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米国政府は、中国の「金盾(Great Firewall)」とそれに関連したVPNの取締まりが、米国企業の深刻な驚異となっていると見ている。中国の検閲は米国のビジネスに数十億ドルもの影響を与えており、米国通商代表部は最新の外国貿易障壁報告書にも記されている。さらに、新たに施工されたVPN禁止措置はプライバシーの問題を引き起こしている。

中国政府は、市民がインターネットで閲覧できるウェブサイトを厳しく管理していることでも知られている。

いわゆる「金盾(グレート・ファイアウォール)」は海賊版サイトをブロックするだけでなく、政府が社会に悪影響を及ぼす可能性があると考えるあらゆるウェブサイトを網羅している。

こうしたブロッキングの成果の詳しいところは不明であるが、膨大な数のウェブサイトが影響を受けていることは確実だ。

しかし、米国政府はこの主の検閲を好ましく思っていないようだ。米国通商代表部(USTR)の最新の外国貿易障壁報告書では、世界のビジネスに有害な影響を及ぼすと指摘されている。

「中国は適法なウェブサイトを広くブロッキングしており、ウェブを基盤とするサービスや製品のサプライヤ、ユーザの双方に莫大なコストを課している」と同報告書は指摘する。

米国によると、中国政府のブロッキングの取り組みは、数十億ドル規模の影響をもたらしているという。影響を受けるサービスには、アプリストアやニュースサイト、コミュニケーションサービスが含まれているという。

多くのものはその意図通りにターゲットに設定されているが、オーバーブロッキングが発生することがある。これは、遮断されたサイトが他のサイトとIPアドレスを共有し、巻き込まれて検閲された場合に生じる。

「グレート・ファイアウォールと呼ばれるブロッキングの技術的手段は、時間の経過とともに高度化する一方で、インターネットプロトコル(IP)アドレスを共有する意図されていないはずのウェブサイトに影響を及ぼすことも多いようだ」

業界統計によると、インターネットでもっとも人気のある上位30サイトのうち、現在は12サイトが中国で検閲されている。また、これまではVPNを使用してグレート・ファイアウォールを回避するのは比較的容易だったが、それも変化してきている

中国では、今月から無認可のVPNサービスが禁止されることんあった。企業は、政府が認可したサービスを、政府を通じてリースする場合にのみ、VPNを運用することが許される。米国はこの措置を、より多くの企業を害することになると懸念している。単にビジネス上の問題に留まらず、プライバシーの問題もはらむという。

「これまで、消費者やビジネスは、VPNサービスを使用して政府が実施するフィルタリングを回避できたが、2017年の取り締まりではこのオプションが廃止され、現在では一般的なVPNアプリケーションが禁止されている」とUSTRは記している。

「この展開は、外国企業に特に悪影響を及ぼす。企業はVPNサービスを使用して中国国外の拠点やサービスと接続し、通信の機密性を確保するためにVPN技術に頼っているためだ」

皮肉なことに、米国企業自体が、中国政府のグレート・ファイアウォールの維持を手助けしている。たとえば昨年、中国当局の圧力をうけ、AppleのiOSストアからVPNアプリケーションが削除sれている。

米国は中国の検閲制度に不満を覚えているのは明らかだ。しかし、中国がすぐにでもその方針を転換することは考えにくい。中国がVPNサービスを運営する市民を投獄しているようでは、その道程はまだまだ遠いと言わざるを得ない。


USTRの外国貿易障壁報告書のコピーはこちらから(pdf)

China’s Website and VPN Blocking Hurts Business, US Says – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: April 7, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Jakub Hałun / CC BY-SA 3.0