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米国通商代表部は毎年、米国の著作権保護基準を満たしていない国々を取り上げた「スペシャル301条レポート」を公表している。米政府は今年のレポートの中で、世界36ヵ国を海賊版問題を抱えている国々として名指ししている。カナダは新たな貿易協定に署名したことで、優先監視国リストから通常の監視国リストに格下げされた。

米国通商代表部(USTR)は毎年、米国の知的財産権保護を目的として、十分な対策を講じていない国々を取り上げたスペシャル301条報告書を公表している。

このフォーマットは過去数年に渡って一貫しており、様々な理由から米国企業の知的財産権を脅かす30を超える国々を列挙してきた。

「報告書において各国の知的財産に関連する市場アクセス障壁、およびそれら障壁に対処するための措置を特定することは、政府が米国人を有害な知的財産関連の貿易障壁から守ろうと積極的な取り組みにおいて重要な要素である」とUSTRは記している。

この報告書に記載されるトピックは、インターネット上の海賊版問題以外にも多岐に渡り、特許や企業秘密の保護、偽造やその他の知的財産権問題も含まれる。我々は海賊版に限定してお伝えしているが、それも依然として大きな問題の1つとして扱われている。

USTRはストリームリッピングやIPTVサービス、「違法ストリーミングデバイス」一般を重大な問題として強調している。違法ストリーミングデバイスは世界中で販売されているが、その多くは、USTRの優先監視リストに掲載されている中国で製造されている。

「アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、ドミニカ共和国、香港、インド、インドネシア、メキシコ、ペルー、サウジアラビア、シンガポール、台湾、アラブ首長国連邦、ベトナムなどでは、ISDを通じて海賊行為が蔓延しているとの報告が業界関係者から寄せられている。特に中国はこれらデバイスの製造拠点となっている」とUSTRは記している。

映画盗撮も海賊版問題として大きく取り上げられている。ロシア、インド、メキシコ、中国などがその流出国としてあげられているが、この問題は他の国にも存在している。

USTRは、アルゼンチン、ブラジル、エクアドル、ペルー、台湾などの国々は、映画の無断撮影を犯罪とする有効な対策を講じておらず、即時対策を講じることを期待するという。

「米国は、カナダや日本、フィリピンなどで導入されている、不正な映画盗撮の抑止を目的とした法律やその執行体制を確立することを各国に求める」とUSTRは述べている。

こうした報告やコメントの大半は、以前とほとんど変わってはいない。だが、中には年々更新されているものもある。どうやら、この戦略には効果があるようだ。たとえばインドは最近、映画盗撮防止法の罰則を強化し、逮捕者に3年以下の禁固刑を科す改正を行っている

適切な知的財産保護を行っていないとしてリストに挙げられた国は全部で36ヵ国にのぼる。そのうち11は最優先監視国リストに掲載され、残りは通常の監視リストに掲載されている。

301条ウォッチリスト

カナダは今年、最優先監視国から通常の監視リストに格下げされた。米国によれば、カナダは米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に署名し、同国の著作権保護期間を死後70年に延長したことで、大きな前進が見られたとしている。

しかしすべての問題が解決したわけではない。米国はとりわけ、カナダにおける教育目的の著作権例外規定を重大な懸念事項として捉えている。

「2012年の著作権法改正で曖昧な教育に関連する例外規定が追加され、教育出版社および著者の市場に多大な損害をもたらしたことに、米国は依然として深い懸念を抱いている」とUSTRは記している。

スイスも監視国リストに残留している。同国は比較的強力な知的財産保護の水準を保っているものの、我々が以前に指摘したように、インターネット上の著作権保護とその執行に関して米国は依然として懸念を抱いているようだ。これが現時点で唯一残された障壁だという。

各国がUSTRが強調する問題に対応しなければ、米国は適切な措置を講じると述べている。具体的な措置については言及されていないが、その選択肢には通商法301条に基づく執行措置や、世界貿易機関への提訴なども含まれるだろう。

USTRのスペシャル301条レポートの写しはこちらから(pdf)

U.S. Places 36 Countries on Annual ‘Piracy Watchlist’ – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: April 29, 2019
Translation: heatwave_p2p