以下の文章は、電子フロンティア財団の「OnlyFans Content Creators Are the Latest Victims of Financial Censorship」という記事を翻訳したものである。

元記事は2021年9月24日に公開されたもので、翻訳・コメントもその当時に書いていたのだが、下書き状態のままうっかり公開せずにいた。DMM、FANZAでのMastercardの突然の取り扱い終了の話題を見て、公開していなかったことに気づいた次第である。
Electronic Frontier Foundation

OnlyFansは先日、「銀行パートナーや決済事業者」からの圧力を理由に、性的に露骨なコンテンツを禁止すると発表した。金融仲介機関が口座の凍結によって憲法で保障された適法な言論を検閲する、あるいはそうすると脅す厄介なパターンの最新事例といえる。

OnlyFansは、アーティストやパフォーマーなどのコンテンツ制作者が創作物を収益化するためのサブスクリプションサイトで、アダルトコンテンツを制作する独立系クリエイターには欠かせないプラットフォームとなっている。今回の性表現の禁止は、アダルト業界で安全に収入を得るために同プラットフォームを利用していた多くのクリエイターからの反発を招いている。

これは金融仲介事業者による検閲の最新事例である。金融仲介事業者は、独立系書店ソーシャルネットワークアダルトビデオサイト内部告発サイトなどに対し、それらが憲法修正第1条で保護された表現を行っているか否かに関わらず、金融サービスへのアクセスを遮断してきた。こうした重要サービスを遮断することで、金融仲介事業者は企業に自らの道徳的、政治的基準を強制してきたのだ。

金融サービスへのアクセスを失うか、性的なコンテンツを禁止するかの選択を迫られたOnlyFansが、ユーザよりも決済事業者を選んだことは驚くに値しない。多くの企業にとって、金融サービスにアクセスできなくなると、業務に重大な支障をきたし、企業の存続に関わる事態に陥る可能性がある。

EFFが説明してきたように、金融システムへのアクセスは、コンテンツホストやプラットフォームを含む、ほぼすべてのインターネット仲介業者の運営に必須の前提条件である。電子決済経済の構造上、これらの決済システムは必然的に、オンラインコンテンツをコントロールするチョークポイントになっている。実際、連邦控訴裁判所は、企業への金融サービスの提供停止は「酸素供給を停止して人を殺す」のと同じだとしている。この事件(Backpage.com, LLC v. Dart)では、第7巡回区控訴審が、ある保安官が決済事業者に広告サイトへの金融サービスを停止するよう強く求めたことが修正第1条に違反すると判断された。

ワシントンでは、経済的検閲に対抗する動きが見られている。今年はじめ、通貨監督庁は「金融サービスへの公正なアクセス」規則を最終決定した。この規則は、銀行が政治的または道徳的に好ましくないと判断した顧客層に、銀行がサービスを提供しないことを禁止している。

コンテンツ・モデレーションは複雑なテーマであり、EFFは、技術的基盤となる企業による検閲がもたらす影響について記してきた日本語訳)。しかし、支配的で責任感のない一握りの金融機関の気まぐれや道徳観に基づいて、コンテンツ制作者が経済的なライフラインを失うようなことがあってはならない。

更新[2021/8/26] 良かった! OnlyFansは方針を転換し、性的表現を含むコンテンツを禁止する計画を撤回した。すべてのクリエイターにサービスを提供できるよう、銀行パートナーや決済事業者から「必要な確証を得た」ためだという。金融機関には、金融サービスへのアクセスを停止すると脅し、憲法で保障された適法言論を検閲することは容認されないということを認識してもらいたい。EFFは今後も経済的検閲との戦いに積極的に取り組んでいく。

OnlyFans Content Creators Are the Latest Victims of Financial Censorship  | Electronic Frontier Foundation

Author: Marta Belcher (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: August 24, 2021
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Henry & Co.

以前にSESTA/FOSTAのことを調べていたときに、セックスワーカーの置かれている立場があまりに周縁にあることに気付かされた。インターネットが彼らにもたらした相互のつながり、情報共有、声を上げるための場も、「性的人身売買との戦い」の名のもとに潰されていく。それで正義を成したかのように満足する人たちが立法府の過半数を占めている。

セックスワーカーを「救いたい」という思うのであれば、まずは偏見を捨てなければならない。彼らが搾取や虐待の標的になりやすいのは、社会に彼らの居場所がないからである。彼らを不健全な存在として偏見の目で見ることも、かわいそうな存在として憐れむことも、結局は彼らを周縁に追いやることになる。誰にも頼れないことを知っているから、悪人はそれにつけ込んでくる。

社会に居場所を作るというのは、決して特別なことが必要になるわけではない。セックスワーカーたちが掲げるプラカードにかかれているように、“Sex work is Work(セックスワークは仕事である)”, “Sex Workers’ Rights are Human Rights(セックスワーカーの権利は人権である)”という当たり前のことを受け入れ、他の職業と同じように扱う、要するにまったく気にしないということである(もちろん、セックスワークの非犯罪化も必要になるが)。

OnlyFansに圧力をかけてきた「銀行パートナーや決済事業者」は、セックスワークを他の仕事と同じとはみなしていなかったのだろう。もちろん、銀行や決済事業者が政治的・道徳的意図などを持ち合わせていたとは思わない。単に、世間の空気をなんとなく読んで、批判や厄介事を招かないようにしたい、ただそれだけなのだろう。

この問題に関しては、VOGUEにとても良い記事が公開されているので、ぜひそちらもご覧頂きたい。