以下の文章は、Article19の「UN: Free expression vital for tackling disinformation」という記事を翻訳したものである。
ARTICLE 19は、第50回国連人権理事会の偽情報に関するパネルディスカッションで、以下の声明を発表した。
意見および表現の自由に関する国連特別報告者は、偽情報に対抗するための適切なアプローチについて、「意見と表現の自由は問題の一部ではなく、偽情報と戦うための目的であり手段である」とまとめている。ARTICLE 19は、表現の自由をはじめとする国際人権法に根ざした包括的かつ積極的な措置が最良のソリューションであると考える。
国家は、以下の措置によって偽情報に対処すべきである。
- 第一に、ジャーナリストとメディア従事者をオンライン/オフラインの双方で強力に保護し、多様で自由かつ独立したメディア環境を確立しなければならない。それによって、メディアは情報の自由な流通を促進し、腐敗や虚偽を暴くことが可能になる。
- 第二に、国家は、最大限の情報開示の原則を遵守し、公共の利益に資する情報を積極的に公開するなど、包括的な情報公開権法を遵守すべきである。世界人口の90%が情報権法を有する国々に属しているにも関わらず、そうした法律の適切に実施されていなかったり、国際基準に満たないために、偽情報の拡散に寄与する結果となっている。
- 第三に、国家は、アクセス可能で、自由でオープンかつ信頼できるセキュアなインターネット接続を確保し、デジタル、メディア、情報リテラシーに投資すべきである。市民がオンラインでニュースや情報にアクセスし、批判的に評価できるようになれば、偽情報の害は低減される。
- 第四に、国家は、企業に人権を尊重させることを保証する義務を負う。企業は国際人権基準に則り、自社プラットフォームにおける偽情報を管理する明確なポリシーを定めなければならない。
国家による表現の自由の制限は、国際法で定められた適法性、必要性、比例性、正当性の原則を常に遵守しなければならない。だが、多くの国で、『虚偽の情報(false information:デマ)』という曖昧な概念でその拡散を犯罪化する法律を制定したり、インターネット遮断等の措置により自由な情報流通を断つことで偽情報に対処してきた。こうした措置は、国際人権法に反するのみならず、最終的には信頼を損ない、社会全体に偽情報を蔓延させることにもつながる。
同時に、政治的思惑による国家主導の偽情報キャンペーンが増加し、壊滅的な人権侵害にもつながっている。
国家は表現の自由を完全に受容した上で、積極的かつ包括的な偽情報対策に取り組まなくてはならない。
UN: Free expression vital for tackling disinformation – ARTICLE 19
Author: ARTICLE 19 (CC BY-NC-SA 2.5)
Publication Date: June 29, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image :Ludovic Courtès