以下の文章は、電子フロンティア財団の「Turkey’s New Disinformation Law Spells Trouble For Free Expression」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

先日、トルコ政府は偽情報対策を目的とした新法を承認した。だが、この法律は市民に「検閲法」と呼ばれ、国内外から非難を浴びている。

この法律は、10月13日に国会で可決された、定義の曖昧なこの法律は、「恐怖やパニックを扇動する」、または「国家安全保障、公共の秩序、社会の健全性を脅かす」目的で「偽情報」を公表した者に3年以下の禁固刑を科している。

世界各国で自国民のインターネット利用を制限しようとする試みが散見されているが、トルコのこの法律もそうした取組の1つと位置づけることができる。トルコ政府はこれまで、国境なき記者団から度々「インターネットの敵」と非難されてきた。数千のウェブサイトを検閲し、ソーシャルメディア企業には頻繁にコンテンツの削除を要請し、数多くのジャーナリストを投獄してきたためである。

2020年、世界を襲ったコロナ禍は、かつてないほどにインターネットを不可欠なものとした。トルコはまさにその時期に、独NetzDGに類似した法律を可決し、大手ソーシャルメディア企業に現地代表を任命させ、問題のあるコンテンツを48時間以内に削除することを義務づけた。同法はさらに、ISPにソーシャルメディアプラットフォームの帯域を最大90%まで抑制(スロットリング)するよう命令する権限を裁判所に与え、トルコ国内からソーシャルメディアへのアクセスを事実上遮断することに成功した。

そして現在、総選挙を8ヶ月後に控えたタイミングで、偽情報対策法が施行されることになった。企業は偽情報を4時間以内に削除することが義務づけられる。プラットフォームのコンテンツ削除義務は、裁判所命令やトルコ情報通信技術庁(ICTA)の要請によって有効となる。期限内にコンテンツを削除できなければ、プラットフォームはスロットリングされる。また、企業はICTAの要請に応じて、トレンドのハッシュタグに関連するアルゴリズム、拡散(promoted)・拡散抑制(demoted)したコンテンツ、広告ポリシー、透明性ポリシーなどの情報の報告が義務づけられている。

企業はアルゴリズムによって偽情報を拡散させた場合にも高額な罰金が科されるため、それを避けるためには、特定のコンテンツにアクセスしにくくする拡散抑制措置を講じなければならない。また、児童性的虐待資料(CSAM)、偽情報、国家機密など、特定の犯罪に関連する情報を可能な限り迅速に提出することを企業に義務づけ、これも違反した場合にはスロットリングされる。

間違った情報や誤解を招く情報の流布を犯罪化する新たな規則も大いに懸念される。こうした犯罪化は、報道情報を提供するジャーナリストや活動家、プラットフォーム運営者に影響を与えかねず、けっして容認できるものではない。偽情報の抑制を理由に、最低限の規制どころか、最もドラスティックな手段を採用しているのである。国際人権基準を満たしていないのは明白で、幅広い検閲につながることは必死だ。

とはいえ悪いニュースばかりではない。上述した危険な規制の中に、EUのあらたなオンラインプラットフォーム法であるデジタルサービス法(DSA)と同等の規制が含まれているのである。たとえば、ソーシャルネットワークプロバイダは、自社サービスでのコンテンツ・レコメンドにどういったパラメータを使用しているかについて、明快で理解しやすく、容易にアクセスできる情報を提供することが義務づけられ、ユーザに個人情報の使用を制限するオプションを提供しなければならない、とされている。とはいえ、幾ばくかの良い側面があるからといって致命的な悪しき側面に目をつぶれるはずもない。トルコの偽情報対策法は、表現の自由に極めて大きなリスクをもたらすものである。

Turkey’s New Disinformation Law Spells Trouble For Free Expression | Electronic Frontier Foundation

Author: Jillian C. York / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: November 7, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Khalid Albaih (CC BY-NC-SA 2.0)