米国とEUはともに「悪名高い」海賊版サイトのリストを毎年発表し、他国に対策を講じるよう期待している。しかし興味深いことに、人気の「海賊版サイト」の多くが、現在も米国とEUの企業によってホストされているようだ。当然のことながら、著作権者たちは、こうしたサイトを締め出すために企業にさらなる取り組みを求めている。
数日前、米国通商代表部(USTR)は最新の「悪意ある市場」の概要を公表した。
この年次報告書は、著作権者から指摘された最も問題視されている「海賊版」ウェブサイトを取り上げたものだ。その中には、トレントサイトやストリーミングプラットフォーム、ストリームリッパーなどが含まれている。
このリストの目的は、外国政府がこれらウェブサイトに対処するよう促すことにある。この主の外交圧力は今に始まったものではなく、いまから10年以上も前、米国がスウェーデンにパイレート・ベイの閉鎖を迫ったときにも、同様の戦術が用いられた。
USTRが公表した「悪名高い市場」リストには、削除通知に適切に対応しないホスティングプロバイダも含まれていた。一般に、海賊版サイトは「遠い異国」で運営される「いかがわしい」企業によってホストされているという印象を持たれているかもしれない。しかし、それは事実とは異なる。
ドイツの海賊版対策企業「WebSchauder」のフォルカー・リエックとヨルク・ワインリッヒによる最新の分析によると、上位の海賊版サイトの大半は米国企業がホストしているという。
この調査では、Googleに最も多く削除要請が寄せられたドメイン名に注目し、それらを著作権侵害ウェブサイトと仮定した。上位5000のドメイン名のうち、3645のドメイン名が現在も有効であった。彼らはそのドメインがどこでホストされているかを調べ上げた。
これらドメインの大部分(正確には41%)がCloudflareを利用していた。同社は米国を拠点とする企業だが、厳密にはホスティングサービスではなく、実際にサイトがホスティングされている真のロケーションの特定を難しくしている。
残るドメイン名は2000あまり。WebSchauderの著者らはそれぞれのホスティングプロバイダを特定したが、その結果は実に興味深いものであった。
「海賊版」ドメインの3分の1以上が米国企業にホストされていたのだ。これはフロントページに限ったものであり、扱うデータは米国でホストされているというケースもある。Amazonが最も人気の米国ベースのホストで、非Cloudflareドメインの7.1%を占めていた。Confluence NetworksとNameCheapがそれぞれ6%と4%で続いている。
次に欧州を見てみよう。米国に続いてEUも独自の悪名高い市場報告書を公表し、外国当局が管轄するであろう海賊版ウェブサイトを取り上げている。しかし、EU内にも多くの海賊版サイトがホストされていることがわかった。
オランダのホスティングプロバイダ「LeaseWeb」は、『海賊版』サイトから最も高い人気を集めており、なんと13%以上、数にして289サイトをホストしていた。ホスト企業の本社ロケーションで、オランダが米国に次ぐ第2位につけているのも当然のことである。
WebSchauderによれば、米国とオランダのホスティングプロバイダが、非Cloudflareの『海賊版』サイトドメイン名の59%をホストしているという。
当然のことながら、ホスティング会社はクライアントの行動すべてに自動的に責任を負うわけではない。申立てを完全に無視すれば責任を問われることもあるが、それは裁判所が判断することである。そのようにして、海賊版サイトであろうと、ホストすること自体に問題はない。
とはいえ、米国とEUが自らの管轄領域に多数の海賊版サイトを抱えながら、他国を非難し続けるのはいささか奇妙ではある。だが、こうした事実は、権利者やWebSchauderのようなサイトには、歓迎すべき材料のようだ。
「EUと米国は、外国の悪名高い荒らしの長文報告書で何度も何度も非難を繰り返す前に、まず自国の裏庭を一掃すべきである」とWebSchauderの報告書にはある。
「規制されていない流通の問題は、どこか遠い国で例外的に起こっているのではなく、おもに西ヨーロッパと米国で発生している。この問題解決するためには、まずはそこを出発点とし、最終的にはデータセンターに責任を負わせる必要があるだろう」
‘U.S. Hosting Companies Are Most Popular Among Pirate Sites’ – TorrentFreak
Publication Date: May 05, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Bob May (CC BY-NC-SA 2.0)