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パリ高等法院は、複数の国内大手ISPに、海賊版ライブラリのLibGenとSci-Hubへのアクセスをブロッキングするよう命じた。この判決は、高まりつつある2つのサイトへの圧力をさらに高めるものではあるが、Sci-Hub創設者のアレクサンドラ・エルバキアンは、必要に迫られた研究者であれば、同サイトへの別のルートを見つけ出せるだけの賢さを備えているだろうという。

Sci-Hubは数百万の「ペイウォールに囲われた」研究論文への自由なアクセスを提供していることで、しばしば「サイエンス版パイレート・ベイ」と呼ばれている。

同サイトは、論文へのアクセスに問題を抱えた世界中の研究者に利用されている。

もちろん学術出版社は、このサービスに不満を抱いている。彼らは同サイトを数十億ドルのビジネスに脅威をもたらす存在と捉えており、何度も訴訟を起こしては閉鎖に追い込もうとしていた。

Sci-Hubは、米国でエルゼビアと米化学会との法廷闘争に敗れたものの、サイトの運営は依然として続いている。むしろ、メディアから注目されたことで、その人気をさらに高めることになった。

この結果は、学術出版社にとって、同サイトをブロッキングする以外の選択肢がほとんど残されていないことを意味していた。既に同サイトへのブロッキングはスウェーデンロシアなどで実施されている。そして今月、フランスがその仲間入りを果たした。パリ高等法院がSci-Hub、複数のLibrary GenesisLibGenドメインのブロッキングを命じたのだ。

学術出版社のエルゼビア、シュプリンガー・ネイチャーからの申し立てに基づき、インターネットプロバイダのBouygues、Free、Orange、SFRは、来年までにSci-HubおよびLibGenへのアクセスをブロッキングするよう命じられた。

Next INpactの報道によると、仏法廷はこの判決のなかで、この2つのサイトが「著作権の原則を否定し、出版社の購読アクセスポータルを迂回する海賊版プラットフォームであると明言している」と判断している。

Sci-Hub創設者のアレクサンドラ・エルバキアンは、この結果に失望したという。彼女は、このブロッキングに「一定の効果」があることを認めつつも、なんとしてもアクセスしたいと考える人たちが、ブロッキングを回避する手段はいくらでもあると話す。

「ブロッキングは一定の効果が期待できるでしょう。しかし、それほど深刻なものではありません。Sci-Hubを利用しなければ研究にアクセスできない人々は、VPNやTORを経由してブロッキングを回避できますから」とエルバキアン氏はTorrentFreakに語った。

裁判所の命令は、複数のミラーサイトを含む57のドメインを対象としている。学術出版社側は、新たなドメインが登場するたびに追加できる柔軟なブロッキングリストを求めていたが、これは却下された。

出版社が新たなドメインをブロッキングリストに追加したい場合には、再び裁判を起こさなければならない。これは、同国のウェブサイトブロッキングには司法による監視が効いていることを意味している。

また出版社側が求めていたIPアドレスによるブロッキングも却下された。裁判所はISP側の主張を認め、DNSブロッキングを含むブロッキング手段の選択についてはISPの裁量を認めるべきだと判断した。しかし同時に、ISP側の費用負担を意味してもいる。

Sci-Hubの創設者は、この新たなブロッキングを歓迎してはいないものの、前向きな見方を示してもいる。この判決のおかげで、フランスで「Sci-Hub」が話題になり、さらに多くの人にサイトを知ってもらえたという。

エルバキアン氏は、究極的には、裁判所や政府がウェブサイト、特に研究論文への自由なアクセスを提供するサイトに対して、ブロッキングを可能にする仕組みがあってはならないと考えている

「多くのフランスの研究者がSci-Hubを利用し、それを悪いことだとは思っていないわけですが、その事実は法律や判決の影響を受けないというのは興味深い。つまり、根本的に間違っているということです」とエルバキアン氏は言う。

「研究者は最も賢い部類の人たちといえます。政府はその人たちの意見に耳を傾けるべきでしょう。現在はまったくそうなっていませんが」

研究に関連しているかどうかにかかわらず、フランスがサイトブロッキングをすぐにでも禁止するとは考えにくい。それどころか、政府は全国的な海賊版ブロッキングリストを導入し、サイトブロッキング体制の強化を計画している。

ISPに対するSci-HubとLibGenドメインへのアクセスブロッキング判決の写しはこちらから(pdf)

French ISPs Ordered to Block Sci-Hub and LibGen – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: March 31, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Sheila Sund / CC BY 2.0