以下の文章は、Fight for the Futureの「In the wake of Musk’s Twitter takeover, Fight for the Future calls on Congress to pass strong antitrust legislation」という記事を翻訳したものである。

Fight for the Future


昨日、イーロン・マスクのTwitter買収のニュースがインターネットを揺るがした。デジタルライツ団体Fight for the Futureは、エヴァン・グリア(she/her)の以下の声明を発表した。

「表現の自由のある未来を望むなら、地球上で最も裕福な部類の人間が、数億もの人びとが依存するプラットフォームを買収し、自分の好きなようにルールを書き換えられるような未来を良しとはしないだろう。

イーロン・マスクのTwitter買収は、本質的な問題を露呈させた。ごく一握りの企業が、人間の注意を独占し、オンラインで見聞きし、実行できることに強力な権限を有しているという問題である。何十億もの人びとがこの中央集権的で私有化されたコミュニケーション・インフラに依存しているが、その企業が忠誠を尽くすのは株主と超富裕層だけである。

表現の自由が危機に瀕しているという点では、マスク氏は正しい。セックスワーカー、黒人解放(公民権)団体、パレスチナ活動家など周縁化されたグループは、主要ソーシャルメディアプラットフォームで日常的に排除や検閲を受け、しばしば十分な説明もなく、異議申し立ても許されないままにされている。ジャーナリスト、活動家、アーティストらも、嫌がらせや行き当たりばったりのモデレーションにより、プラットフォームから追放されたり、自己検閲に追い込まれている。

Twitterをはじめとする影響力のあるプラットフォームのコンテンツモデレーションは、人権フレームワークを通じて慎重になされるべきである。だがこの数年、主要ソーシャルメディアプラットフォームは、ニュースサイクルやパブリックリレーションに振り回され、ますますモデレーションの方法を変化させてきている。そして今、Twitterの言論統制に変更を加える事のできる人物が登場したのである。このことは表現の自由にとっての恩恵どころか、それを嘲笑するものでしかない。

Twitterがウォール街の顔色を見ていたのは問題だった。だが、一人の億万長者が好き勝手できるようになるというのはさらに問題だ。

イーロン・マスクがTwitterのメガホンのみならず、同社の全データにアクセスできるようになったと考えると、実に恐ろしいことだ。Fight for the Futureは、Twitterがダイレクトメッセージのエンドツーエンド暗号化を実装するよう長らくキャンペーンを展開してきた。だが、それが実現していない現在、マスクは無数のTwitterユーザのプライベート・コミュニケーションにアクセス可能になった。もし政府が特定人物のDMにアクセスさせろとマスクに求めたらどうなるのか? テスラがビジネス展開している国であったなら、その要求は受け入れられやすいのだろうか? 考えるまでもない問題だ。

我々の子どもたち、その子どもたちの子どもたちのために表現の自由を守るためには、インターネットユーザが自身のオンライン体験を実際にコントロールし、自分にあったオンラインプラットフォームやコミュニティを選択できるような世界にしなければならない。理想的には、ソーシャルメディアは電子メールやSMSのように分散化されたオープンソース・プロトコルの上に構築され、それを利用する人々によって透明かつ民主的に管理されなければならない。

そこへ到達するためには、億万長者ではなく、議員の行動が必要だ。まず議会はOpen App Markets Act(OAMA)や、American Innovation and Choice Online Act(AICO)などの反トラスト法改革法案を可決すべきだ。これらの法案によって、テック業界の問題がたちどころに解決する訳では無いが、最大手のテック企業の自社優遇や反競争的行為を取り締まり、インターネットユーザが幅広い選択肢を持てる未来への道を切り開くことはできる。議員や規制当局は、シリコンバレーの支配や独占力の源であるデータ収集やユーザ監視も取り締まり、より害の少ないビジネスモデルにもチャンスを与えるべきだろう。

誰だって「Twitterをやめてやる」と言うだけなら簡単だ。だが、多くのジャーナリスト、アーティスト、活動家は、それまでのつながりを維持したまま移行できる場所ができるまで、(訳注:Twitterをやめることは)本当の意味での選択肢ではないのである。

イーロン・マスクは、オンラインの表現の自由と人権の未来を我々にもたらすことはできない。だが、我々インターネットユーザは、その未来につながる政策やテクノロジーのために戦うことができる。そして、そうしなければならない」。

Fight for the Future – In the wake of Musk’s Twitter takeover, Fight for the Future calls on Congress to pass strong antitrust legislation

Author: Fight for the Fiture
Publication Date: April 26, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Joshua Hoehne