以下の文章は、TorrentFreakの「Court Orders Danish ISPs to Block Copyright-Infringing News Site」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

デンマークの裁判所は、同国で初めてニュースサイトへのブロッキングを国内ISPに命じた。『The World News』は外部ニュースサイトの記事を多数転載している。同サイトは「フェイクニュース」に対抗することを目的に掲げているが、パブリッシャと裁判所によれば、その過程でパブリッシャの著作権を侵害しているという。

10年以上前、デンマークは海賊版サイトブロッキングの実験場だった。

最初のブロッキングは、音楽業界団体のIFPIが、無断配信を行うロシアのMP3サイト「AllofMP3」に訴訟を起こした2006年に遡る

ほどなく、デンマークは欧州で初めてパイレート・ベイへのブロッキングをISPに命じることになる。

それ以来、他の海賊版サイトにも同様の措置がとられている。一般に、ブロッキングの対象となるのはダウンロード/ストリーミングポータルであり、デンマーク以外の国でも同様である。しかし今週、フレデリクスベルグ市裁判所は異例ともいえる命令を下した。

月曜の判決では、同国インターネットプロバイダ「TDC」は、加入者によるニュースポータル『The World News』へのアクセスを禁止するよう命じられた。デンマークISPの行動規範に従えば、他のISPも同サイトへのブロッキングを実施することになるだろう。

問題のニュースサイトは、映画や音楽、ゲームなどは一切提供していない。だが、世界中のニュースサイトの記事を写真込みで転載している。

サイトには数百万の記事アーカイブがあり、読者の位置情報に応じてカスタマイズされている。すべての記事にソースがクレジットされているものの、リンクはされておらず、トラフィックを元記事に送り返すこともない。

The Wordl Newsは、自らをブロックチェーン上に構築された分散型アンチ・フェイクニュースプラットフォームと称し、読者に「検証済み」のニュースを提供していると主張する。サイトドメインはパナマに登録されており、米国企業の「World News LLC」に管理されている。報道によれば、ウクライナ出身者が運営しているという。

一見すると、非常に有益なニュースアグリゲータのようではあるが、権利者たちはサイト上の記事のほとんどが無断で転載されたものだという。そのため、デンマークの海賊版対策団体「RettighedsAlliancen」が裁判を起こした。

RettighedsAlliancenはデンマークメディア協会を代表し、同国インターネットプロバイダのTDCにサイトブロッキング命令を下すよう裁判所に要請した。この団体が同様の要請を訴えるのは以前にもあったことだが、ニュースサイトが標的となったのはこれが初めてだ。

今週、訴状を検討したフレデリクスベルグ市裁判所は、同サイトはTDCからブロッキングされなくてはならないと判断した。

「TDCは訴状に記載されたウェブサイトへの加入者のアクセスを阻止するために、たとえばDNSブロッキングなどの技術的解決策を実施しなくてはならない」と判決には記されている。

デンマークメディア協会はこの判決を歓迎した。最高峰無責任者のホルガー・ローゼンダール氏は、メディア媒体の著作権とその収益の保護を後押しするものだと評価した。

「信頼性、情報性、独立性を備えたジャーナリズムには多額の費用がかかる。メディア経済を弱体化させ、その持続可能性を損なうコンテンツの違法利用を阻止することが強く求められている」とローゼンダール氏はいう。

本稿執筆時点では、The World Newsには17万本以上のデンマークのニュース記事が掲載されている。この数週間のデンマークからのアクセスは1日あたり数百程度ではあったが、それでもメディア企業は悪影響はったと考えているようだ。

The World Newsは、このブロッキング命令に驚かされたようで、権利者からの要請があればコンテンツを削除すると述べている。

同サイトの広報担当者は「The World Newsは世界最大級のニュースアグリゲータだ。あらゆるメディアからニュースを収集・分析し、フェイクニュースや事実の捜査を検出している」とTorrentFreakに語った。

「私たちが各国の法律に違反したのであれば、要請から数時間以内にサーバ上のコンテンツを削除する。だが、デンマークメディアからはルール違反を指摘する通知は受け取っていない。私たちは常に書き手の側に立っており、協力する準備はできている」

一方、RettighedsAlliancenは、ウェブサイトに記載されている4つのメールアドレスとドメイン登録者のアドレスからサイトに連絡したと主張する。

RettighedsAlliancenはThe World Newsに削除通告書(PDF)を送付し、運営者に訴訟を通告(PDF)し、弁明の機会を与えている。同団体はTorrentFreakに対し、メールには一切の返信がなかったと語った。

技術的にいえば、RettighedsAlliancenがメディア企業でないことを考えれば、どちらの首長も筋は通っている。しかし、インターネットプロバイダのTDCが同サイトをブロッキングしなくてはならないという事実は変わらない。

RettighedsAlliancenは、ニュース媒体の著作権の執行に加え、パブリッシャへの対価還元を確実にするという意味でも、ブロッキング命令の意義を強調する。

「ブロッキングは、犯罪者の手に資金が渡ることを抑止することも期待できる。ブロッキングされるパナマのサービスは、ウェブサイトの訪問者をあてこんだ広告から収入を得ている。これは本来デンマークのニュースメディアが得るはずの対価である」

Court Orders Danish ISPs to Block Copyright-Infringing News Site – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: June 21, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Jacob Li