TorrentFreak

欧州連合が米国に続き、初の「模造品・海賊版ウォッチリスト」を公表した。この欧州委員会の報告書は、BitTorrentやサイバーロッカー、ストリーム・リッピングなど幅広い「海賊版」サイトを標的とし、法執行機関や関連事業者にこうした活動を阻止するよう求めている。

この数年、米国通商代表部(USTR)は、世界各地の大規模な著作権侵害に関与する「悪名高い市場」リストを公表している。

この年次報告書は、リストに掲載されたサイトやサービスが拠点とする国に米国の立場を理解させることを目的としており、米国内のプラットフォームは含まれていない。

EUは今年はじめ、これと同様の報告書をEU独自に作成すると発表した

「このリストは、運営者や所有者、当該国当局や政府に対し、知的財産権侵害製品ないしサービスを抑止するための方策および措置を講ずることを求めるために、最も問題のある市場――特にオンライン市場に焦点を当てる――を特定、記述するものである」と今年1月、EUは述べている。

それから11ヶ月後、EUは利害関係者との協議、各国における海賊版サイトへの判決、英国知的財産犯罪ユニットの侵害ウェブサイトリスト、Googleの透明性レポート、およびユーロポール(欧州刑事警察機構)の評価などをもとに、初の『模造品・海賊版ウォッチリスト』を公表した。

約束されていたように、模造品や海賊版に関与、助長、あるいはそこから利益を上げているサイトやサービス、プレイヤーを列挙し、そのプラットフォームと権限を持つ人々に圧力をかけることをねらっている。

報告書は、域内のドメイン登録やウェブホスティングなどを利用しているかどうかにかかわらず、侵害が疑われるプラットフォームの所有者がEU域外に在住していることを念頭に置いている。

当然のことながら、ヒアリング段階で収集された70の回答の大半が、サイバーロッカー、BitTorrentサイトに続き、ストリーム・リッピング、リンクサイト、海賊版優良ダウンロードサイトなどをあげていた。また、ホスティングプロバイダ、ドメインレジストリ、レジストラ、さらに『海賊版』サイトから利益を上げる広告ネットワークも指摘された。

サイバーロッカー

米国の「ウォッチリスト」でも複数回にわたって取り上げられたことを考えれば、Rapidgatorがこの新しいEU報告書に登場してもなんの不思議もない。スイスでホストされ、ロシアで運営されているとみられるこのプラットフォームは、膨大な違法コンテンツをホスティングし、金銭的報酬やアフィリエイト制度によってアップロードを助長していると非難されている。

「2017年4月から2018年3月までの期間、rapidgator.netの総ビジター数は約6億3570万にのぼる。同期間中の平均ウェブサイトランクは1184位であった。訪問者の内訳はEUからが 34%で、残りの66%は非EU加盟国であった」と報告書には記されている。

報告書には、2年間にドイツでの裁判に敗北したUploaded.netも登場する。

「2017年4月から2018年3月までの期間、uploaded.netの総ビジター数は約8億5600万であった。同期間中の平均ウェブサイトランクは1140位であった。訪問者の内訳はEUからが34%で、残りの66%は非EU加盟国であった。ドイツ、インド、イタリアの裁判所は、同サイトに対してサイトブロッキングを命じている」と同報告書は付け加える。

昨年はじめにお伝えしたように、Uploadedは侵害を繰り返す利用者に対するポリシーを導入したものの、権利者側の怒りを鎮めるには至っていないようだ。

最近、HuluやHBO Go以上のトラフィックを発生させていることが明らかになったファイルホスティングサイトOpenloadも同様に、アップローダーに報酬を支払って大量の侵害トラフィックをホストしているとして非難されている。

その運営会社の所在について、この報告書では明らかにはされていないが、その理由について「米国に登記されているサービスプロバイダによって隠されている」としており、おそらくCloudflareのことを指しているのだろう。

また今年初頭、USTRの「悪名高い市場」報告書に掲載された4sharedもEUの報告書に登場している。

EUの報告書では、4sharedは「海賊版」コンテンツをホストし、アップローダーに報酬を支払っているとして非難されているが、他の同様のプラットフォームよりもさらに多くのビジターを集めているという。しかし興味深いことに、同サービスは米国内でホストされていると言われている。それを考えると、なぜ米国政府が『悪名高い市場』リストに追加する前に、なんらかの手を打たないのかという疑問が浮かんでくる。

「2017年4月から2018年3月までの期間、4shared.comの総ビジター数は約7億2100万であった。同期間中の平均ウェブサイトランクは639位であった。訪問者の内訳はEUからが10%で、残りの90%は非EU加盟国であった」と報告書は記している。

またこのセクションでは、Sci-hubが「欧州出版業界における書籍・学術出版社にとって最も問題のあるオンライン・アクター」と指摘されている。

報告書では、この悪名高き『科学版パイレート・ベイ』が、「フィッシングによって不正に入手したユーザ情報」を利用してコンテンツを取得していると主張している。同サイトの運営者はこの点を否定している。また、同報告書によれば、ファイルホスティングサイトLibgen.ioがSci-hubから大半のコンテンツを取得しているという。

ストリーム・リッピング

近年、音楽業界にとって最大の脅威とされるストリーム・リッピング・プラットフォームは、EUの報告書でも存在感を示している。H2converter.comは米国でホストされ、ベトナムで運営されているとされており、年間ビジター数は3億1200万であるという。ここでもまた、米国の存在がこのプラットフォームにとって直接的なリスクになっていないことが見て取れる。

Downvids.netはフランスでホストされているものの、運営者はEU域外在住だと「推定」されている。年間1億700万ものサイトビジターを抱える「世界で最も人気のストリーム・リッピングサービス」とされている。

リンクおよびリファラサイト

EUの報告書の定義では、これらのサイトは「海賊版サイトが蔵置されているとみられるホスティング・ウェブサイト、サイバーロッカーその他サイト上のメディアコンテンツへのリンクを集約、カテゴライズ、整理、インデックスする」サイトとされている。

トルコでホストされるFullhdfilmizlesene.orgは、年間約4億5100万のビジターを抱える最大規模のサイトと指摘されている。また、ロシアでホストされている年間約11億ビジターを抱えるSeasonvar.ruもリストに挙げられた。他にもDwatchseries.to、1channel.ch、さらに音楽に特化したRnbXclusive.reviewも列挙されている。

トレントサイト

かつては権利者かや法執行当局から最大のターゲットとされてきたトレントサイトであったが、EUの報告書ではずいぶん扱いが小さくなってしまった。しかし、不死身のパイレート・ベイは2017年4月から2018年3月の期間に、31億ものビジターを集めていると推定されている。

それに次ぐ人気のトレントプラットフォームが、RARBGだ。EU域外のボスニア・ヘルツェゴヴィナでホストされているRARBGは、削除通知にはすぐに対応するものの、すぐさまコンテンツが復活してしまうと報告されている。

「2017年4月から2018年3月までの期間、Rarbg.toの総ビジター数は約13億7100万であった。同期間中の平均ウェブサイトランクは304位であった。訪問者の内訳はEUからが31%で、残りの69%は非EU加盟国であった」と報告書は記している。

「Rarbg.toは、マルウェアの可能性のある広告やペイ・パー・インストール配信モデルから収益を得ているとされる。このウェブサイトとその亜種は、オーストラリア、デンマーク、フィンランド、アイルランド、イタリア、ポルトガル、イギリスでブロッキング命令を受けている」

ほかにも3つの大手トレントサイトがリストに掲載された。その中でも最も大きいのがロシアのRuTrackerで、年間9億6810ビジターを集めているという。ついで約9億3800万ビジターを擁する1337x.to。このサイトは米国でホストされていると見られているが、USTRは国外のサイトだと述べている。また、メタ検索エンジンのTorrentz2は年間約7億1200万のビジターを記録している。

ホスティングプロバイダ

USTRの報告書と同様に、EUの報告書でも複数のホスティングプロバイダ、サービスが「違法サイトのサービス利用を抑止するアカウント開設時の適性評価(デュー・デリジェンス)を適切に実施しておらず、著作権者と協力して海賊版コンテンツの削除ないしアクセス遮断を実施していない」と批判されている。

米国のCloudflareは、世界中の海賊版サイトの約40%にサービスを提供し、運営者の匿名化やサイトの真のホストの隠蔽を支援していると非難されている。

「侵害通知への対応を含め、Cloudflareの著作権者への協力体制は是正されるべきである(たとえば、サービスへのアクセス停止やアカウントの削除など)。利害関係者は、違法サイトによるサービスの利用を防止するために、ウェブサイトのアカウント開設時に適性評価を実施し、侵害行為へのポリシーを厳格化するようCloudflareに求めている」

CloudflareはUSTRの報告書には掲載されていないものの、米国・EUともスイスに拠点を置くPrivate Layerを強く問題視する点では一致している。

「Private Layerは、サービスを利用するウェブサイト所有者・運営者に匿名性を提供しているため、海賊版サイトには非常に魅力的な存在となっている。Private Layerは多数の知的財産権侵害ウェブサイトをホストし、知財権侵害に対処する有効なポリシーを定めていないとクリエイティブ産業から報告されている」とEUは述べている。

「模造品・海賊版ウォッチリスト」はこちらからダウンロードできる(pdf

【注意】このPDFにはブラックリスト登録されたURLが記載されているため、AvastやAVGの警告が表示される可能性がある。このPDFはEUが公表したものを直接入手したものであり、われわれもおかしな点は確認していない。

New EU Piracy Watchlist Targets Key Pirate Sites and Cloudflare – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: December 10, 2018
Translation: heatwave_p2p
Materials of Header Image: Chraecker / iriusman