以下の文章は、電子フロンティア財団の「What You Should Know When Joining Bluesky」という記事を翻訳したものである。
Blueskyは、オープン性とユーザコントロールに焦点を当てた新しいソーシャルメディアの形を目指している。だが、そのことは新たに参加する何百万のユーザにとって、どのような意味を持つのだろうか。
過去2年間、物議を醸す変更が次々と行われ、Twitterは利用制限、誤情報、ヘイトスピーチが蔓延する場へと変わってしまった。そして11月、イーロン・マスクの米国大統領選挙への関与が多くのユーザにとって決定打となり、より良い新天地を求める流れが加速した。
最大のオルタナティブプラットフォームであるThreadsは3,500万人の新規ユーザを獲得し、約15%の成長を遂げた。しかし、最も目覚ましい成長を見せたのはBlueskyである。500%を超える成長率を記録し、執筆時点での総ユーザ数は2,500万人に達している。
我々はすでにMastodon、Threads、Blueskyの技術的な比較を行ってきたが、このような急成長を目の当たりにし、Blueskyの新規ユーザが抱く疑問に答え、オンラインでのつながり方に対する新しいアプローチが実際に何を意味するのかを伝える必要があると考えた。
なお、Blueskyはまだ発展途上のプロジェクトであり、今後も大きな変更が予想される。本稿の内容は執筆時点での最新情報に基づくものであり、可能な限り同社の今後の計画についても触れる。
BlueskyはTwitterの焼き直しなのか?
一見すると、BlueskyアプリはXになる前のTwitterと酷似している。これは意図的なものだ。Blueskyチームは2022年のTwitterの代替を目指して開発を進めており、レイアウトから投稿オプション、カラースキームに至るまで、Twitterユーザにとって馴染み深い要素が取り入れられている。
分散化の文脈で語られがちだが、現時点でのBlueskyの体験は従来のソーシャルメディアと同様、Bluesky PBLLCという一企業が管理する中央集権的なプラットフォームである。ただし、同社は2つの野心的な目標を掲げている。
- 相互運用性とコミュニティ開発の重視。 他のプラットフォームが見落としがちなユーザエンパワーメントとオープンソースツールへの取り組みは、特筆に値する。
- 「信頼できる出口」としての分散化。 企業としてのBlueskyは、ネットワークとしてのBlueskyが、仮に企業が消滅したり「メタクソ化」したりしても存続できる仕組みを目指している。
最初の特徴は、すでにネットワーク上の多様なツールやアプリに表れている。特定のコンテンツのブロックから参加するコミュニティのハイライトまで、フィードをカスタマイズするための豊富な設定が用意されている――その一部についてはこちらで詳しく解説している。また、BlueskyのTwitterライクなインターフェースを、すべてのBlueskyコンテンツを表示するFireskyのようなアプリに置き換えることも可能だ。さらに、同じAT Protocolを基盤として、音声やイベントの共有に特化したアプリ、ウェブフォーラムとして機能するアプリまで登場している。
この柔軟で実験的なエコシステムは、「フェディバース」と呼ばれる、ActivityPubプロトコルを基盤とする別のエコシステムと並行して発展している。フェディバースはThreadsとMastodon、そして従来のソーシャルメディアの機能を再解釈する様々な分散型アプリをつないでいる。
「信頼できる出口」という目標は一見わかりにくいが、Blueskyのいくつかの特徴的な違いを説明している。最も顕著なのは、ユーザ名がドメイン名形式を取り、新規ユーザのデフォルトがbsky.socialのサブドメインになっていることだ。EFFは独自の設定により、アカウント名を我々のウェブサイトである@eff.orgとしており、これは異なるアプリで表示される場合でも変わることはない。Mastodonの認証システムと同様、中央機関や公的書類は不要で、サイトやレコードの管理権限を証明するだけでよい。
Blueskyの分散化が進むにつれ、分散化に伴う様々な課題が浮上し、Twitter的な体験からさらに離れていく可能性が高い。
プライバシーはどうか?
Blueskyは多くの既存のソーシャルメディアプラットフォームが採用する監視型広告を避けているものの、共有される情報はユーザが思っている以上にパブリックでアクセスしやすい。
Blueskyアプリは、トラッキングの可能性があるサードパーティの埋め込みメディアにユーザの同意を求めるなど、データを最小限に抑える賢明なデフォルト設定を提供している。ただし、ユーザにとって本当の保証となるのは、仮にメインアプリのプライバシー保護が低下しても、オープンなツールを使って誰でも同じネットワーク上に完全な機能を備えた代替アプリを作れることだ。
しかし、設計思想として、Blueskyのコンテンツはネットワーク上で完全にパブリックである。ネットワーク上のアプリに対して、アカウントの閲覧にログインを要求するようプライバシー設定を変更できるが、これは任意の選択肢に過ぎない。すべての投稿、いいね、シェアは世界中から閲覧可能であり、ブロックに関するデータさえも公開されている。これは、Twitterがかつてそうであったようなグローバルな発信プラットフォームを目指すBlueskyの設計上の特徴である。
この透明性はモデレーションの仕組みにも及んでおり、ユーザとコンテンツはBlueskyのモデレータ、コミュニティモデレータ、自動ラベリングの組み合わせによってラベル付けされる。結果として、ユーザに関する情報は時間とともにこれらのモデレータによって保持され、コンテンツの表示・非表示の判断材料として使用される。
AIトレーニングのためにパブリックコンテンツが利用されることに不満を抱いてXを離れたユーザにとって、すべてのコンテンツを1つのストリームに集約するこのアプローチは、サードパーティによるAIトレーニングのスクレイピングを容易にする側面があることは理解していたほうがよいかもしれない。BlueskyのCEOはAIライセンス契約に関与しないことを明言しているが、これは開放性を重視するネットワークに固有の課題である。クリエイティブな表現、イノベーション、研究のためにパブリックデータを利用する自由は、AIのトレーニングにも適用されるからだ。
ブロックしたユーザであっても、このパブリックストリームを通じてあなたの投稿を閲覧できる。トロールや悪意ある行為者が投稿を別の文脈で再共有する可能性がある場合には重要な考慮事項だろう。
ダイレクトメッセージはこれらのパブリック情報には含まれない。ただし、エンドツーエンド暗号化は施されておらず、Blueskyサーバーでのみ保管される。Xと同様、すべてのDMはBluesky PBLLCから閲覧可能である。モデレーション目的や正当な警察の令状に応じて開示される可能性があり、将来的にはデータ漏洩によって公開されるリスクも存在する。暗号化DMは計画されてはいるが、センシティブな会話は完全に暗号化された別のツールで行うことをおすすめする。
フォローする人々はどう見つければよいのか?
Skybridgeのようなツールを使えば、Twitterの連絡先をBlueskyに簡単にインポートできる。Mastodonへの移行時と同様、これらのツールは広範なアカウントアクセス権限を必要とし、ネットワーク間の移行が進むにつれて再実行が必要になる可能性があることに注意が必要だ。
Blueskyは「スターターパック」も導入している。これは誰でも作成して新規ユーザと共有できる、キュレーションされたユーザリストである。EFFも最近、以下のようなパックを公開している。
- Electronic Frontier Foundation Staff
- Electronic Frontier Alliance members
- Digital Rights, News & Advocacy
Blueskyはフェディバースの一部なのか?
「フェディバース」とは、ActivityPubプロトコルを介して相互に通信する多様なサイト、サービス群の総称で、Threads、Mastodon、その他多くのプロジェクトが含まれる。BlueskyはAT Protocolを採用しており、現時点ではActivityPubとの互換性がなく、フェディバースの一部ではない。
しかし、Blueskyはすでに相互運用可能で分散化されたソーシャルウェブという大きなビジョンの中に組み込まれつつある。FediverseからRSSを通じてBlueskyアカウントをフォローできるほか、多くのモバイルアプリがBlueskyとフェディバースのフィードをシームレスに統合し、両方のアカウントへの投稿を可能にしている。さらに、Bridgy Fedというプロジェクトを使えば、Blueskyまたはフェディバースのアカウントを1つ持っているだけで、両方のネットワークに投稿やDMを共有することができる。
この連携は最近、数億人規模のThreadsユーザにも広がった。フェディバース共有を有効にし、フェディバースのBridgy Fedアカウントに接続するという追加手順を踏むだけでよい。我々は、これらのプロジェクトが今後さらなる統合を進めていくことを期待している。
Blueskyネットワークは本当に分散化されているのか?
現時点でのBlueskyネットワークは、分散化されているとは言えない。
プラットフォームホストとしての支配から「信頼できる出口」を作ろうとしているBluesky PBLLCという一企業によって、ほぼすべてが構築・運営されている。もし今夜、企業としてのBlueskyとそのインフラが消失すれば、Blueskyネットワーク全体も事実上消滅してしまう。
2,500万人のユーザのうち、Bluesky外のサービスでホストされているのはわずか1万人で、その大半はフェディバースとの連携によるものだ。別のホストへの移行も現時点では一方通行の退出に過ぎない。すべてのDMはBluesky所有のサーバーに依存しており、ユーザIDの管理システムや、ネットワーク全体のコンテンツを集約する負荷の高い「リレー」サーバも同様である。モデレーションの大部分から主要アプリの開発まで、同じ企業が担っている。フェディバースやEメールなどのネットワークと比べると、独自のBlueskyノードをホストするには現時点でかなりの投資が必要となる(訳注:本稿公開後、Blueskyとは独立した“Free Our Feeds”プロジェクトが始動し、独立したホスティングインフラ(第2の「リレー」)の構築を目指すキャンペーンを開始している)。
この状況が改善されたとしても、「信頼できる出口」は必ずしも「分散化」と同義ではない。危機的状況に備えた非常口があることは望ましいが、分散化されたネットワークがもたらす権力と意思決定の分散には及ばない。この違いは、Bluesky PBLLCへの依存度が試され、同社がネットワークの各要素により多くのサードパーティを受け入れていくにつれて、より重要な意味を持つようになるだろう。
Blueskyの収益モデルは?
過去数十年、同じ「メタクソ化」のパターンが何度も繰り返されてきた。新興企業が魅力的な約束を掲げてユーザを集め、やがて利益最大化のために監視とユーザの自律性制限へと舵を切る――その歴史は長い。
Blueskyは異なる道を歩めるのだろうか?同社の事業計画によれば、監視型広告の利用やユーザのロックインを避けることを約束している。CEOのジェイ・グラバーは、ユーザコンテンツをAIトレーニングライセンスとして販売せず、サービスへの参加を常に無料に保つ意向を示している。収益源としては、カスタムドメインのホスティングや有料サブスクリプションの導入が有力視されている。
ただし現時点では、同社は投資資金に依存している。当初はTwitter共同創業者のジャック・ドーシーによって育まれたプロジェクトだったが――彼はその後距離を置くようになった――最近では800万ドルと1,500万ドルの資金調達を実施している。
後者の投資ラウンドは、暗号通貨に特化したベンチャーキャピタルのBlockchain Capitalが主導し、同社のパートナーがBluesky取締役会に加わったことから、既存ユーザの間で暗号通貨サービスへの転換を懸念する声が上がった。これに対しジェイ・グラバーは、ブロックチェーンプロジェクトによってソーシャル体験を「過度に金融化することはない」と約束し、Blueskyがブロックチェーンを使用していないことを強調している。
上述の通り、Blueskyはユーザのための「信頼できる出口」を最優先事項としている。この相互運用性へのコミットメントは、コミュニティに対する企業の説明責任を担保し、人々をXから遠ざけた「メタクソ化」を防ぐ歯止めとなることが期待される。BlueskyネットワークとAT Protocolがその成熟段階に到達するためには、これらの約束を着実に実行に移していくことが鍵となるだろう。
モデレーションの仕組みは?
Mastodon、Threads、Blueskyの比較で詳しく触れているが、現状のBlueskyのモデレーションは、マスク以前のTwitterに近い。Bluesky社はオープンなモデレーションツールを用いて投稿とユーザにラベルを付け、利用規約に違反したユーザをホストサービスから除外する。このツールキットにより、Bluesky社のモデレーションは「信頼できる出口」の目標に沿った形で、将来の運営者と同等の立場で行われる。ただしこれは、現在の中央集権的なモデレーションには限界があり、善意の努力を重ねても課題に直面することを意味している。
Blueskyはこの課題に対し、モデレーションツールをコミュニティに開放することで対応している。ウェブアプリの詳細設定から、誰でもコンテンツやユーザにラベルを付けることができ、これらのラベルを基にコンテンツのフィルタリング、優先順位付け、ブロックできる。ただし、問題のあるユーザを「プラットフォームから排除する」権限はBlueskyのみが持ち、ホスティングの停止やコンテンツの中継停止、あるいはその両方によって実行される。
Blueskyは検閲への耐性を目指しており、「信頼できる出口」の実現には、企業によるユーザ排除の権限を制限することも含まれる。将来、Blueskyネットワーク上に様々なホストとリレーが存在するようになれば、ユーザの排除はインターネットからウェブサイトを削除するようなものとなる――不可能ではないが、極めて困難だ。その代わりに、ユーザは反対する発言をフィルタリングやブロックで対処し、支持する声がネットワークから排除されないことを信頼するようになるだろう。
Blueskyの開放性は、昨年5月に親トランプのボットネットがNostrからMastodonを経由してBlueskyに侵入し、タイムラインを荒らした事例のような、ネットワークの乱用にコミュニティツールで対処する必要性を示している。フェディバースと同様、Blueskyも最終的にこれらの懸念に対処するため、信頼できるアカウントホストとリレーのネットワークを形成する可能性がある。
Blueskyは依然として発展途上のプロジェクトだが、分散化、ユーザコントロール、相互運用性を重視する姿勢は、注目に値する展開を見せている。お試しにとどめるにせよ、本格的な移行を考えるにせよ、本稿の知見がプラットフォームを理解する一助となれば幸いである。
What You Should Know When Joining Bluesky | Electronic Frontier Foundation
Author: Rory Mir / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: December 18, 2024
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Jez Timms