暗号化の規制ではなく代替案の模索を：オランダ政府にサイバーセキュリティ諮問機関が勧告

EDRi

オランダのサイバーセキュリティ最高諮問委員会が、オランダ政府に対し、暗号化データへのアクセスについて別の規制手段を検討すべきだと勧告している。この助言は、様々な点で非常に興味深いものとなっている。

尊重すべき意見

はじめに、サイバーセキュリティに関する内閣の最高諮問機関であるサイバーセキュリティ委員会（CSR）について説明しておこう。CSRのメンバーは、それぞれの専門分野で高い評価を受けており、公共・民間セクターの双方の多様な代表者から構成されている。それゆえサイバーセキュリティ委員会は、警察、総合情報保安局（AVID）、テロ対策調整官（NCTV）、国防省から尊敬すべき代表者を迎えている。これらの機関は、暗号化の恩恵を享受すると同時に、そのデメリットもよく理解している。その彼らがこう言っているのである。「代替手段を検討し、暗号化を制限すべきではない」と。

それほど難しい話ではない

提案された代替手段には、驚くほど単純なものも含まれている。たとえば、企業がどのようなデータを保管・保存しているかはほとんど知られていない。さらに同委員会は、企業等の組織が開示請求に迅速かつ十分に応じていない（数ヶ月かかることもある）とも結論している。委員会は、この点に改善の余地が大いにあると見ている。政府は、データの提供を命じる法的手続きのあり方に立ち返るべきである。必要があれば法律を改正し、それと同時により良い協力関係を構築するための努力を惜しむべきではない。もちろん、「言うは易く行うは難し」だが、だからといってとてつもなく難しい話ではない。

視野を広げよ

勧告を簡潔にまとめると、内閣は視野を広げるべきだ、ということになる。電話やインターネット・トラフィックの盗聴権限にばかり注目していてはいけない、と委員会は言っているのである。そのような捜査手法はもはや有効とは言い難く、代替手段はいくらでもある。むしろ、内閣は入手可能な情報と（訳注：捜査に与えられている）特権とを総合的に勘案し、その最大限の活用に注力すべきである。これは我々が以前から提案してきたことでもある。暗号化は技術的な発展によって可能になった。その発展は、我々の日常生活を大規模かつ詳細に記録する技術の発展と並行している。それゆえ、捜査機関やシークレットサービスの仕事は、しばしば非常に容易になる。全く同一の代替案ではないにしても、議論や審議の中で評価されるべきものであろう。

暗号化を保護せよ

「暗号化の制限が間違った考えであることは、誰の目にも明らかである」。、Bits of Freedomをはじめとする数十の団体は、この言葉を掲げて内閣に暗号化を奨励するよう要請した。署名団体には、消費者や子供の権利の擁護団体、オランダのデジタルインフラを維持する企業、セキュリティの専門家、人権団体などが含まれている。2ヶ月ほど前にも、議会がエンドツーエンド暗号化の保護を内閣に求める動議を圧倒的多数で可決している。中道右派（VVD）を含む、連立政党議席の4分の3がこれに賛同しているのである。いずれも、内閣、とりわけ法務大臣に対する明確なシグナルである。

本稿のPhilip WestbroekとJasper Sprengersが翻訳を行った。記事はEDRiメンバーのBits of Freedomが発表したものである。オランダ語記事はこちら。