欧州は長年の交渉を経て、ようやくネットワーク中立性規則の合意に至った。この法律は一部の国では前進となるが、専門家や活動家たちはBitTorrentやVPNの規制につながる可能性があると警告している。彼らは本日「EUスロウダウン」キャンペーンを立ち上げ、現在の規則の修正を求めて声を上げるよう市民に求めている。
この数年、欧州の政治家たちはどのようにネットワーク中立性を実現するかについて議論してきた。
昨年、その交渉の結果は、テレコム単一市場(TSM)規則のなかにまとめられた。
この規則は一部の加盟国にとっては改善をもたらすが、複数の活動家グループや専門家たちは、真のネットワーク中立性をもたらすものではないと警告する。
現在の規則では、ISPは全体の「伝送品質」を最適化するためであれば、永続的にBitTorrentトラフィックを制限できることになる。これは何もありえないことではない。すでにトレントのトラフィックはネットワークを逼迫している。
この問題に対処するため、活動家グループの連合は、現在のプランを変更するよう求めるキャンペーンを立ち上げている。彼らは欧州市民に、欧州の規制機関BERECが立ち上げるパブリックコメントに声を届けるよう求めている。
「私たちは、規制者に数千のコメントを届ける必要がある。なぜ、クラスにもとづく帯域制限やゼロ・レイティング(翻訳註:特定サービス利用時の通信料金を従量課金の対象外とすること。詳しくはこちら)をISPに禁じる強力なネットワーク中立性ガイドラインが必要としているのかを説明しなくてはならない」と、Fight for the Future(FFTF)のホームズ・ウィルソンは話す。
FFTFは、Save Net Neutralityキャンペーンの旗振り役である。ウィルソンによると、BitTorrentユーザは帯域制限の回避をほぼ不可避にする現在のルールを、特に懸念しなければならないという。
「欧州の新しいネットワーク中立性規則は、BitTorrentの帯域制限を禁止しなければならないが、そうはなっていない。ISPに抜け道を残している」とウィルソンはTorrentFreakに語った。
「ISPは、たとえネットワークが逼迫していなくても『トラフィック管理』のために帯域制限をしたと言い切ることができてしまう。なぜなら、この規則は『差し迫ったネットワークの輻輳を回避する』ために制限することができるとしているためだ」
ファイル共有トラフィック以外にも、提案されている規則は、インターネット・プロバイダがVPN接続を含む暗号化されたトラフィックに干渉することを許している。暗号化されたトラフィックは、ディープ・パケット・インスペクションで分類できないため、ISPはそれらをまとめて優先順位を下げるかもしれない。
理屈の上では、ネットワーク輻輳リスクへの対処という建前があれば、ISPはあらゆるトラフィックを制限できてしまうことになる。
「ISPが怠惰であったり、安易だったり、ケチだったりした場合、BitTorrentやVPN、Bitcoin、Torなど、特定可能なあらゆるトラフィックを制限するかもしれない」とウィルソンはいう。
本日立ち上げられたこの「EUスロウダウン」キャンペーンは、市民がこの問題に声を上げ、現行の規則の修正を求めるよう推奨している。これまでのところ、すでに7000のサイトが参加し、「Slow Loading」アイコンを掲げている。
ウィルソンはもっと多くのサイトが参加してくれることを望んでいる。特にトレントサイトは、ユーザたちに参加をさせたいかもしれない。
「私たちは、トレントコミュニティが危機に瀕していると考えている。そのため、私たちはトレントサイトやトレントクライアントの製作者たちが、今すぐに、あるいはコメントの締め切りである7月18日までに参加してくれることを望んでいる」とウィルソンは話す。
Europe’s ‘Net Neutrality’ Rules Fail to Ban BitTorrent Throttling – TorrentFreak
Publication Date: June 28, 2016
Translation: heatwave_p2p