独ISP「Vodafone」は、学術書や学術論文の巨大なフリーオンラインレポジトリ「Libgen」へのアクセスを遮断しなくてはならなくなったという。Vodafoneは、大手学術出版社のElsevier、Springer、Macmillanが7月にミュンヘン地方裁判所から差止命令を獲得していたことを明らかにした。
テレビ番組やビデオゲーム、ソフトウェア、電子書籍の海賊版共有が見出しを賑わせている一方で、議論の耐えない違法コンテンツの領域も存在している。
著名な学術論文の多くは、高額なペイウォールを通じてのみアクセス可能なジャーナルに掲載されている。つまり、知識を得て豊かになりたいのであれば、その特権のために金を払えということだ。しかし、情報への自由なアクセスを肯定的に捉える人々にとって、受け入れがたいことでもある。
「Library Genesis」は、「知識は手軽に入手できなくてはならない」という理念の実現に長年取り組んでいるプロジェクトだ。一般にはLibgenとして知られるこのサイトは、科学雑誌や学術書の海賊版コピーを無料で一般公開している。
多くの人は、Libgenは知識に飢えた人々に素晴らしいサービスを提供していると思われるかもしれないが、論文へのアクセス料金によって多額の利益を上げている大手出版社にとっては、阻止すべき海賊版サイト以外の何者でもない。Elsevierをはじめとする出版社は、これまでLibgenをその標的としてきた。
今週、独メディア「Tarnkappe」は、Libgenへの国内からのアクセスが制限されていることに気づいた。Vodafoneユーザは、gen.lib.rus.ecや新しいlibgen.ioといったドメインからアクセスを試みたものの、接続できなかったと語っている。
従来のドメインからアクセスしようとすると、次のメッセージが表示される(以下は英語に翻訳したもの)。
TarnkappeはVodafoneから、Libgenへのアクセスを遮断していることを伝えられた。Vodafoneは同国の裁判所の命令に従ったためだという。
「Vodafoneは、2018年7月18日に、ミュンヘン地方裁判所がElsevier、Springer、Macmillanなどの科学出版社の訴えにもとづく予備的差止命令に従い、直ちに接続遮断措置を実施するよう要請されていた」とVodafoneのスポークスマン、ハイケ・コーリング氏は説明する。
「この予備的差止命令は、第三者による侵害について科学出版社の著作権侵害の申し立てに対処するためのものです。Vodafoneは、そのためのブロッキングを実施しました」
現時点では、ISPによるLibgenのブロッキングが、Vodafoneに限定されるのか、あるいはほかのISPにも命じられているのかは不明だ。一般に、著作権者としては、より多くのISPに適用されたほうが効果があると考える傾向にあり、適用対象の拡大の可能性は高そうだ。
ElsevierとLibgenは長きに渡って戦いを繰り広げてきた。2015年6月、この10億ドル規模の出版社は、ニューヨーク地方裁判所に、同プロジェクトの停止を求め提訴した。その直後にサイトは停止したが、それは一時的なものであった。
そのわずか数カ月後の2015年11月、ニューヨーク地裁は、Libgen、Sci-Hub.org、Bookfi.org、Elibgen.orgなどのサイトに対する予備的差止請求権をElsevierに与えた。
その後、Libgenはもぐらたたきゲームを開始した。同サイトは、複数のドメインスイッチやその他の回避テクニックを駆使して戦い続けた。
2017年6月、ニューヨーク連地方裁判所は、LibgenとSci-Hubに対し、Elsevierに数百万ドルの損害賠償を支払うよう命じた。これはElsevierが1500万ドルの損害賠償を求めるデフォルト判決を求めた結果である。しかし、この判決にもかかわらず、Elsevierが抱える問題は好転することはなく、両サイトの人気はますます高まっていった。
ドイツでは、海賊版サイトのブロッキングは導入されたばかりだ。独最高裁は2015年、著作権者が運営者やホスティングプロバイダを特定できない場合、ISPは海賊版ウェブサイトをブロッキングしなければならないとの判決を下した。
しかし、2018年2月になって、ようやく最初のブロッキングが実施された。Vodafoneは、映画配給会社からの申し立てに基づき、人気の海賊版ストリーミングポータル「Kinox.to」への加入者のアクセスをブロックするよう命じられている。
Vodafone Blocks Libgen Following Elsevier, Springer & Macmillan Injunction – TorrentFreak
Publication Date: August 8, 2018
Translation: heatwave_p2p
Materials of Header Image: IvanPais / geralt / DavidRockDesign