以下の文章は、Article 19の「Twitter: What Elon Musk must do if he really wants to protect free speech」という記事を翻訳したものである。

ARTICLE 19

「鳥は放たれた」――イーロン・マスクは10月27日、Twitterの買収完了を発表した。だが、マスク氏の意図がどうあれ、Twitter社は米国内、そして世界中で同社に適用される多数の法律に拘束されることに変わりはない。ネット上の表現の自由に関するマスク氏の野望はたしかに印象的ではあるが、その中核には国際的な人権基準が置かれねばならない。そうでなければ、Twitter新オーナーの約束が実現することはないだろう。

イーロン・マスク氏は、Twitterの野心的な計画を打ち出すにあたり、オンラインの表現の自由の未来のために以下のことを考慮しなくてはならない。

  • Twitterはすでに事業展開する各国の関連法規を遵守しなくてはならない。この法律のなかに近々変更されるものもある。たとえば、欧州連合でまもなく施行されるデジタル市場法(DMA)とデジタルサービス法(DSA)の義務を遵守しなくてはならない。特にDSAは、透明性、説明責任、デューデリジェンス義務を定めている。マスク氏は、TwitterがEU域内のユーザに引き続き利用してもらい、規制当局からの多額の罰金を回避したいのであれば、これらの義務を遵守するより他に選択肢はない。
  • Twitterは「ビジネスと人権に関する国連指導原則」(国連指導原則)に即した国際人権基準を尊重しなければならない。Twitterそれ自体は国際法の対象ではないが、同社はネット上の表現の自由を実現する中心的存在であり、インターネットのエコシステムにおいて重要な地位を占めていることから、人権に対する責任を負っている。Twitterはまた、コンテンツ・モデレーションの決定に関して企業に求められる透明性と説明責任の運用フレームワークを示したサンタクララ原則へのコミットメントを更新しなくてはならない。
  • Twitterは、表現の自由の権利の重要な要素である匿名性/仮名性を維持すべきである。Twitterが匿名性を維持する限り、たとえ問題視されうる内容であっても、個人が報復をおそれずに自己表現できるようになる。このことは、表現の自由が著しく抑圧されている国ではとりわけ重要である。
  • Twitter社が新オーナーの下、プラットフォームの相互運用性をさらに強化/促進し、コンテンツ・ホスティングとコンテンツ・モデレーションという2つの異なるサービスを切り離そうとする動きをArticle 19は歓迎したい。この切り離し(Unbundling)は、Twitter社が自社プラットフォーム上のコンテンツを管理しつつ、競合他社がコンテンツモデレーションサービスを提供できるようにするだろう。
  • Article 19はマスク氏に対し、2019年後半にTwitterが発表した分散型ソーシャルメディアのスタンダードに関するプロジェクト、Blueskyへの投資を継続することを要請する。Blueskyは「オープンで分散化された公共の対話を可能にする技術の開発」に取り組んでおり、人々がさまざまなプラットフォームでコミュニケーションでき、1つのプラットフォームに制限されない相互運用可能なネットワークをもたらすものである。

表現の自由や民主主義の観点から、ユーザがプラットフォーム上で閲覧、アクセス、共有が許される情報を、イーロン・マスク氏ただ1人が決定・管理することは容認できない。これまでTwitterは、ステークホルダーとのエンゲージメントを確保するためにさまざまな取り組みを行ってきた。例えば、世界中の独立した専門家組織からなるTwitter Trust and Safety Councilは、同プラットフォームのポリシー、製品、プログラムに助言を与えている。したがって、我々はマスク氏に対し、Twitterがプラットフォームにおける表現の自由の保護の改善に向けて、ステークホルダーとの関与を継続・拡大するよう求めたい。

Twitter: What Elon Musk must do if he really wants to protect free speech – ARTICLE 19

Author: ARTICLE 19 (CC BY-NC-SA 2.5)
Publication Date: October 28, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Ravi Sharma