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ロシア当局は、メッセンジャーアプリ「Telegram」を制圧しようとしている。先週、ロシアの裁判所は、密かにユーザを監視するための暗号鍵を当局に引き渡さなかったとして、Telegramへのブロッキングを命じた。昨日、その措置が実施され、Telegramが使用するGoogleおよびAmazonに属するIPアドレスがブロックされた。

ロシアのルールは実にわかりやすい。暗号化メッセージサービスを提供する事業者は、当局に登録し、法執行機関がユーザを監視できるように暗号鍵を渡さなければならない。

2億人ものユーザを抱える無料のクロスプラットフォーム・メッセンジャーアプリ「Telegram」は、そうした要求を拒否してきた。創業者のパーヴェル・デュロフ氏は連邦安全保障局との裁判に破れたものの、ユーザのセキュリティを損ねることはない、と強調する。

「Telegramには報告すべき株主も広告主もいません。マーケター、データマイナー、政府機関との取引も行っていません。2013年8月に開始して以来、ユーザの個人情報を第三者に開示したことはありません」とデュロフ氏は述べている。

「何よりも、私たちTelegramは、人を信じています。人間は本質的に知的で善意に満ち、信頼に足る存在だと信じています。考えを共有する自由、プライベートに会話する自由、ツールを創作する自由を信頼しています。私たちの行動はすべて、この哲学に従います」

しかし、Telegramが暗号鍵の引き渡しを拒否したことで、ロシア政府とのトラブルに直面することになった。FSB(ロシア連邦保安庁)は、テロリストとの戦いのために、Telegramのメッセージにアクセスする必要があるという。通信監視当局のロシア連邦通信局(Rozcomnadzor)は、Telegramの法令違反に対し、ウェブブロッキングを求める訴訟を起こした。そして先週金曜、当局を支持する判決が下された。

モスクワ法廷は、わずか18分間の公判によって、ロシア国内におけるTelegramの禁止にゴーサインを出した。公判の予定は前日に決定されたため、Telegram側に準備の時間はほとんど残されてはいなかった。その抗議として、同社の弁護士は一切の弁護を行わなかった。

判決を受けて、デュロフ氏は自身のVKontakteアカウントで、ブロッキングへの対抗措置をとる、とアナウンスした。

「ユーザの皆さんが手間を掛けなくても、ブロッキングを回避できる機能をTelegramに組み込みます。ただ、VPNなしで、100%これまでどおりのサービスを提供できるという保証はできません」とデュロフ氏は記している

Telegramはこの判決を控訴できるが、ロシア当局は判決の確定まで待つつもりはないようだ。彼らはデュロフ氏の対抗策に先んじて、Telegramを潰しにかかっている。

連邦通信局は昨日、全国のISPにTelegramをブロッキングする指示を通達した。ISPは迅速かつ大規模に対応した。Telegramは、AmazonとGoogleを利用してサービスを提供していたため、両者に属する莫大なIPアドレスがブロッキングの対象となった。

当初は655,352件のAmazon IPアドレスがロシアの国内ブラックリストに登録され、のちに131,100のIPアドレスが追加されたと報じられている。しかし、これでもまだ序の口だった。

Severs.ruによると、月曜にはGoogleに属する1,048,574件のIPアドレスも対象に加えられたという。連邦通信局は、Telegramに下された判決はTelegramをテイクダウンするために必要なあらゆる措置を認めていると主張する。現時点で、少なくとも1,834,996件のIPアドレスのブロッキングが確認されているが、Telegramのサービスにどのような影響を与えているかは不明だ。

金曜の判決では、TelegramがFSBに暗号鍵を引き渡せば、制限を解除されるとしていた。しかしデュロフ氏は「ユーザの秘密は売り物ではなく、人権は恐怖や貪欲さのために損なわれてはならない」と主張する。

とはいえ、Telegramもお金が要らないというわけではない。しかし、プライバシーを売り物にするFacebookのビジネスモデルとは対照的に、Telegramは世界最大規模のイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を行っている。報道によれば、すでにプライベート・セールで17億ドル(約1820億円)もの資金を調達しているという。

今週のTelegram訴訟は、ロシアの「無許可」暗号化戦争の最新版といえるだろう。

3月末、ロシア当局はチャットアプリ「Zello」を封じるために、約1500万件のIPアドレス(うち1350万件のIPアドレスがAmazonに属する)をブロッキングする可能性があると伝えた。この措置は避けられたが、Googleに属する500のドメインがこの包囲網に巻き込まれることとなった。

Russia’s Encryption War: 1.8m Google & Amazon IPs Blocked to Silence Telegram – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: April 17, 2018
Translation: heatwave_p2p