123movieshub、あるいはGoMoviesとしても知られる123moviesが、突然の閉鎖を発表したのは1週間ほど前のこと。MPAAから世界最大級の海賊版サイトだと名指しで批判された直後、インターネットの表舞台から姿を消した。ハリウッドの直接口撃があったのは確かだが、ベトナム国内の動向がサイトの閉鎖に寄与したのかもしれない。
パイレート・ベイなどのサイトが一定の影響力を保ち続ける一方で、ストリーミングサイトはいまや我が世の春を迎えている。Netflixスタイルのインターフェイスと即座に始まるストリーミングによって、これまで海賊ユーザが長らく耐えてきた不満を瞬時に解消している。
そのなかでも最も成功した123moviesは、サイト名を123movieshub、GoMoviesなどに変更しつつ、わずか18カ月で数百万人のユーザを抱えるほどに成長した。
こうしたサイトが米国や欧州を拠点にしていれば、当局が即座にマークしたことだろう。しかし、急成長したこのプラットフォームは、知的財産権保護の薄いベトナムを拠点にしていたと見られている。とはいえ、ハリウッドやその政府内の友人たちの触手が届かないほど遠く離れていたわけではなかったようだ。
2017年3月、テッド・オシウス駐ベトナム米大使は、ベトナム政府に対し、映画ストリーミングサイト123movies、Kisscartoon、Putlockerの運営者を刑事訴追するよう求めた。
オシウス大使はチュオン・ミン・トゥアン情報通信大臣と会談し、同国における著作権保護の強化を進めるとの回答を得た。トゥアン情報通信相は、海賊版ストリーミングサイトへの具体的な対処については速やかに報告するとオシウス大使に伝えたという。その議論と時を同じくして、偶然か、はたまた意図的かは不明ではあるが、123moviesは長期間に渡って停止していた。
それからおよそ1年後、MPAAは123moviesを「世界で最も人気のある違法サイト」と名指しで非難し、9800万人もの月間ビジターを抱えるサービスがベトナムで運営されているとふたたび圧力をかけた。
そして2018年3月19日ごろ、123moviesは同サイトを永久に閉鎖すると発表した。サイト上には、5日後のサイト閉鎖をカウントダウンするタイマーが設置された。カウントダウンが終了すると同時に、サイトは消滅した。しかし、1つ疑問が残される。この閉鎖は本当にMPAAの圧力を受けてのものだったのか?
この数年、ベトナムは特に米国からの圧力を受け、知的財産法の見直しを模索していた。さらに昨年10月には、ベトナムのズオン・チ・ズン大使が2018-2019年期の世界知的財産機構(WIPO)総会議長に選出されていた。
アジア太平洋地域の代表がWIPOの総会議長を務めるのは12年ぶりのことである。スイス・ジュネーブで開催された第49回総会で、191の加盟国の支持を得て就任したとなれば、外交官としては類稀なる栄誉であろう。
2月、ベトナムのメディアは、同国が知的財産権への姿勢をどのように改善しているかを詳細に伝える記事を公表し始めた。全米商工会議所のグローバルイノベーション政策センター(GIPC)が同月発表した第6次国際IP指数を引用し、ベトナムのスコアが上昇していることを伝えている。
GIPCのパトリック・キルブライド副代表は、「ベトナムは東南アジア諸国との熾烈な競争のために、IPフレームワークの強化に向けて積極的に前進している。その結果、スコアが上昇した」と言う。
「ベトナム政府は強力な知的財産権への投資を継続することにより、その勢いを活かして地域のリーダーに成長し、国内のイノベーションを刺激し、国際競争力を強化することができる」。
また、ベトナム政府が、同国の「執行環境を強化」するために「IP侵害を刑事罰を強化する」法案を可決したことも評価されたという。
複数の前向きな展開があるなか、まだ不十分な点も指摘されている。Vietnam Newsによると、3月初旬、科学技術省の副局長は、その時期については明らかではないとしつつも、知的財産裁判所設立の「見通し」がある、という。
「ベトナムには知的財産裁判所が必要だが、いつ設立されるかはわからない」とグエン・ヌフク・クーン氏は話している。その状況は意図的に、あるいはよくわからないなりに、悪用されているようだ。
「複数の若者たちは、Facebookページで『ファン』の数を増やすトリックを利用して、資金を調達することなく、オンラインビジネスで巨額の利益を得ている」、「しかし、彼らが販売しているのは、知財権を侵害する模造品である」という。
2018年4月10日、ベトナムでは国内および国際的な著作権保護に関する知的財産権規制が施行されることになっている。また、昨年施行された刑法改正により、企業が行った著作権侵害が刑事訴追の対象となる。
「刑法第225条は、民間人による知的財産権および関連する権利の侵害について、3年間の禁固刑ないし3年以下の懲役刑を科すと規定している」とVietnamnet.vnは報じている。
「有罪判決を受けた企業は、初犯であれば3億ドンから10億ドン(約140万円〜470万円)の罰金が科せられる。2度目以降であれば、30億ドン(約1400万円)または最長2年間の操業停止となる」という。
要件も緩和され、以前は侵害が「商業的規模で」行われている場合にのみ刑事犯罪とされたが、今後は約500ドルの不正な利益を得た場合とされる。
こうした知的財産権へのコミットメント、法律の変更、経済発展への夢や希望、約束が、ベトナムのストリーミングプラットフォームの行く末にどのような影響を与えるのかは不明である。しかし、いずれの要素をとっても、海賊版プラットフォームに強い圧力をかけるものとなりそうだ。
また、現在米国は、知的財産権の保護が不十分であるとして、中国に強硬姿勢を取っていることもあり、ベトナムを自陣営に引き入れておきたいという思惑もあるだろう。
ベトナムの知的財産権保護に向けた熱意を考えれば、123Moviesがすぐにでも復活するとは考えにくい。昨年12月にローンチされた姉妹サイトAnimehubはまだオンラインであるが、最近の流れからすれば、瞬きをしている間に消え去っていても不思議はないだろう。
Why Did The World’s Largest Streaming Site Suddenly Shut Down? – TorrentFreak