以下の文章は、European Digital Rights (EDRi) の「The Digital Markets Act promises to free people from digital walled gardens」という記事を翻訳したものである。

EDRi

3月24日夜、欧州連合はデジタル市場法(DMA)の三者間妥協案を承認し、オンラインにおける我々の権利保護を改善するために大きな一歩を踏み出した。 この決定は、ビッグテック・プラットフォームが我々の権利と社会における情報流通に絶大な影響力を及ぼしている中央集権的環境に変更を迫ることを約束する。Facebook、Google、Amazon、Appleなどのテック企業は、デジタル市場における自由で公正な競争を保証する厳格なルールに従わなければならなくなる。

激しい議論、そして市民社会からの数ヶ月に渡るアドボカシー、キャンペーンを経て、欧州議会、EU理事会議長国フランス、欧州委員会の交渉担当者は、DMAの最終案に合意した。事実上、この法律は デジタル市場のみならず、人びとのオンライン体験におけるビッグテックの支配の抑制に貢献するだろう。

人権の観点からは、人びとの権利の保護を保証し、オープンで高生活競争量のあるデジタル空間を実現するための大きな勝利であると言える。

「DMAは、ビッグテックの極めて有害な敢行に終止符を打ち、利用者とオンライン・プラットフォームとの間の力の不均衡を是正するものです。この合意が適切に実施されれば、私たちが作り上げたいデジタル時代のオンライン体験と社会のあり方を、個人がより自由に選択できるようになります」 – ディエゴ・ナランホ(EDRi 政策担当責任者)

市民社会は、一般データ保護規則(GDPR)における既存のデータ保護規則に立脚するDMAを成功裏に推し進めた。その結果、Gmail、YouTube、Facebook、WhatsAppなどの複数のゲートキーパー・サービスなどのユーザが、本人の明確な同意なしにデータを使用されないよう保護されることになった。

フランス国務大臣でDMA交渉責任者のセドリック・オによると、デジタルサービス法(DSA)に監視的広告へのセンシティブな個人データの使用禁止を盛り込むことで三者間の合意があったという。今回のDMAの合意により、監視的広告業界の最悪のデータ利用行為が一部制限されることになるが、EDRiは引き続き、欧州における監視型オンライン広告の段階的全面禁止を提唱していく。

EDRiは、ゲートキーパーのインスタントメッセージングサービスへの相互運用性要件が盛り込まれたことを歓迎する。新たなルールでは、メッセージングサービスを提供するゲートキーパーは、エンドツーエンド暗号化によるプライバシー保護を維持しつつ、ユーザが同様のサービスを利用する人びとと接続し、通信できるようにしなければならなくなる。この相互運用性要件により、ゲートキーパーのサービスを利用する友人や家族との安全な接続を失うことなく、そのサービスから移行できるようになる。また、広告主やデータブローカーの利益のためでなく、ユーザの利益のために機能する相互運用可能なチャットアプリという全く新しいエコシステムへの道が開かれることになる。

だが、DMAの最終案が、ゲートキーパーに音声通話とグループチャットの相互運用性を導入するまでの移行期間を不必要なまでに長期に設定していることは残念である。多くのユーザはこの2つの機能をチャットアプリの標準機能と考えているため、その2つの相互運用性が当面は導入されないというのであれば、義務化がもたらす恩恵は著しく損ねられることになるだろう。

また、DMAは将来的に、ゲートキーパーに対する追加的義務、とりわけFacebookなどのソーシャルネットワークに対する相互運用性義務を追加する権限を欧州委員会に与える。我々は、欧州委員会がこの権限の行使を早急に検討することを望む。

現在、理事会と欧州議会が最終案に合意し、ビッグテックの企業利益や収益よりも、人びとの権利こそ優先されるべきであるということが示された。

「DMAは、今日のゲートキーパーであるテクノロジー企業の絶大な市場支配力を制限する大きな一歩です。欧州委員会が個人データの再利用を禁止する新たな義務と、監視広告におけるセンシティブデータの使用禁止を尊重し、いずれも適切に執行することを確認しなければなりません。それによって初めて、日々の生活をデジタルサービスに頼っている人びとが変化を感じられるようになるでしょう」 – ヤン・ペンフレート(EDRi シニアポリシーアドバイザー)

The Digital Markets Act promises to free people from digital walled gardens – European Digital Rights (EDRi)

Author: EDRi (CC BY-SA 4.0)
Publication Date: March 25, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Katerina Pavlyuchkova / Huzaifa abedeen (CC BY-SA 4.0)