TorrentFreak

フェアユースは著作権法のきわめて重要な側面であり、DMCAのもとで不当に攻撃を受けた場合には、守られなければならない。さぁ、仕事に取り掛かろう。フェアユースを抑圧しようとする輩は罰せられなければならない。バランスを保つために、不当にフェアユースを主張し、それが明らかに根拠のない場合にも、罰せられるべきであろう。

エレン・サイドラーは、米国在住の映画製作者、ジャーナリスト、講師、写真家として活躍する多才な人物である。彼女はまた、インターネット上の海賊行為を強烈に批判する人物でもある。

サイドラーの海賊討伐は、2010年に彼女の映画『And Then Came Lola』がリリースされたときに始まった。その映画は、ほかのあらゆる映画と同様に、海賊版が出回った。Vox Indieに投稿した彼女の記事からも明らかなように、これが彼女にとってのターニングポイントとなった。それ以降、彼女は著作権侵害がもたらす損失について折にふれて訴えてきた。

今週、サイドラーは『偽のフェアユースの主張は、既に海賊行為で損害を受けているクリエイターを更に害する』と題した記事を公開した。そして彼女は、Google/YouTubeとそのユーザに対する全面攻撃を続けた。

「先週、サンフランシスコで開催された米著作権局のセクション512ラウンドテーブルで、フェアユースや著作権削除の濫用について多数のコメントが寄せられました。そのような主張をする人たちは、邪悪なDMCA削除によって、可哀想な無実のアップローダーが犠牲になっていると繰り返し繰り返し嘆いていました」とサイドラーは記す。

「たしかにそれは事実でしょうし、重要な論点ではありますが、しかし同時に不誠実でもあります。私を含め、一部の人びとは、作品を繰り返し(そして大規模に盗まれている)クリエイターが、しばしば(二重に)邪悪なフェアユースの主張の犠牲となっていることを議論にのせようとしました」

直接語ってはいないものの、サイドラーは、DMCAがどのように修正されるにしてもフェアユースは保護されなければならないと主張するFight For The FutureやChannel Awesomeのような団体の主張について言及しているようだ。彼らは先週の議論で、まさにそのようなことをした。そうした取り組みは不誠実であり、アンフェアだという。

彼女の記事で説明されているように、サイドラーが指摘する問題は、一部のYouTubeユーザが著作権侵害コンテンツ(ある映画全編)をアップロードし、YouTubeで公開されたという事例にもとづいている。その件では、YouTubeのコンテンツIDシステムがそのビデオに正確に著作権侵害フラグをたて、ブロックされた。しかし、このストーリーはそれでは終わらない。

「このYouTubeユーザは、権利者が、全編の著作権侵害コピーをブロックする権利を持っているとは考えていないようで、即座にこのブロックに異議を申し立ててきました」とサイドラーは記す。

「著作権者の許諾は必要ない」とユーザは繰り返し反論通知に書いてきたという。「著作権法におけるフェアユースである。説明する必要はない」

言うまでもなく、この不当なフェアユースの主張は、サイドラーを激昂させた。

「先週のラウンドテーブルでは、著作権者が悪意ある削除に抗議する人を罰しようとしていると、数々の証拠が提出されました。しかし、『フェアユース』が誤った、もっと正確に言えば、悪意のある根拠として濫用されているということも指摘されなくてはならないでしょう。それは、適法に『フェアユース』を主張する人たちとっても重要な事実なのですが、アンチ著作権の扇動者たちには都合よく無視されています」

上記のパラグラフは、いささか腹立たしい。フェアユースの権利を適法に行使したい人びとは、その権利が脅威に晒されていると感じたとき、抗議する権利を有している。さらに、映画全編にフェアユースを主張する人びとは、解説、パロディ、批判、ニュース報道を目的としたコンテンツの部分的な使用をしている人びととは無関係である。とはいえ、サイドラーの言い分もごもっともではある。

映画全編をYouTubeにアップロードし、まったく要件を満たさない『フェアユース』を主張するなどということは、許されるべきではない。フェアユースが守るべき価値のあるものだと考える支援者たちは、そのような濫用を許すべきではないというのは道理にかなっている。そのような状況でなおフェアユースを主張するのであれば、それはフェアユース運動を害することになるだろう。

そこで、1つ提案したい。私たちがフェアユースの尊厳を守りたいのであれば、濫用者はその責任を負わなくてはならない。つまり、映画全編をYouTubeにアップロードし、その後に偽りのフェアユースによる保護を主張するような人びとは、ストライクを宣告され、最終的にはアカウントを剥奪され、サイトから追放されるべきである。

翻って、適法なフェアユースを主張する人びとに偽りの著作権クレームをつける権利者も、同様の基準で対処されるべきである。適法なビデオに誤ったクレームを申し立てた場合、コンテンツIDアカウントにストライクが宣告される。複数回それが繰り返されれば、YouTubeに著作権侵害を申し立てる権限を失う。

もちろん、この提案がエンターテイメント産業に受け入れられることはないだろう。日常的にヘマをやらかしている彼らが、自身の作品を守る権利を失うことになるのだから。非常に残念なことではあるが、このことは重要な論点を浮かび上がらせる。

たとえば、Channel Awesomeが公開しているようなコンテンツの保護は、映画産業が売り出しているコンテンツの保護と同じだけ重要である。ゆえに、われわれわれがDMCAの濫用とフェアユースの濫用に対処するのであれば、シンプルに、例外なく、同じルールを全員に適用すべきである。

一方に対するストライクは、もう一方へのストライクによって釣り合う。それでどうだい?

“Fair Use Needs Protecting & All Abusers Need to Be Punished – TorrentFreak”

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 22, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: qimono

この記事内では少し説明が端折られているが、エレン・サイドラーが憤っているのは、YouTubeに削除要請を送っても、実際にはコンテンツの「ブロック」であって、「削除』ではないという点だという。アップローダーが著作権侵害の申し立てに争う意思を見せ、反論通知をYouTubeに送れば、そのコンテンツは明らかにフェアユースではなくても、ブロックが解除されふたたびオンラインに戻る。この時点で、YouTubeはDMCAで義務づけられているサービスプロバイダの責任を果たしたことになり、後は当事者間で話し合うなり、法廷で争うなりすることになる。しかし、サイドラーら、インディーの映画製作者にとって、訴訟を起こしてコンテンツを削除させるのは金銭的に難しいという。

そういった経験があって、フェアユースを言い訳にして著作権侵害がまかり通っているのだ、というわけだ。

ただ、上記記事にもあるように、フェアユースを擁護している人たちは、そのような悪用までフェアユースの範囲として守られるべきだなどと考えているわけではない。無視するな、と言われても、そのような言い訳はそもそもフェアユースとして通用するわけもなく、単なる著作権侵害であって、それは既に法定損害賠償などが定められている不法行為である。決してDMCAという法律のなかであやふやにされている不正なフェアユース潰しと同列に語れるものではない。

また、DMCA削除の濫用問題についても、フェアユース作品に対する削除要請や、不適切な削除要請が不正であるから、何らかの対処が必要だと主張されているわけで、DMCA削除手続きそのものを無効にしろなどという高すぎる球を放っているわけではない。

そういう意味で、TorrentFreakは、じゃあ同列に扱ったらどういうバランスかわかってる?という記事を書いているわけだ。