以下の文章は、電子フロンティア財団の「Kids Online Safety Act Continues to Threaten Our Rights Online: 2024 in Review」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

今年は、オンライン上の権利を守るべき議会が、その責任を放棄しかけた瞬間に何度も直面した。とりわけ衝撃的だったのは、7月に上院で危険な子どもオンライン安全法(KOSA)が圧倒的多数で可決されたときだ。しかし、表現の自由を萎縮させ、多くのユーザのプライバシーを侵害する年齢確認を事実上強制するこの法案は、EFFの支持者たちをはじめとする粘り強い反対運動によって、今年は下院通過を免れた。

KOSAは若者に不適切とみなされたコンテンツへのアクセス制限措置を怠ったアプリやウェブサイトを連邦取引委員会(FTC)が提訴できるようにする法案で、2022年に初めて提出された。今年、議会は複数の法案を立て続けに提出し、我々はそれらすべてを綿密に分析してきた。上院を通過し、ごく最近には下院議員からの批判に応える形で修正版が提出された今、この法案の脅威は2025年に向けてますます高まっている。

2024年、この法案は幾度となく修正されたが、我々の反対の姿勢は変わらない。最終的にどのバージョンが採用されようとも、この法案は合法的な言論活動を広範に検閲することになる。皮肉なことに、法案が指摘する有害性から子どもたちを守り、それを乗り越える手助けとなるはずのコンテンツまでもが、検閲の対象となってしまうのだ。

以下では、我々が今年KOSAとどのように戦い、なぜ反対を続けているのか、そして現在の闘いの状況について詳しく見ていきたい。

修正を重ねても残る根本的な問題

KOSAの最大の問題点は、曖昧な「注意義務」要件にある。広範なオンラインサービスに注意義務を課し、オンライン上の言論内容に基づいて特定の危害を軽減するよう求めることは、必然的にそれらのサービスに年齢確認とコンテンツ制限を強いることになる。我々はこの点について、2022年の法案提出時から一貫して警鐘を鳴らしてきた。

2月、EFFをはじめとする各団体からの批判を受けて、上院のKOSA提案者たちは修正版を公開した。この更新では、オンラインサービスのデザイン要素に関する規制方法が変更され、一部の執行メカニズムも削除された。しかし、注意義務や法案の本質的な影響について、大きく見直されたわけではない。当時我々が指摘したように、修正版のKOSAもまた、検閲体制を確立することで、オンライン上の合法的な言論にアクセスする憲法上の権利を持つ多くの未成年者に害を及ぼし、あらゆる年齢のユーザに対して同じ言論へのアクセスにIDチェックを強制することになる。KOSAの要件は、かつて政府が特定の書籍の頒布を書店に禁じようとした事例と変わるものではなく、そうした試みはことごとく違憲判決を受けている。

声を上げた子どもたち

興味深いことに、KOSAの支持者たちが守ろうとしている当の若者たちが、この法案に異を唱え始めている。3月、我々は法案に反対する若者たちの声を集めた調査結果を公開した。数千人もの若者が、ソーシャルメディアプラットフォームへのアクセスがいかに有益であったか、そしてなぜKOSAの検閲に懸念を抱いているのかを語ってくれた。これまでこうした議論では、未成年者の声がほとんど届かなかった。しかし、KOSAが法制化された場合に最も大きな影響を受けるのは彼らなのだから、その声に耳を傾けない理由はない。

若者たちは、KOSAが芸術教育や、オンラインでのコミュニティ形成、自己発見の機会、さらには正確なニュースやその他の情報を得る手段にまで悪影響を及ぼすと訴えている。15歳のアランはこう記している。

ソーシャルメディアを通じて、私は世界について、そして自分自身について、計り知れないほど多くのことを学んできました。もしこの多様な世界との出会いがなかったら、私は全く違う、そしてずっと視野の狭い人間になっていたでしょう。言論の自由と市民の自由を誇りにしてきた国として、この法案は私たちが掲げてきた全ての価値に背くものです!

最近の修正も改善には至らず

5月、米国下院は上院法案の対となる法案を提出した。この下院版では表面的な修正は加えられたものの、検閲という根本的な問題は依然として解決されないままだった。下院版で主に変更されたのは、企業の規模に応じて法律の適用方法を変える階層制を導入したことだった。

しかし、オンライン上の言論の大半がわずかな大手プラットフォームに集中している現状を考えれば、これらの変更は本質的な意味を持たない。Meta、Snap、X、WhatsApp、TikTokといったプラットフォームには、引き続き注意義務が課され、最も厳格な基準が適用されることになるからだ。

もう一つの大きな変更点は、「強迫的な利用」の定義について精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)を参照することを提案したことだ。しかし、未成年者のテクノロジー利用が精神健康障害を引き起こすという科学的証拠の欠如は、医療専門家のハンドブックを引用するだけでは埋められない。

上院通過後の展開

KOSAは7月に上院を通過したが、共和党民主党双方議員から批判の声が上がり続けた。

9月に提出された新たなKOSAでは、細かな修正が重ねられたものの、検閲要件には手が付けられなかった。このバージョンでは、不安やうつに関する文言が「重大な感情的混乱」の防止要件に置き換えられた程度の変更にとどまっている。

12月には、X CEOのリンダ・ヤッカリーノの協力を得て作成されたさらなる新版が上院から公開された。このバージョンには「米国憲法修正第1条によって保護されている」限りにおいて、ユーザの視点を保護するという表面的な文言が追加された。しかし、KOSAによって脅かされてきたのは決してユーザの視点ではなく――常にユーザの言論を提供するホストの側であり、その本質は今も変わっていない。

KOSAはFTCにオンライン上の言論を管理する強大な権限を与えることになるが、次期FTCがその権力を行使しないとは考えにくい。法案が可決された場合に執行権限を持つことになるFTC委員長候補のアンドリュー・ファーガソンは、「トランスジェンダーのアジェンダに対抗する」などによって言論の自由を守ると約束している。つまりKOSAは、この政権だけでなく将来のあらゆる政権下のFTCに対して、子どもたちに有害だと判断したコンテンツを制限する広範な裁量権を与えることになる。そして、たとえ一度も執行されなくとも、KOSAの可決だけで、プラットフォームは保護された言論の削除に走る可能性が高い。

KOSAの可決は、アプリやウェブサイトでの年齢確認の義務化にもつながりかねない。そうした要件には深刻なプライバシー上の問題が潜んでいる。米国および国際的なオンラインID義務化に対する今年の我々の取り組みについては、より詳しく解説している。

この問題について約5万通ものメッセージを議会に送り、KOSAへの反対運動を支えてくれた支持者たちに心からの感謝を捧げたい。2025年も、我々はオンライン上のプライバシーと言論の自由を守るため、決して歩みを止めることはない。

本稿は、我々EFFの「Year in Review」シリーズの一部である。2024年のデジタルライツをめぐる戦いに関する他の記事はこちら

Kids Online Safety Act Continues to Threaten Our Rights Online: 2024 in Review | Electronic Frontier Foundation

Author: Jason Kelley / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: January 1, 2025
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Jessie Willcox Smith