以下の文章は、電子フロンティア財団の「Pushing for Strong Digital Rights in the States: 2022 in Review」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

EFFは今年、10を超える州の法案に関与し、州レベルでの強力なデジタルライツの確立のために戦った。全米の政治家たちが、医療プライバシー、生体情報プライバシー、修理する権利などの問題に取り組んだ。

カリフォルニア州では、EFFは3つの法案(A.B. 2091、A.B. 1242、S.B. 107)を支持した。この3法案が成立したことを誇りに思う。この法案は、カリフォルニア州をリプロダクティブ・ヘルスやジェンダー・アファーマティブ・ケアを求める人々のデータ・サンクチュアリにする重要な一歩を踏み出すものである。レベッカ・バウアー・カハン下院議員、ミア・ボンタ下院議員、スコット・ウィーナー上院議員が提出したこれら法案は、カリフォルニア州の医療従事者や企業が、リプロダクティブ・ヘルスやジェンダー・アファーマティブ・ケアに関する情報開示を要請する州外の令状に応じることを禁じ、人々を保護する。EFFはまた、バウアー・カハン下院議員が提出したA.B. 2089を支持した。この法案は、カリフォルニア州医療情報守秘義務法(CMIA)の保護をメンタルヘルスアプリで作成された情報に拡張するものだ。

しかし、すべてのプライバシー法案がカリフォルニア州議会を通過したわけではない。EFFは今年、カリフォルニア州で不必要なデータ収集を抑制する2つの強力なプライバシー法案、「カリフォルニア生体情報プライバシー法」(S.B. 1189)と「学生受験者プライバシー法」(S.B. 1172)のスポンサーとなった。残念ながら、S.B. 1189は、経済界の激しい反発に遭い、上院での議決に至る前に阻止された。またS.B. 1172は、その主要な執行メカニズムである私訴権(private right of action)が削除され、大幅に後退したため、EFFも共同スポンサーであるPrivacy Rights Clearinghouseも支持を継続できなくなった。

もちろん、我々の活動はカリフォルニア州だけで行われていたわけではない。

全米で、プライバシーに関する法制化に動く州が続出した。カリフォルニア州では2018年にプライバシー法が成立しているが、それ以降、カリフォルニア州ほどプライバシー権の強力な基盤を構築した州はない。

むしろ、まったく逆の動きが見られている。昨年、バージニア州で、消費者保護に寄与するとは到底思えない名ばかりのプライバシー法案が可決された。残念なことに、今年もユタ州とコネティカット州で同様の骨抜きのプライバシー法案が可決された。バージニア州の法案を他の州のプライバシー法案の雛形とすべきではない。我々は他州がバージニアの法案を自らの法案の出発点としないよう強く求める。EFFは、オレゴン州司法長官が招集した作業部会に参加し、州のより良いプライバシー法の策定に取り組んでいる。

州議会は、州間の法律を調和させるため、他州の文言や法案をしばしばまるごとコピーしようとする。それゆえ、すでに他の州で成立した法案と同じ法案が各州で提出されることも少なくない。我々は来年、今年州議会に提出された2つの法案と戦うことになるだろう。1つは、サウスカロライナ州議会に提出された「例外なき受胎時平等保護法(Equal Protection at Conception – No Exceptions – Act)」だ。この法案はリプロダクティブ・ジャスティスの問題に関して州内の分断をさらに深めるものになるだろう。法案は、「全米胎児の生きる権利連合(National Right to Life Coalition)」が発表した文言に基づき、州民が中絶についてオンラインで閲覧できる情報を制限するものである。EFFがサイエンティフィック・アメリカン誌への寄稿記事にも書いたように、「結果として、我々全員が発言できることを制限するおそれがある」。サウスカロライナ州議会はこの法案の審理を選択しなかったが、来年には他の州でも同様の法案の提出が予想される。

2つ目は、カリフォルニア州の「年齢に応じたデザインコード(AADC:Age Appropriate Design Code)」である。これは「子供がアクセスする可能性のあるオンラインサービス・製品・機能を提供する企業 」に新たな義務を課す内容で、既に法律として成立している。EFFは、AADCの曖昧な表現に深い懸念を抱いている。この法律は子どもを18歳未満の者と定義しているため、企業は「子どもの最善の利益」のためにどのような行動しなければならないのかが不透明である。また、この文言によって、企業がオンラインサービスにアクセスする際に、すべてのユーザーに年齢確認を求めるようになる可能性があることも懸念される。AADCの目的は子どもを守ることであり、その目的は尊重したい。だが、この法律が抱える問題はあまりにも大きく、他の州が法案のテンプレートとしないよう強く求める。

一方、他の州に取り上げてもらいたい法案もある。修理する権利法案は、引き続き勢いを増している。コロラド州では、車いす使用者に自分で車いすを修理する自由をもたらす法律が議会を通過した。また、ニューヨーク州では、全米初の画期的な「修理する権利」法案が議会を通過している。この法案により、消費者は自分で電子デバイスを修理したり、信頼する修理業者に依頼することが容易になる。もっと多くの州議会でこの問題が取り上げられることを望んでいる。

また、メリーランド州選出のスーザン・リー上院議員と共に、S.B. 134を可決できたことも喜ばしく思っている。この法案は法執行機関に対し、標準的な訓練の一環として、電子的監視の一般的な手口とその活動に関連する法律を認識させることを求めている。この法案は、上院議員のオフィスとEFFのサイバーセキュリティディレクターであるエヴァ・ガルペリンとの対話から生まれた。エヴァは、「ストーカーウェア」(本人の認識や同意なしに行動を監視する目的で他人のデバイスに密かにインストールできる市販のアプリケーション)の調査を行っている。私たちは、この法案が他の州でも同様に提案されることを期待している。

EFFの呼びかけに応え、メールを送り、電話をかけ、ブログ記事を共有し、あなたにとって重要な問題について議員に呼びかけてくれた各州のすべての人に感謝したい。我々の各州での活動では、皆さんの声が特に重要だ。その州で活動する支持者の方々の支援を受けて、我々は効果的に取り組めるのである。

本稿は、「Year in Review」シリーズの一部である。2022年のデジタルライツの戦いに関する他の記事もご覧いただきたい。

Pushing for Strong Digital Rights in the States: 2022 in Review | Electronic Frontier Foundation

Author: Hayley Tsukayama / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: December 28, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Ferdinand Stöhr / Clyde RS