ウェブサイトブロッキングが世界的に一般的になるにつれて、数多くのユーザが自らのアクセスを取り戻すべくVPNに目を向けている。しかし、世界最大級の海賊版サイトの運営者によれば、一部の広告代理店は、VPNユーザのトラフィックを価値がないとみなしているそうだ。
この10年超、世界中の著作権者がインターネットサービスプロバイダに「海賊版」サイトのブロッキングを求めてきた。
米国のユーザは、著作権侵害を理由としたブロッキングを経験してはいないが、他の地域、特に欧州ではサイトブロッキング現象は本格化している。
確かに、最近のMPA(モーション・ピクチャー・アソシエーション)の概況によれば、約4000のウェブサイトが31カ国のISPにブロッキングされており、そのドメイン数は、世界中で8000を超えるという。
この動きは、サイトへの直接のアクセスを防ぐには効果的だと見られているものの、その回避策も数多く存在している。ドメインをブロッキングされたサイトが定期的に新たなドメインを追加することもあれば、ミラーやクローンが登場することもある。さらに、Torはもちろん、VPNの利用もますます増加している。
しかし興味深いことに、我々は今週、大手「海賊版」サイトの運営者から、VPNベースのトラフィックは広告ネットワークからほとんど価値がないとみなされているのであまり歓迎していないとの話を聞いた。
「海賊版サイトの運営には金が必要だ」と彼は説明する。「VPNユーザのアクセスが増えてもお金にはならない」
この運営者によると、広告代理店はVPN経由のアクセスに難色を示すのだという。むしろ、地理的地域を簡単に区分できるトラフィックが好まれ、特定の地域のトラフィックは他の地域よりも価値があるそうだ。
たとえば、米国、英国、カナダ、日本、ニュージーランド、オーストラリアなどからアクセスしてくるユーザは、インドや中国からアクセスするユーザに比べて、価値が高いとみなされる。
サイト運営者によれば、広告主は地域に応じてトラフィックに金を支払うのだという。Maxmindが公開するジオコードのサンプルリストを見ると、米国は「US」、英国は「GB」、カナダは「CA」と表示されている。ただ、リストの一番上にある「A1」は匿名プロキシを意味している。
「広告主は[ジオコード]ごとに支払い、[ジオコード]ごとにキャンペーンを展開する。VPNにはGEO A1が割り振られていて、これは支払いやキャンペーンの対象外。つまり、支払いは受けられないということ」と彼は説明する。
別の小規模サイトの運営者によれば、VPNトラフィックにはムラがあるという。ただ、全体的な印象は大規模サイトの運営者と同様のようだ。
「正直にいえば、広告ネットワーク次第。以前取引していたいくつかのネットワークは、VPNユーザにはポップアップも出さなかった」と彼は言う。
もちろん、A1コードはVPNだけではない。Torも同じカテゴリに入れられ、そのトラフィックはやはり歓迎されない。
「どの広告代理店もTORトラフィックには金を払わない」という。「TORや匿名プロキシ、VPN、専用サーバ、VPSサーバからのアクセスは簡単に監視できて、特別なフラグがつけられている。とにかくすべてお見通しなんだ」
IP2Locationは、VPN、プロキシ、ボットを検出できるというデータベースへのアクセスを799ドルで販売している。同社はデモを提供していて、IPアドレスを入力すれば上記カテゴリに分類してくれるという。実際に複数のVPNサーバでテストしてみたが、いずれもVPNと判別された。
ということで、訪問者はVPNやTORなどのツールを利用して『海賊版』サイトのブロッキングを回避できるのだが、ほとんどの広告主はそうしたトラフィックを好ましく思っていないということのようだ。こうしたトラフィックを収益化する方法が全くないわけではないのだろうが、上述の大手サイトには大きな負担になっているという。
「訪問者が増えれば増えるほど、サーバ負荷は高まる。まったくお金にならないのに」と彼は締めくくった。
VPN Users Could Be Depriving Pirate Sites of Ad Revenue – TorrentFreak
Publication Date: April 22, 2019
Translation: heatwave_p2p
Materiai of Header Image: Lily Childs (CC BY-NC 2.0)