米国企業は、ロビー活動や訴訟を駆使し、世界各国に海賊版ブロッキングを実施させることに成功した。しかし彼らの本拠地である米国では、この問題はタブーであった。数年前のSOPAをめぐる苦い経験があったためだ。しかしいま、この立場は徐々に変化をはじめているようだ。
10年ほど前、米国議員らが著作権者がインターネット上で著作権を行使しやすくするための法案を提出すると、大規模な論争が巻き起こった。
SOPAやPIPAを含むこれらの提案に対し、大手インターネット企業のみならず、一般市民も激しく反発した。海賊版サイトブロッキングなどを含むこの計画が、あまりにも行き過ぎていると懸念されたのだ。
市民の抗議は、大規模なインターネット・ブラックアウトに発展した。その結果、この法案は2012年はじめに棚上げされた。
それからというもの、「サイトブロッキング」問題は禁忌されてきた。しかし、その雰囲気は米国のみに限定され、海外ではエンターテイメント業界のお気に入りの海賊版対策ツールとして、ますます一般的になっていった。
外国での成功に勇気づけられた米著作権者らは現在、さりげなくではあるが、この問題を再び提起するほどの自信を取り戻したようだ。
先日、RIAA(全米レコード協会)とNMPA(全米音楽出版社協会)が提出した共同意見書には、サイトブロッキングの提案が記載されている。この意見書は、ヴィシャル・アミン知的財産執行調整官(IPEC)への勧告として提出されたものだ。
IPECは、知的財産執行に関する共同戦略計画の策定に向けて、パブリックコメントを募集している。RIAAらはその意見書の中で、ウェブサイトブロッキングを有効な海賊版対策ツールとして認識するよう求めている。
「法務当局およびサードパーティによる知的財産権の保護を法的に支援するために、複数の変更が選択肢として考えられる」という。
「ここには、DMCAの改訂、無許諾であることを知りつつ著作物の違法ストリーミングに従事することの重罪化、司法権が及ばない国外サイトへのブロッキングの有効性および米国法への導入の可否に関する調査などが含まれる」
慎重な言葉選びからも、RIAAとNMPAが非常にセンシティブな問題として理解していることがうかがえる。しかし、この一文から、彼らがSOPAのようなブロッキング権限やオンラインストリーミングの刑事罰化を再び手に入れようとしていることが示唆される。
しかし近年、状況は劇的に変化している。RIAAらは、サイトブロッキングが海賊版を抑制し、正規コンテンツの消費を促進する効果的なツールであることが証明されているという。
RIAAとNMPAによると、海賊版サイトが国外ドメインと防弾ホスティングを利用する傾向にあることから、更なるツールの必要性が高まっているという。その1つがブロッキングだというのだろう。
「他国で実施されているウェブサイトブロッキングは、予期せぬ重大な悪影響を引き起こしてはおらず、有効に機能していることから、米国でも海賊版対策ツールの1つに追加することを再検討すべきである」
こうした対策を要望しているのは、RIAAとNMPAだけではない。「著作権コミュニティの団結した声」を自称するコピーライト・アライアンスもサイトブロッキングについて触れている。こちらも実にさりげなく。
コピーライト・アライアンスは、「他国の著作権法の執行状況とその取り組みの有効性を調査」するようIPECに求めている。
これに関連して唯一具体的に言及されているのが、サイトブロッキングである。コピーライト・アライアンスは、サイトブロッキングが海外では非常に効果的であり、米国はこの取り組みから学べるものがあると主張する。
「救済措置の有効性のみならず、他国で実施された救済措置がバランスの取れたもので、オーバーブロッキングなどの予期せぬ結果を招いていないことも学ぶべきであろう」
この意見書は、著作権者が7年越しで米国ブロッキング提案を復活させるべく再びギアを上げていることを示している。
間違いなく抗議の声が上がるだろうが、その復活は不可避であろう。
近年、米国の著作権者はロビー活動や訴訟を通じて、数十の国々にサイトブロッキングを導入させてきた。しかし、彼らの本拠地である米国だけが手つかずであったのだ。
変化はゆっくりと、しかし着実にはじまっている。
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こちらが上述したRIAA/NMPAの意見書(pdf)、コピーライト・アライアンスの意見書(pdf)の写しである。いずれも幅広いテーマをカバーしている。
Music Industry Asks US Govt. to Reconsider Website Blocking – TorrentFreak
Publication Date: November 27, 2018
Translation: heatwave_p2p