以下の文章は、Center for Democracy & Technologyの「Women of Color Political Candidates in the US Endure Most Severe Online Abuse, Mis- and Disinformation」という記事を翻訳したものである。翻訳にあたり、記事中の“online abuse”および“abuse”はいずれも「誹謗中傷」と訳出した。
誤情報・偽情報は、選挙をはじめ社会全体の大きな問題となっている。CDTをはじめとする市民団体は、米国における有権者への抑圧、英語以外の言語、異なる選挙制度の文脈でこの問題を検証してきた。我々が以前から指摘し、他からも指摘されてきたように、誤情報や偽情報はしばしば、人種やジェンダーといった社会における既存の差別の境界線に沿って生み出されている。
実際、誤情報や偽情報は、有色人種、有色人種の女性、有色人種の女性の政治家などの特定の個人・コミュニティを標的にした誹謗中傷やハラスメントと結びついている。こうしたグループは、誤報や偽情報に関する政策的言説の中で見落とされがちであり、女性政治家や有色人種の女性政治家に関する研究もあるが、依然として研究が足りていない。
この問題を解決すべく、我々は有色人種の女性立候補者に対する誤情報・偽情報の規模と影響を検証する研究プロジェクトを立ち上げた。我々はまず、有色人種の女性政治家候補はほかの候補者に比べ、誹謗中傷にさらされる可能性が高いという仮説を検証することにした。2020年の選挙期間中に議会に立候補した全候補者の代表サンプルに、反応あるいは言及したツイートをランダムに抽出し、内容分析を用いて、誤情報や偽情報、多種多様な誹謗中傷を含むさまざまなカテゴリをコード化した。
主な調査結果は以下の通り。
- 有色人種の女性候補者は、ほかの候補者に比べ、誤情報や偽情報の標的・対象となる可能性が2倍も高かった。
- 性差別的誹謗中傷(白人女性との比較)、人種差別的誹謗中傷(有色人種男性との比較)、暴力的誹謗中傷(白人候補者の4倍、有色人種男性の2倍)など、特定の形態の誹謗中傷の標的になる可能性が最も高かった。
- 有色人種の女性候補者は、誤情報や偽情報と誹謗中傷が結びついた投稿の標的・対象となる傾向が最も強かった。
これらの結果から、誤情報・偽情報・誹謗中傷が、有色人種の女性が選出された政治家になることを阻む新たな障壁を作り出されていることが考えられる。議会・立法機関が彼らを十分に代表していないことを考えれば、とりわけ問題である。
この可能性をさらに探るために、我々は有色人種の女性政治家候補の誤情報や偽情報、誹謗中傷の影響を検証することにした。2020年に立候補した有色人種の女性政治家候補とその選挙スタッフに半構造化面接を実施。インタビュー対象者は、誹謗中傷や誤報・偽情報が彼らや選挙チームに与えたトラウマや影響について語った。
彼らは、誹謗中傷や誤報・偽情報の激しさが、彼らに向けられた誹謗中傷を内面化させる――つまり、有色人種の女性として直面する抑圧を受け入れ、政治から手を引かせる――ものであると感じている。また、彼らが直面した攻撃は、移民かどうか、親の有無、年齢など、彼らが抱えるさまざまなアイデンティティにも向けられていた。こうした攻撃にも関わらず、数名は当選して政治家にとどまり、自分たちとそのチームがどのように対処してきたかを語ってくれた。
我々の報告書には、有色人種の女性政治家候補への誤報・偽情報・誹謗中傷の問題にソーシャルメディア企業がどのように対処すべきか(たとえばポリシーを明確化して執行する)や、独立した研究者とのデータ共有による透明性の向上などを目的とした提言も盛り込まれている。また、有色人種の女性候補者が語ったことに沿って、政党が適切なトレーニングやリソースを提供するなど、彼らを支援するためにもっとできることがあるとも提言している。最後に、この領域の研究がさらに必要とされていることも指摘している。
最後の指摘に関連して、我々はこのプロジェクトで使用した内容分析コードブックを公開した。研究者が関連研究を実施する際に役立つことを期待している。とりわけ、内容分析の規模が大きかったため(10人のコーダーが数ヶ月かけて10万以上のツイートを手作業でコーディングした)、そのプロセスを管理するためのオンランプラットフォームを開発した。このプラットフォームのコードもGitHubで公開した。この重要な領域での研究がさらに促進されることを願っている。
Women of Color Political Candidates in the US Endure Most Severe Online Abuse, Mis- and Disinformation – Center for Democracy and Technology
Author: Dhanaraj Thakur / Center for Democracy & Technology (CC BY 4.0)
Publication Date: October 27, 2022
Translation: heatwave_p2p