以下の文章は、Open Rights Groupの「TWITTER CRISIS – WHAT WE NEED TO DO」という記事を翻訳したものである。

Twitterの危機はさまざまなかたちで人々を脅かす。貴重なオーディエンス、ネットワーク、コミュニティによるつながり、ビジネス、キャンペーン、支援へのアクセスを失うことになるかもしれない。友人や同僚と連絡が取れなくなるかもしれない。Twitter自体がもはや使い物にならなくなるかもしれない。ただ、Twitterがどうなろうと、我々は受け身でいるべきではない。営利のみを追求する広告型の搾取的モデルから、我々のデジタルライツを取り戻そうとする大きな市民運動が存在しているのだから。

Twitterが終了するとか、Mastodonや連合ソーシャルメディアが勝利するとか、一方が他方より優れているだとか、そういうことを言いたいのではない。我々は、Mastodonへの移行によってさまざまなコミュニティが被る影響を理解するために、社会的弱者、周縁化された人々、マイノリティが口にする懸念に耳を傾けている。Mastodonがコミュニティとデジタルライツにとってより良い場となるにはどうすればよいのか。我々の考えを共有したいと思う。

多くの人々が、連合ソーシャルメディアへの移行がもたらす利点、そして今後もたらされるであろう利点について説明している。重要なポイントは、連合ソーシャルメディア(federated social media)は単一の商業的開発者によってコントロールされていないため、社会と人々が望むように進化できるということだ。ソーシャルメディアが成長すれば、商業アクターと結びつくことは避けられない。だが、「連合(federation)」は、競争と選択によってモデレーションを改善し、ヘイトを減らし、ユーザがどのコンテンツとどのように相互作用するかをもっとコントロールできるようにしてくれる。

また、オープンソースモデルは、より良い行動を促進するソーシャルメディアの設計を可能にするだろう。ただこれは、グループによって異なる見方があるかもしれない。これまでMastodonをデザインしてきたコミュニティは非常に狭い範囲にとどまっている。より広いコミュニティに採用されれば、もっと別のデザインが求められるようになるかもしれない。重要なポイントは、参加者の幅を広げ、連合ソーシャルメディア・プロダクトのデザインに新たな経験と視点を取り込むことである。

一方、商業モデルは営利性という強力なインセンティブに突き動かされている。TwitterやFacebookのモデルの欠点は明白だ。ベンダー・ロックイン(囲い込み)、ネットワーク投資の危険性、コンテンツの順位付けへの影響力の欠如、企業アルゴリズムとそれが生み出す問題である。我々は、よく言えば企業の、悪く言えば億万長者のおもちゃにされているのである。

もちろん、製品ごとに提供される価値・体験は異なる。Mastodonはそれほど「バイラル」でないように設計されているので合わない人もいるだろう。また、オーディエンスも少なく、排除的な使い方をすれば、社会的障壁が強化されるおそれもある。Twitterのようなリーチがないため、そのパワーを再現するのも難しい。一方で、新たなフィルターバブルを生み出すリスクもある。つまり、Twitterの補完にはなりえても、短期的には従来のソーシャルメディアの完全なオルタナティブとはなり得ない。それゆえ、一部の社会的弱者やマイノリティグループは、連合プロダクトをソリューションとみなすことはできず、参加や利用を思いとどまるかもしれない。すでに一部のコミュニティから懸念の声が上がっている。長期的には、さらなる相互運用性の議論も必要になるだろう。プラットフォームの囲い込みは、とりわけ周縁化されたグループに悪影響を及ぼす。TwitterやFacebookの既存のオーディエンスにリーチできなくなってしまうのは、連合ネットワーク側の問題ではなく、プラットフォーム側の(訳注:排除的な)選択の結果である。

個人にできること

個人として何をするかはあなた次第だ。もし、あなたのコミュニティがMastodonなどに参加しているのであれば試してみるのもいい。友達がどこにいるかを調べてみるのもいいだろう。

サポートが不十分なサービスや、極端に小規模なサービス、新規サービスには、運営者に知り合いでもいない限りは参加を控えた方がいい。大規模サーバに参加する場合でも、登録者が急増したタイミングにはパフォーマンスに問題が生じる可能性があることをお忘れなく。

何らかのサービスに参加したなら、(余裕があれば)そのコストを賄うための寄付を考えてほしい。もしすでにMastodonなどの連合サービスを利用しているのであれば、そうした寄付が今困っている人たちを助けることにもなる。

Mastodonベースのサービスで面白いのは、Project Mushroomだ。気候正義にフォーカスし、社会から周縁化されたコミュニティの安全地帯を目指している。テクノロジーにあまり詳しくない人も簡単に移行できるようにサポート体制を整えているという。

組織にできること

他のソーシャルメディアサービスと同じように、(連合ソーシャルメディアへの)サインアップには費用はかからず、それ自体に問題はないだろう。

アカウントは異なるサービスからでも移行できるため、どこでサインアップするかはさして重要ではないが、まずは一般的なサーバを選択するほうが賢明である。

不適切なコンテンツの大半は、管理の不十分なサーバから生まれている。こうしたサーバはユーザが少ないこともあり、簡単にブロックされて「メインストリーム」ネットワークからは排除されやすいことには注意が必要だ。

Mastodonは、より快適なインタラクションを可能にしてくれるが、それでもリスクについてはよく考えておく必要がある。とりわけ、ダイレクトメッセージ(DM)機能をセンシティブなやり取りには使わないようにし、あなたをフォローするユーザにもそうしないようにすべきである。

長期的には、あなた自身のコンテンツや作品を公開するためのサーバやあなたのコミュニティを立ち上げてもいいだろう。いずれも可能だし、メリットもある。法的な問題はプライベート・フォーラムを運営するのと同じように、外部から受け取ったコンテンツへの対応などの作業が発生する。

MastodonやFediverseプラットフォームの立ち上げは、Wordpressウェブサイトと同様に、独自ドメインで「サービスとしてのソフトウェア(SaaS)」プロバイダを利用できるので、技術的障壁を低減することもできる。市場が新たな需要に追いつくまで、多少の時間がかかることもお忘れなく。

Fediverseでは、あなた自身がサーバを立ち上げるのであれ、誰かのサーバに参加するのであれ、コストは発生する。善良なネット市民として貢献することを意識しよう。

政治家がすべきこと

最初の一歩として、政府はこれらのサービスを試してみることだ。何が提供され、どのように機能しているのかを理解しなければならない。少なくとも、ジャーナリストや研究者、キャンペーナーたちはそうしている。

強烈で歪んだアテンション市場のない、権限を与えられたユーザと競争のあるソーシャルメディアは、オンライン安全法案がコンテンツの監視と罰金によって解決しようとしている問題の大半に対応するはずである。

第二に、ソーシャルメディアがこれほど簡単に修正できるのであれば、なぜすでにそのような修正が加えられていないのかを問うべきである。その答えはもちろん、ベンダー・ロックイン(囲い込み)とネットワーク効果(TwitterやFacebookは離脱しようとするユーザがひどい目にあうように設計されている)である。

第三に、政治家は、市場支配力が濫用されたことによって、個人や組織の投資、労働者の権利が脅かされ、政治と社会の言説に脅威を及ぼしていることについて考えなければならない。

これも答えは明白だ。相互運用性、そしてMastodonとFediverseのワーキングモデルである。未だ不完全で万人向けとは言い難いが、それでも、どうあるべきかを示してはいる。携帯電話(番号)から電子メールに至るまで、競争市場を提供する相互運用可能なネットワークが存在しているのは、つまるところ、それが我々にとって重要な問題だからだ。ではなぜ、行儀の悪い独占的なソーシャルメディア企業を免除してやる必要があるのだろうか?

我々、ORGがやりたいこと

我々は、向社会的にデザインされたソーシャルメディアのような、デジタルライツのための情報モデルの利点を人々が理解し、腹落ちするのを助けたいと考えている。我々は、独占的なソーシャルメディアの崩壊を望み、コンテンツ・モデレーションのソリューションを提供するツールの多様性を促進したい。我々はインターネットが善の力となりうることを人々に知ってもらいたい。

また、一部のコミュニティが以降に消極的な理由も理解したい。Mastodonの文化、無知に見えてしまうインタラクション、Twitterに費やす時間が減少することで生じる主体性の喪失などの疑問が理解されなくてはならない。Mastodonが欧州のLGBTQ+や身体・精神障害者にとっての安全な空間となっているからと言って、この安全性と歓迎の雰囲気が、あらゆるマイノリティ、あらゆる文化的期待を持つ人たちも同様に経験できると仮定すべきではない。

デジタルライツ・ムーブメントと人権に携わる人々は、グローバル・ノース以外のコミュニティも含め、この点に特に注意しなければならない。

我々は、ソーシャルメディアの集中や独占は解消できることを知ってもらいたい。Fediverseには競争が存在している。競争が阻害されないように構築されているからである。TwitterもFediverseサービスの1つとなることができる。そうなれば、人々はオーディエンスや長年の投資を犠牲にすることなく、マスク氏のプランや劣悪なモデレーションから逃れることができる。

我々はこうした目的を掲げ、個人・組織・政治家と協力していくつもりだ。我々と共にこの目的を達成したいなら、ぜひ連絡をいただきたい。

ORGのMastodonチュートリアル【YouTube】

Twitter Crisis – What we need to do | Open Rights Group

Author: Jim Killock / Open Rights Group (CC BY-SA 3.0)
Publication Date: November 17, 2022
Translation: heatwave_p2p
Header image: Akshar Dave