最後の数カ月間で、500%以上の成長を1カ月で達成し、最終的に2,500万人以上のユーザを獲得するに至った。
Fediverseとの統合を行うMastodonとは異なり、Blueskyは異なる道を選択し、独自の分散型プロトコル(AT Protocol)を構築してユーザのデータとアイデンティティの可搬性を確保し、ユーザに「信頼できる出口」を提供している。このイノベーションにより、ユーザはコミュニティを一から作り直す煩わしさを避け、オンラインコミュニティをプラットフォーム間でシームレスに持ち運ぶことができる。Fediverseとは異なり、BlueskyはTwitterの代替となることを優先し、現在も主に中央集権的な構造を維持している。Blueskyはユーザが利用できるツールを増やし続けており、コミュニティの創造性とイノベーションを受け入れている。
BlueskyはTwitterの元ユーザにとってはほとんど違和感のない存在だが、われわれはBlueskyフィードを管理するためのヒントを紹介し、プラットフォームに参加したばかりのユーザ向けにFAQを公開した。
競争こそが重要である
インターネットのヘンテコさを保つ
分散型プラットフォームの台頭は、競争がイノベーションに極めて重要であることを浮き彫りにした。MastodonやBlueskyのようなプラットフォームは、ビッグテックが生み出したギャップを埋め、ユーザに最適な体験を見つける機会を提供することで成功している。従来のソーシャルメディアモデルは、プラットフォームが制限的な方針を押し付け、ユーザ体験よりも自社の利益を優先するために障壁を設けてきた。だが、競争と中央集権的な管理からの離脱へと焦点が移れば、インターネットは繁栄する。
ユーザがMastodonのコミュニティ重視の姿勢を望むのか、Blueskyのグローバルな発信力を求めるのか、あるいは全く別のものを望むのかに関わらず、小規模なプラットフォームは大企業の動機とは無関係に体験を構築できるようにしてくれる。分散型プラットフォームは最終的に、広告主や株主ではなく、ユーザに対して最大の説明責任を負う。
テクノロジーの回復力を高める
今年は、少数の支配的企業に過剰な権力が集中することの危険性が浮き彫りになった。この夏の大規模グローバルIT障害は、単一障害点が産業全体を混乱させかえないデジタルモノカルチャーの脆弱性を如実に示した。このような失敗は、ネットワークがリスクを分散するように設計され、単一のシステム侵害が世界中に波及しないようにする分散化の重要性を強調している。
災害時にラジオ波を使用してインターネットに接続するMeshtasticのような分散型プロジェクトは、われわれが必要とする回復力のあるインフラストラクチャの典型例である。しかし、これらのイノベーションも民間企業の利害から脅威にさらされている。今年、NextNavによる900MHz帯の独占的使用の提案は、Meshtasticの実験――ひいては分散型コミュニケーションのより広い可能性――を危険にさらした。われわれがFCCへのコメントで論じたように、このような動きは独占的な権力が競争を抑制するだけでなく、人々の接続可能性を守る回復力のあるツールを危険にさらすことになる。
今後の展望
今年は2025年に向けて、分散型で創造的かつ回復力のあるインターネットの構築に向けた意味のある一歩を踏み出した。相互運用性と分散化は今後も拡大する可能性が高い。EFFはこれからも、分散型プロジェクトへの脅威やオープンなエコシステムの成長を妨げる障害を監視し続ける。
本稿は、我々EFFの「Year in Review」シリーズの一部である。2024年のデジタルライツをめぐる戦いに関する他の記事はこちら。
Decentralization Reaches a Turning Point: 2024 in review | Electronic Frontier Foundation
Author: Rory Mir / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: January 1, 2025
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Kumiko SHIMIZU