以下の文章は、電子フロンティア財団の「EU Parliament Takes First Step Towards a Fair and Interoperable Market」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

EUのデジタル市場法(DMA)提案は、EUにおけるオンラインプラットフォーム市場をより公正で競争力のあるものにすることを主眼としている。DMAによって、ビジネスユーザとエンドユーザ間のゲートキーパーの役割を果たす超巨大プラットフォームのスタンダードが定められることになる。DMAでは、ゲートキーパーが「デジタル市場へのアクセスを実質的にコントロールし、デジタル市場に固定化されている」ことから、プラットフォームが遵守すべき事項を列挙している。我々は当初の草案を複数の点で評価してきた。ゲートキーパーが本質的に国際的な存在であるというDMAの前提に同意できるし、多くの義務が「自己執行型」の性質を有していることも良い。また、コンプライアンスを確保するための効果的な罰則規定を支持している。データ混合の禁止(第5条(a))、強制的なシングルサインオンの禁止(第5条(e))、クロスタイイングの禁止(第5条(f))、ロックインの禁止(第6条(e))などの反独占規定は、企業の集中を解消し、競争を活性化しようという意欲が感じられる。

エンドユーザの視点に立て:EFFは相互運用性の推進を求める

だが、DMA提案がエンドユーザの視点に立っていないこと、とりわけプラットフォームに対する相互運用性の義務を設けていないことは残念であった。欧州委員会はDMAにリアルタイムのデータポータビリティ義務を導入することで、我々の期待にある程度は応えようとしたが、それでもまだ道半ばだ。Facebookの利用規約に不満を持っていても、Facebookのアカウントを維持し続けなければデータポータビリティの恩恵を受けられないとしたら、Facebookが目に見えて行動を変化させるだろうか。そのような変化は期待できないだろう。

欧州議会の主要委員会が相互接続と機能的インタラクションを要求

本日の投票で、欧州議会の域内市場委員会(IMCO)は、提案された独占禁止規則の大半を維持することに強く同意し、欧州委員会の提案の重要な修正点にも賛成した。その詳細については今後数週間かけて分析を進めていくが、いくつかの点で重要な進展が見られている。1つは、IMCOが対象となるプラットフォームの基準を極めて高く設定したことである(時価総額800億ユーロ以上/訳注:10兆4000億円以上)。これは主に米国を拠点とする一握りの企業のみがゲートキーパーとしての役割を果たし、域内市場において固定的・永続的な地位を有していると法的に推定されることを意味する。また欧州議員は、データ混合の禁止に関する段階的な改善に同意し、未成年者の実質的な保護にもつながるターゲティング広告の限界を明確にし、野心的な試みとしてDMAの迂回防止規定にダークパターンの禁止を盛り込んだ。さらに、独占禁止規定の組織的な違反に対する罰則として、禁止買収の禁止を追加している。

相互運用性については、EFFを始めとする市民社会団体がデータポータビリティや付帯サービスの相互運用性という控えめな目標に甘んじてはならないと強く提言したことを受けて、欧州議員は応じてくれた。DMAの主要委員会は、部屋の中の象であるメッセージングサービスとソーシャルネットワークを見てみぬふりすることなく、「同等のコア・プラットフォームサービス」の提供事業者が、ゲートキーパーの番号に依存しない対人コミュニケーションサービス(メッセージングアプリなど)やソーシャルネットワークサービス事業者の要求に応じて、無償で相互接続させるための重要な条項を提案している。その相互接続は、差別的待遇を回避するため、ゲートキーパーまたはその子会社、パートナーが利用可能ないし利用しているものと客観的に同じ条件・品質で提供されなければならない。これは、高水準のセキュリティとデータ保護を保証しつつ、これらのサービスと機能的な相互接続を可能にするためである。

競争的互換性

もう1つの重要なポイントはDMA迂回防止規定で、EFFの提言に従い、ゲートキーパーは「技術的保護手段、差別的サービス条件、アプリケーション・プログラミング・インターフェースを著作権の対象とすること、または誤解を招くような情報を提供すること」により、相互運用性を阻害する行為をしてはならないとしている(第6条(a))。

相互運用性に関する注意点

ゲートキーパーの相互運用性義務には、注意点や疑問点がある。メッセージングサービスの相互接続ルールの実施には、電子通信コード指令の要件が適用されるが、ソーシャルネットワークの相互接続ルールは、まだ定義されていない仕様やスタンダードに依拠することになる。また、この表現には解釈の余地も存在している。たとえば、相互接続を提供する義務とその提供方法(「同一の条件で利用可能または利用されている」)の関係が不明確であり、現実には制約が課せられる可能性がある。とはいえ、DMAの前文では、立法意図を明確に示し、「相互接続機能が欠如していることで、エンドユーザがゲートキーパーから提供された社会的つながりやネットワークを再構築できず、ユーザの選択と移行の能力に影響を及ぼす可能性がある」と説明されている。それゆえ、代替コア・プラットフォームサービスの提供事業者には相互接続を認めなければならないのである。番号依存型の相互コミュニケーションサービスであれば、サードパーティプロバイダが「テキスト、ビデオ、音声、画像など」の機能について相互接続を要求できるt子を意味し、ソーシャルネットワーキング・サービスであれば、「投稿やいいね、コメントなど」の基本的な機能に相互接続できることを意味する。

次のステップ:投票と交渉

今後は、この目的を明確で強制力のある文言に置き換えることが、欧州議会議員の仕事になる。主要委員会で承認された文言は、今後本会議での投票にかけられることになる。また法律として成立させるためには、それほど意欲的な態度を示していない欧州理事会の同意も必要になる。EFFは今後も、企業集中の解消に向けたルールを求めていく。

EU Parliament Takes First Step Towards a Fair and Interoperable Market | Electronic Frontier Foundation

Author: Christoph Schmon / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: November 23, 2021
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Greg Rosenke