TorrentFreak

英国政府は今夏、コンテンツの3分の1以上をポルノが占めるサイトに未成年者のアクセス禁止を義務づけようとしている。ポルノサイトにアクセスするすべての訪問者に厳格な年齢認証が要求され、それを実施しないサイトはISPからブロッキングされることになる。だが、VPNなどを利用すればこの年齢認証は容易に迂回できる。そうなれば海賊版サイトへのアクセスも再び開かれることになるだろう。

インターネットの夜明け前、未成年者たちは誰かの肩越しに使い込まれた成人雑誌を覗き込んでは、なんとかポルノにアクセスしようとしてきた。

あるいは「幸運」な者は、友達のお父さんの書棚の中に、クローゼットや靴箱の中に、あるいは「ホリデービデオ」と書かれた封筒の中に、秘密のVHSを発見することができた。そんな時代もあった。

だが、インターネットの夜明けとともに状況は激変した。わずか数回のクリックでポルノにアクセスできてしまう時代が到来したのだ。大人が見ようとするだけであればビジネスの問題で片づけられる。だが今日、プラットフォームに溢れかえるポルノコンテンツは子どもたちにも容易にアクセスできてしまう。こうした状況に保護者たちは眉をひそめている。

そこで英国政府は、伝統的なペアレンタルコントロールが十分でない可能性を考慮し、児童が成人向けコンテンツにうっかり出くわさないようにする介入を開始した。政府は7月15日より、コンテンツの3分の1以上をポルノが占める商業サイトに対し、訪問者の年齢認証を義務づけるチェックスキームを採用することになっている。

大手ポルノサイトのオーナー「MindGeek」が運営するAgeIDシステムは、年齢認証の重要な推進役になると見られている。ポルノサイトにアクセスしたい成人は、運転免許証やパスポートのスキャン、クレジットカード情報の提供、またはSMSによるアクティベーションが求められる。その後、ユーザの詳細を第三者が認証することになっている。

これとは別の認証方法もある。一部店舗ではコード入りの特別なカードを販売することになっており、それを利用してPornhubやYouPornにアクセスすることもできるという。しかし、この年齢認証ルールに従わないサイトは、たとえ適法なコンテンツを提供していたとしても、英国ISPからブロッキングされ、同国の市場から排除される。

少なくとも理論上はそういうことになっている。

目的は崇高ではあるが、(大人であれ子どもであれ)このスキームは極めて容易に回避できる。VPNサービスを利用すれば、この法律の縛りを無効化でき、厳格な年齢認証を設けているサイトも、それに従うことを拒否してブロッキングされたサイトにも簡単にアクセスできる。

政府もその可能性を認めつつも、なんとかなると考えたいようだ。確かに、英国は2017年デジタルエコノミー法の一環として、世界ではじめて年齢認証システムを導入する国としての誉れを得るだろう。しかし、同国は長年に渡り海賊版対策としてウェブサイトブロッキングを実施しており、そのおかげで多数のユーザが7月15日以降も14日までと同じような生活を続けられる下地が整っている。

ここに問題がある。ISPが直接行うものであれ、上述した年齢認証スキームであれ、ウェブサイトブロッキングが増加するに従い、こうしたブロッキングを回避する術を学ぶべき理由はますます増えていく。そうした知識を広めるのが大人かティーンエイジャーかとは無関係に、回避方法は(遅くとも)7月15日までに山火事のように広まっていくだろう。

このことは、9年以上の歳月をかけ、数百の海賊版サイトを英国でブロッキングさせるべく懸命に取り組んできた人たちにとって、悪いニュースをもたらすことになる。

一度VPNを起動すれば、人々の欲望を満たすXvideosを始めとするサイトへの道が開かれると同時に、それまでブロッキングによってアクセスが制限されていたトレントサイトやストリーミングサイトにも再びアクセスできるようになってしまうのだ。その事実が知れ渡るのは時間の問題だろう。

優れたVPNは、ユーザが閲覧するコンテンツの内容によって差別することはない。その目的は、ユーザのプライバシーを保護し、ウェブ検閲を過去のものにすることにある。認証スキームにとって幸いなのは、こうしたVPNの利用にはお金がかかるということだ。また、10代の若者が必ずしも決済手段を持っているとは限らない。

だがその結果、多くのユーザがGoogle PlayやAppstoreで、『フリー』VPNアプリをダウンロードしてしまうという結果を招くことになるかもしれない。こうしたアプリはプライバシーに問題を抱え、しばしば不正な追跡を行ってきた。したがって、こうしたアプリに手を出してしまえば、誰にとっても不幸な結果を招くことになる。

とはいえ、このスキームの設計者は、認証方式を回避する可能性は低いと思いたいようだ。現代の10代の若者は、以前に比べて禁止されたコンテンツの視聴に強い関心を持っておらず、このスキームを歓迎してくれるだろう、という。……だといいのだが。

ただ、多くの成人にとって、パスポートや運転免許証、クレジットカード情報の提出は、従来の懸念に更に追加されるものという認識であろうが、ブラウザ履歴の消去やシークレットタブの使用を忘れないというプレッシャーに比べれば、いささか軽いのかもしれない。

その一方で、パイレート・ベイ、RARGBを始め、多数の「海賊版サイト」は常にアダルトコンテンツを供給し続けている。いずれも年齢認証スキームの対象には含まれてはおらず、『ポルノパス・パニック』が同国内に広がれば、そのトラフィックに多少の増加が見られることになるだろう。そうなれば、海賊版サイトへのアクセスはますます容易になるに違いない。

UK Porn Filters Could Mean Sweaty Palms For Piracy Blockers – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: April 18, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Charles 🇵🇭