以下の文章は、Fight for the Futureに掲載された「Letter Calling on the FTC to Challenge Amazon-iRobot deal」という連邦取引委員会宛の公開書簡を翻訳したものである。

Fight for the Future

リナ・カーン 連邦取引委員会 委員長
ノア・ジョシュア・フィリップス委員
レベッカ・ケリー・スローター委員
クリスティン・S・ウィルソン委員
アルバロ・ベドヤ委員

CC: FTC競争局ホリー・ヴェドバ局長、FTC消費者保護局サム・レヴィン局長 消費者保護局長

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Re: アマゾンによるアイロボット社の買収を阻止せよ

カーン委員長および委員各位

以下に署名する団体は、連邦取引委員会(FTC)がその権限を行使し、AmazonによるiRobot Corporationの買収提案に異議を唱えることを強く要請します。この買収提案は、消費者のプライバシーと市場競争に多数の重大な懸念をもたらすものです。Amazonに、消費者の極めて詳細なデータにアクセスしうる強豪スマートホームデバイス事業の吸収を許してしまえば、公正な競争と開かれた市場を危うくすると同時に、消費者のプライバシーを危険に晒すことにもなります。

iRobot社の買収が完了すれば、スマートホームデバイス市場における競争はさらに弱まり、デジタル経済におけるAmazonの強力な市場的地位がさらに拡大することになります。Amazonは有機的な成長ではなく、買収によって競合他社を排除することで、その市場支配力を不当に拡大しようとしています。また、他の市場参加者がアクセスできない消費者データを利用することで、公正な競争を抑止することも目的としています。

Amazonはすでにスマートホームデバイス市場を支配しています。Alexaオペレーティングシステムは、スピーカー、サーモスタット、家電製品、ウェアラブル、ビデオドアベル、iRobot社のルンバに類似した家庭用ロボットなど、Amazonが所有するIoT機器ネットワークの基盤となっています。Amazonの内部資料では、米国世帯の少なくとも4分の1が、1つ以上のAlexa搭載デバイスを所有していると推定されていると報道されています。

Amazonのビジネスモデルは、隣接市場のライバル企業を買収し、反競争的な略奪的価格によって急速に拡大しながら、膨大な消費者データを活用して経済全体への支配力を高めることに大きく依存しています。たとえば、Amazonは2018年にスマートドアベルメーカーのRingを買収しました。買収当時、RingはすでにIoTビデオドアベルとしての人気を確立していました。2021年までに、Amazon Ringは競合スマートドアベルメーカーを駆逐し、同社の販売ユニット数は、競合上位4社の合算と同数になっています。Amazonの成功は、同社の定期購入プログラム「Amazon Prime」との統合によりほぼユビキタス化した電子商取引プラットフォームを通じて、廉価のRingドアベルを販売することに依存しています。

Amazonは、iRobotの買収によって、再び同じ道を歩もうとしています。既に人気を確立したスマートホームデバイスを買収することで、反競争的な価格設定で市場シェアを拡大し、消費者の個人情報を利用してデジタル経済における独占力をさらに強化することができるのです。AmazonはPrime契約を武器に、ルンバ・ブランドを赤字またはそれに近い状態で販売し、オンライン上の反競争的優位性を強化できるのです。つまり、今回の買収は、スマートホームテクノロジーのエコシステムにおけるAmazonの支配をさらに強固にし、この分野での競争を排除し、同社の独占的支配力を強化することにつながるのです。

自宅ほどプライベートな空間はありません。しかし、今回の買収により、Amazonは他の手段では、あるいは競合他社には入手できない私たちのもっともプライベートな空間の極めて詳細な情報を取得できるようになるのです。間取りだけにとどまらず、消費者住宅の内装や住人のライフスタイルなど、非常に詳細な情報を手にするのです。今回の買収によって、Amazonがこれらの個人情報にアクセスできるようになれば、消費者の不利益に繋がります。

Amazonは、上述した反競争的な目的を推進するためにデータを使用するばかりか、個々の消費者の行動を予測・形成しようとするデータハングリーなアルゴリズムにデータを供給するために、取得したデータを用いようとしています。これらのアルゴリズムは、中立的なコンピュータ・コードからは程遠いものです。Amazonの世界的な影響を相まって、人種差別や性別偏向的な抑圧のシステムを悪化させることにも繋がります。iRobot社の買収は、こうしたリスクを私たちの家庭に持ち込み、ひとたびデータが収集されるようになれば、より侵入的な監視や、反競争的活動への利用を防ぐ手立ては存在しないのです。

長年にわたり、公民権団体は、Amazonのスマートホーム監視デバイスのネットワークが、有色人種のコミュニティにもたらす危険性、とりわけこれらの装置によって収集される大量のデータに起因する危険性について警鐘を鳴らしてきました。Ring社の買収と同様に、iRobot社の買収は、とりわけ中絶を受ける権利など、これまで確立されてきたプライバシー権が侵食されつつある環境において、予期せぬ有害な結果をもたらすことにもつながるでしょう。既に侵入的なAmazonのホームシステムにiRobotのデバイスをリンクさせれば、さらに多くのIoTデバイスからのデータ収集を促すことになり、その中には、生活習慣や健康など、私たちの人権と安全を危険に晒すようなプライベートな情報が含まれることにもなります。既に懸念されていることでさえ、重大な結果をもたらすものです。したがって、この買収は慎重に審査されなければなりません。委員会は賢明にも、複数の侵入的な慣行に終止符を打つためのルールメイキングに着手しています。私たちはこのプロセスの進展と、そのプロセスへの関与を心から待ち望んでいます。

AmazonのiRobot社の買収提案は、デジタル経済における消費者のプライバシーと競争への緊急の脅威となるものです。私たちは、FTCが最も強力な法的根拠に基づいて、この買収に異議を唱えることを強く要請します。デジタル時代に入り、独占の性質の変化したことを裁判所に認識させることが、FTCに強く期待されています。

この件にご関心をお寄せいただき、ありがとうございます。

敬具

Fight for the Future
Public Citizen
Athena
Main Street Alliance
National Employment Law Project
Demand Progress Education Fund
Revolving Door Project
Demos
Liberation in a Generation
National Domestic Workers Alliance
Institute for Local Self-Reliance
Action Center on Race & the Economy
Surveillance Technology Oversight Project
Open Markets Institute
Color Of Change
Our Revolution
Electronic Frontier Foundation
Center on Privacy & Technology at Georgetown Law
Good Jobs First
Economic Security Project Action
NYCC
Jobs With Justice
Make The Road New York
American Economic Liberties Project
The Center for Popular Democracy Action
International Brotherhood of Teamsters

Fight for the Future – Letter Calling on the FTC to Challenge Amazon-iRobot deal

Author: Fight for the Fiture Publication Date: September 9, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Jan Antonin Kolar (modified)