TorrentFreak

先月、ロシアの通信監督当局は、暗号化チャットアプリZelloを遮断するために、1500万ものIPアドレスをブロックするようISPに伝達した。そのIPアドレスの大半はAmazonに属するものであったため、AmazonはZelloに対して同社サーバを使用しないよう要請した。現在、ZelloはGoogleのサービスを介して運営されているが、ロシア政府は、今度はGoogleに属する286のIPアドレス、285のドメインをブロックするよう指示している。

暗号化アプリ「Zello」は、「トランシーバー」のような感覚で利用でき、親しい友人同士や最大1000人までのグループでのコミュニケーションを可能にするアプリだ。

Zelloは、2017年にハリケーン・ハーベイが米国を襲った際、非公式の救助要請ツールとして活用され、一躍脚光を浴びたアプリだ。ダウンロード数は1日に数百万件におよび、ダウンロード・チャートのトップに駆け上がった。

Zelloは非常に優れたツールであるのだが、残念なことにロシア政府はそうは思っていないようだ。ロシアでは、2016年7月に施行された「ヤロヴァヤ法」の下、ZelloのようなサービスからISP、通信事業者に至るまで、通信監督当局である連邦通信局(Roskomnadzor)への事前登録が義務づけられている。また、法執行機関がメッセージを解読できるように暗号鍵を共有しなくてはならない。

これまでのところ、Zelloはそのいずれも行っておらず、2017年4月以降、70回以上にわたってロシア政府のブロッキングの標的にされてきた。

先月報道されていたように、ロシア連邦通信局は、Zelloを遮断するために、ISPに1500万ものIPアドレスをブロッキングする「新たな実験」を実施するよう伝えた。IPアドレスの大半は、Amazonに属するものだった。

その後、Zello共同設立者のゼロ・アレクセイ・ガヴリーロフは、Amazonから同社のサービスを使用しないよう要請があったことを明らかにした。

「この物語の最新展開:Zelloのためにインターネットの半分をブロッキングしよう」と彼は言う

「インターネットの半分がブロッキングされることはなかったが、何の影響もなかったわけではない。その結果、Amazonは我々に対し、Amazonのプラットフォームを利用してブロッキングの回避などしてくれるな、と言ってきた」

ZelloはAmazonから追い出されはしたものの、引き続き別のホスティング会社のサービスを利用して運営を継続した。現在、Zelloは一部Googleのサービスを利用している。もちろん、ロシア当局がそれを見逃すはずもない。新居に写ったばかりのZelloを追い込むべく動き出した。

Vedomosti」紙によれば、連邦通信局がGoogleに属する286のIPアドレスと285のドメインをロシアの国家ブラックリストに追加し、ブロッキングすることで、徹底的に追い詰めようとしているという。

「Googleのドメインおよびアドレスは、Zelloのサービスへのアクセス制限に関連して、検察庁の要請に基づく禁止リソースに登録された」と同紙は伝えている。

ニュースサイト「CrimeRussia」によれば、GoogleのCDNに使用されるドメイン「googleusercontent.com」を含む GoogleのIPアドレスおよびドメインのブロッキングは、先週から実施されることになっていたという。

連邦通信局は、Googleのアドレスをブロッキングしたとしても、他のインターネットサービスへの影響はないと主張しているが、人権団体「Roskomvoboda」の代表は、IPアドレスの割当が流動的であるため、影響がないとの予測や保証は不可能だと述べている。

このような過剰な措置が取られたにしても、Zelloの運営そのものにダメージを与えるものではなく、運営は今後も継続するだろう。

ロシア政府がZelloのブロッキングを諦めるとは考えにくい。Zelloは人道上の理由から使用されているが、労働者のストライキの調整や、テロリスト組織にも利用されていると伝えられている。これはどんな通信システムにもいえることだが、Zelloはエンド・ツー・エンド暗号化を備えているため、当局は盗聴できるよう求めている、というわけだ。

Zelloはもともとロシアで設立されたが、現在は米国に拠点を置いている。Zelloはロシアに暗号鍵を共有することも、ロシア国内法に基づいて40万人のロシア人ユーザの電気通信データを保存することも望んではいない。

今年ロシアで施行される法律では、Zelloのようなサービスは、6ヶ月間に渡ってユーザコミュニケーションの実際の内容を、3年間に渡ってメタデータ(誰が、いつ、どれくらい、誰と連絡をとったかなどの情報)を保管する義務を負うことになっている。少なくとも現時点では、Zelloはそうしたスパイ活動に貢献するつもりはないようだ。
Russia Blocks 500+ Google IPs & Domains, Fails to Shutdown Encrypted Chat App – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: March 5, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Ivan Kramskoi