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フェアプレイ・カナダは海賊版サイト対策の最善の選択肢として、民間企業による独自のサイトブロッキングプランを提案している。フェアプレイ・カナダはCTRCへの反論のなかで、司法判断によるブロッキングという『もう1つ』の選択肢は、不確実かつコストが掛かり、時間を浪費するものだと主張している。さらにこの返答では、市民からミスリードかつ間違ったコメントが寄せられていると批判する一方、ブロッキングプランに対する更なる支持が集まっていると強調する。

著作権業界と通信業界の主要企業による連合「フェアプレイ・カナダ」は、カナダ全土での海賊版サイトブロッキングプランの策定を目指している。

今年はじめ、フェアプレイカナダは、このブロッキングプランをカナダ電気通信規制当局であるCTRCに申請した

このブロッキングプランに対するパブリックコメントには、さまざまな意見が寄せられた。ブロッキングリストのアイディアに反対する人たちは、オーバーブロッキングのリスクやネット中立性への脅威、司法判断の欠如といった問題点を厳しく指摘している。

昨日、フェアプレイ・カナダは、こうしたコメントに対する反論を提出した。彼らは追加的な証拠を提出することで反対意見を否定し、嘘や不正確な情報を撒き散らすコメント提出者を非難した。

さらにフェアプレイ・カナダは、新たなブロッキングスキームは不要であるとの意見に対しても反論している。すでにブロッキングが行われている多くの国と同様に、カナダの著作権者は海賊版サイトのブロッキングを求めて ISPを提訴し、裁判所から差止命令を獲得することができる。

フェアプレイ・カナダはそれに対する反論として、そのような単純な問題ではないと主張する。電気通信放題36条は、サイトブロッキングを実施するために、裁判所の命令に加えて委員会の承認が必要であるとしている。こうした複雑さゆえに、裁判所がサイトブロッキングを認めるかどうかは不透明だという。

「裁判所は、第36条および委員会の見解に影響を及ぼす可能性を考慮して、ISPに対する海賊版サイトのアクセス遮断命令を躊躇する可能性がある」とフェアプレイ・カナダは反論している。

つまり、フェアプレイ・カナダは、現行法における適切な司法手続きに則ればブロッキングは実施できないと考えているということになる。彼らの助けになるかはわからないが、まさに反対派はまさにそのとおりの主張をしている。が、彼らの主張はこれだけではない。

裁判所によるブロッキング命令の不確実性に加え、フェアプレイ・カナダは司法に判断を委ねると金がかかると主張する。その根拠として、彼らは法律事務所の「Hayes eLaw」に依頼し、手続きを完了するために必要なコストと時間を試算している。

この分析によれば、1つのサイトのブロッキングには数十万ドルの訴訟費用が発生し、差止命令を獲得するまでに2年以上の時間がかかる可能性があるという。フェアプレイ・カナダは、余りに負担が大きく、時間がかかりすぎると結論づけている。

「この手続では、悪質な海賊版サイトそれぞれについて、訴訟を起こすことになり、1つのサイトに対処するためには、最大で765日、338,000ドル(約2900万円)の費用がかかる」とフェアプレイ・カナダは主張する。

「多くの場合、著作権執行訴訟は不可欠かつ強力なツールではあるが、コンテンツの盗用に関わるすべてのケースに対処するために、権利者が膨大な時間と費用を費やすべきとする意見は合理的ではない」

最後に、フェアプレイ・カナダは、司法による判断が必須であるとするコメントの提出者は、サイトブロッキングに反対しているのではなく、サイトブロッキングの運用方法に反対しているだけだと主張する。

司法判断に反対する意見

通常、パブリックコメントは、賛否それぞれの意見を集約し、解決すべき問題点に光を当てる。

しかし、フェアプレイ・カナダは、パブリックコメントの多くがインターネットの活動家によるミスリードされた情報に煽られたものだと指摘する。

特に、これらのコメントは、サイトブロッキングプランによってISPが独断でサイトブロッキングを決定できるようになると指摘している。しかし、フェアプレイ・カナダは、ISPが独自に決定するのではなく、委員会によって命じられた場合においてのみサイトブロッキングを実施すると反論する。

「委員会がこのような批判を受けたという事実は、まさにこうした誤った主張をするオンライン運動によって煽動されていることを示唆しており、驚くに値しない」と言う。

「事実、CIPPIC/OpenMediaやSumOfUs、LeadNowが提出した嘆願書や書類には、まさにその虚偽情報が含まれている」

フェアプレイカナダは、こうした誤解に加え、一部には間違いにもとづく批判があり、さらには数千件のパブリックコメントが重複していると指摘する。

「明らかに誤った批判が数多くあり、一般に他者の同一性や信憑性、所在地は確認できない。嘆願書の場合には、14000件を超える重複した署名があり、ほかにも無数の不当な署名がある」

フェアプレイ・カナダは、こうしたコメントを除外するようCTRCに要請しているわけではない。こうしたコメントは何かを代表しているものではないし、提案を間違って理解しているので、信用に値しない、と指摘しているだけである。

その代り、彼らは独自の調査結果を追加している。フェアプレイは「Nanos Research」に調査を委託し、イギリスやオーストラリア、フランスなどの海賊版サイトブロッキングを実施している国と比較して、カナダの著作権保護の水準はどうあるべきかと質問している。

その結果によると、カナダ人の77%が、これらの国と同等ないしそれ以上の保護が必要だと答えたとして、カナダ人はサイトブロッキングには反対していないと主張する。とはいえ、上記の国々は、いずれも裁判所の命令によるサイトブロッキングを実施しているのだが。

フェアプレイ・カナダによる60ページ以上に渡る反論はこちら(pdf)。海賊版による経済的影響、ブロッキング計画の効果、ブロッキングとネット中立性、言論の自由との整合性、その他幅広いトピックについても取り上げている。

この余分な文脈は、CTRCには有益かもしれないが、反対派を説得できるものではないだろう。

フェアプレイ・カナダが反論を提出したのとほぼ同時期に、新たな議論が巻き起こった。大手通信事業者の「Bell」がこのサイトブロッキング計画が公表される以前に、CTRCと秘密裏に事前協議をしていたと見られる文書を「Forum for Research and Policy in Communications」が公表したためだ。サイトブロッキングについて話し合われていたことは明らかだが、Bellは「手続き上、珍しいことではない」とMobile Syrupにコメントしている。
‘Blocking Pirate Sites Through Court is Uncertain, Slow and Expensive’ – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 17, 2018
Translation: heatwave_p2p