以下の文章は、Fight for the Futureの「Civil Rights Groups Reinforce Legislators’ Demand for Google to Stop Endangering Abortion Seekers」という記事を翻訳したものである。この記事はロー対ウェイド判決が覆される以前の2022年6月2日に公開されたものである。
ロー判決撤回後の世界では、Googleによる位置情報の収集・保存は、中絶を求める人々の逮捕・訴追・拘禁への加担を意味することになるだろう。同社は、我々の位置情報の不必要な収集と保存をいますぐ停止しなければならない。
50の人権団体は、Googleに対し、ユーザの位置情報の不必要な収集と保存を停止し、その情報が中絶を求める人々の特定に使用されることを防ぐよう求めている。この公開書簡は、先週40名を超える議員らがGoogleに突きつけた要求を補完するものである。
先日リークされた最高裁の意見書草案は、安全かつ適法な中絶の憲法上の権利が、今後数ヶ月のうちに剥奪される可能性が高いことを示唆した。ロー対ウェイド判決がもたらした保護が失われれば、いわゆる「トリガー法」を制定する多数の州が直ちに中絶を犯罪化し、さらには議会は50州すべてで中絶を犯罪化すべく動き出すだろう。
からだの自己決定権に対する憲法上の保護がなければ、Googleによるデータ共有は、中絶医療を求めたり提供する人々の犯罪化、訴追、拘禁への加担を意味することになる。Googleは数億ものスマートフォンユーザの正確な位置情報を収集・保存し、ジオフェンス令状を通じて政府機関と共有している。たとえば、州検察官が発行したジオフェンス令状により、Googleは一定期間にわたって中絶クリニックを訪問した人の身元を開示するようになるだろう。このような政府による監視が可能になるのは、人権よりも大規模なデータ収集を優先するGoogleのビジネスモデルがあってこそだ。
署名団体は書簡の中で、Googleはユーザのあらゆる行動を収集し、記録する義務を負っているわけではないと指摘し、競合たるAppleはユーザの位置情報を保存していないことも付け加えている。
このような政府による許しがたい監視から米国民の位置情報を守る唯一の方法は、そもそもGoogleが位置情報を保存しないことである。
署名団体のステートメント
「Googleによる位置情報収集は常に問題視されてきました。この過剰なプライバシー侵害と、我が国の法律によって市民の身体が政府に管理されかねない未来とが組み合わさり、無数の人々が危険にさらされることになります。Googleは中絶の犯罪化に加担することになる前に、この不必要なデータ収集網の停止に向けて迅速な行動を起こさなくてはなりません」とFight for the Futureキャンペーンディレクターのケイトリン・シーリー・ジョージは言う。
「Googleの監視資本主義ビジネスモデルは、長きにわたって私たちのプライバシー権を損ねてきたターゲティング広告のために、できるだけ多くの個人データを収集することにインセンティブが置かれています。Googleを始めとする企業が収集する大量の個人データが、リプロダクティブ・ライツを行使しようとする人たちを攻撃するための武器として利用されかねないという状況に恐怖を覚えています」とアムネスティ・インターナショナルUSAのテクノロジーと人権担当ディレクターのマイケル・クラインマンは述べている。
Access Nowの米国政策アナリストのウィルマリー・エスコトは、「Googleはデータの最小化に真剣に取り組む必要があります」と言う。「米国でプライバシー権が攻撃にさらされるなか、企業が真に女性を保護するのであれば、不必要なデータ収集を停止すべきです。Googleが私たちの位置情報を保持しているからこそ、警察と共有できてしまうのです。黒人や褐色人種、身体障害者、先住民、低所得の女性は、不当に被害を受けやすいことを忘れてはなりません。中絶手術を受けた人の情報――たとえばどこに行ったか、インターネットで何を検索したかなど――は、プライベートなものであり、保護されなくてはなりません」
「Googleは、同社サービスの利用にとって犯罪者にされてしまうことからユーザを保護しなければなりません。位置情報の保存は、中絶を求める人たちを逮捕、投獄、迫害のリスクに晒します。今まさに、政府や当局者が我々を裏切っているときに、Googleはその間に入り、人権に対する干渉から人びとを守る手助けができるのです。Googleに対して、私たちのプライバシーを保護するよう求めます。私たちの身体は、あなた方のマーケティングの道具ではありません」とSWOP Behind Bars, Inc.(訳注:セックスワーカーの支援団体)のアレックス・アンドリューは述べている。
書簡および署名者一覧
スンダー・ピチャイ
最高経営責任者
Google LLC
ピチャイ氏へ
私たちは、消費者の位置情報の不必要な収集と保存を停止し、その情報が中絶手術を受けた人の特定に使われることを防ぐよう、あなたに強く要請します。
先日の最高裁判所の意見書草案によると、安全で合法的な中絶を受ける憲法上の権利、つまりアメリカ人が半世紀にわたって享受してきた基本的権利が覆される可能性が高いことが示唆されています。この判決が確定すれば、トリガー法を有する多くの州が直ちに中絶を犯罪化し、議会は50州全てで中絶を犯罪化する連邦法を制定しようとするでしょう。
中絶が違法化されかねない世界では、携帯電話の位置情報を広く収集・保存するというGoogleの現在の慣行は、生殖医療を求める人々を取り締まろうとする過激派の道具となることが予想されます。なぜなら、Googleは何億人ものスマートフォンユーザの過去の位置情報を保存し、政府機関と日常的に共有しているからです。
Googleはオンライン広告のターゲティングなど、さまざまなビジネスのために消費者の位置情報を収集・保存していますが、このデータを利用しているのはGoogleだけではありません。法執行機関は日常的に、Googleに消費者の位置情報を提出させる裁判所命令を得ています。これには、ある時間に特定の場所付近にいたすべての人のデータを要求するドラグネット「ジオフェンス」命令も含まれます。実際、Googleが公開したデータによると、御社が毎年受ける法執行命令の4分の1は、こうしたドラグネット・ジオフェンス命令であり、2020年には11,554件のジオフェンス令状を受け取っています。
Googleは、消費者のあらゆる移動を収集し、その記録を保存することを義務づけられているわけではありません。Appleは、スマートフォン企業が消費者の位置に関する侵入的な追跡データベースを保持する必要がないことを示しています。Googleの意図的な選択は、プライバシーとセキュリティを贅沢品をする新たなデジタルデバイドを生み出しているのです。
最高裁判所と議会によって中絶が違法化されれば、検察官は必須のリプロダクティブ・ヘルスケアを受ける人々を合法的に追い詰め、起訴し、刑務所に送るでしょう。このような政府による許しがたい監視から消費者の位置情報を守る唯一の方法は、そもそも位置情報を保存しないことなのです。
したがって、今後、消費者の位置情報を不必要に収集したり、個々の消費者の非集約位置情報を特定可能であるか匿名化されているかに関わらず保存することのないように、データ収集および保存の方法を速やかに改善することをGoogleに強く要求します。Googleは、御社のオンライン広告のためのデジタルインフラを、中絶を求める人々を攻撃する武器として使わせることを容認すべきではありません。
この重要な問題に、関心を寄せていただきありがとうございます。
7amleh – The Arab Center for the Advancement of Social Media
Academy of Perinatal Harm Reduction
Access Now
Action Center on Race and the Economy
Advocacy for Principled Action in Government
Advocating Opportunity
AIDS Alabama
Amnesty International USA
CARES
Center for Digital Democracy
Consumer Action
Defending Rights & Dissent
Electronic Privacy Information Center (EPIC)
Elephant Circle
Fight for the Future
Free Press
GLAAD
Global Voices
Hacking//Hustling
Individual Privacy, RJ Attorney
Indivisible Bainbridge Island
Jacobs Institute of Women’s Health
Liberate! Don’t Incarcerate
Massachusetts Gay and Lesbian Political Caucus
Media Alliance
MediaJustice
Movement for Family Power
NARAL Pro-Choice America
National Birth Equity Collaborative
New America’s Open Technology Institute
North Kitsap Indivisible
Oakland Privacy
Pro-Choice Connecticut
Pro-Choice North Carolina
Pro-Choice Ohio
Pro-Choice Oregon
Pro-Choice Washington
Reframe Health and Justice
Reproductive Equity Now
Restore The Fourth
RootsAction Education Fund
S.T.O.P. – The Surveillance Technology Oversight Project
SumOfUs
SWOP Behind Bars, Inc
The Sex Workers Project of the Urban Justice Center
Transgender Law Center
WA People’s Privacy Network
Whatcom Peace & Justice Center
Woodhull Freedom Foundation
Author: Fight for the Fiture
Publication Date: June 2, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Sharon McCutcheon