以下の文章は、電子フロンティア財団の「EFF to File Amicus Brief in First U.S. Case Challenging Dragnet Keyword Warrant」という記事を翻訳したものである。
中絶が違法化された州で中絶クリニックの住所を検索した人物を特定するために、警察がGoogleに問い合わせをしてもよいものだろうか? あるいは、ミフェプリストン(訳注:経口中絶薬)という医薬品を検索した人物を特定するためなら? もしくは、ジェンダー・アファーマティブな医療を児童虐待と同一に扱う州で、そうした医療提供者を検索した人物は? さらには、連邦政府が依然として違法とみなすなか、麻を合法化した州でディスペンサリーを検索した人物ならどうだろうか?
答えは「ノー」だ。EFFは本日、コロラド州で提出する予定の法廷助言書の中で、このような捜査がプライバシーや表現の自由の憲法上の保護とまったく相容れない理由を説明した。
このPeople v. Seymour事件は、おそらくキーワード令状の違憲性を問う米国初のケースである。この事件は、数名が死亡した悲惨な住宅放火事件をめぐるものだ。容疑者を特定できなかった警察は、キーワード令状を用いて、放火事件から2週間以内にその家の住所を検索したと思われる人物の個人情報をGoogleに提出するよう要請した。
キーワード令状は、ジオフェンス令状と同様に、プロバイダが保存するユーザデータすべて(本件では10億人以上のGoogleユーザの検索クエリ)を捜査対象とする捜査網を敷くものだ。今回のように、警察のキーワード捜索令状では、容疑者が特定されていることはほとんどない。それどころか、犯人が犯罪に関連する何かを検索したのではないかという警察官の直感だけを頼りにした令状である。
現代のインターネットでは検索エンジンに検索キーワードを入力せずにブラウジングすることは事実上不可能である。キーワード令状はまさにその事実を利用しようとしているのである。一説によると、現在11億5000万以上のウェブサイト、数百億のウェブページにが存在すると言われている。Google検索は毎秒10万件もの検索クエリを処理している。多くのユーザは、友人や家族、医師、聖職者らには聞きづらいセンシティブな疑問や不愉快な質問に対する答えを日常的に検索し、検索エンジンに依存しているのである。何ヶ月も、何年もかけて、ありふれたことから極めてプライベートなことまで、検索キーワードにはユーザの生活そのものが反映される。その結果、ユーザの最もプライベートで個人的な考え、意見、関係性が山のように記録されていく。
GoogleはユーザがGoogleアカウントにログインしていなくても、すべての検索を記録しているようだ。Googleは検索クエリをIPアドレスとISP情報にリンクさせ、キーワード令状に応じてその情報を警察に開示する。つまり、一般市民が自分のインターネット検索をGoogleから、ひいては政府から隠し通すことは極めて困難であることがわかる。
あらゆるキーワード令状は、犯罪に関連すると見られるキーワードをたまたま検索していた無実の人びとを巻き込むおそれがある。たとえば、People v. Seymour事件で争われている令状では、犯罪が行われた「トラッキー(Truckee)」ストリートの住所を検索した人物すべてを対象とするものだった。だが、「トラッキー」ストリートは、同じコロラド州の複数の市や町にもあるし、アリゾナ州、カリフォルニア州、アイダホ州、ネバダ州にも存在する。また、キーワード令状は特定の場所や抗議活動の主催者を検索したすべての人物の情報を要求することで、政治的発言や関係性に基づいて人びとを標的にする事もできてしまう。ウィスコンシン州ケノーシャやミネアポリスで発生した警察官による殺害事件への政治的抗議デモの参加者を特定しようと、警察は同様のドラグネット令状を使用している。
我々の法廷助言書では、保護された言論を情報を得る権利を対象としたキーワード令状は過剰であり、米国およびコロラド州の憲法に違反することを裁判所に伝えている。検索エンジンは、インターネット上で情報を見つけるために不可欠なツールであり、それを利用する権利、そして匿名で利用する権利も、自由な社会にとって不可欠である。もしプロバイダにユーザの検索クエリを開示させることが許されてしまえば、ユーザは政府から監視されかねない情報を検索しようとしなくなるだろう。
米最高裁とコロラド州最高裁は、言論を標的とした警察の捜査が「中間審査(訳注:3段階の違憲性審査における2段階目)」で審査すべきだと考えるほどに重大なものであるとの認識している。さらに、コロラド州最高裁は2002年のTattered Cover v. Thornton事件で、捜査が表現の自由、結社の自由、情報を得る権利を脅かし、「警察による令状の執行を完全に排除すべき」状況があることを指摘している。本件はまさにそれに該当するだろう。
言論を標的にしたドラグネット令状は民主主義社会にはふさわしくない。我々は裁判所と立法府に対し、このような令状は違憲であり、非合法化すべきであると訴え続けていく。
EFFによるPeople v. Seymour事件の法廷助言書はこちら
EFF to File Amicus Brief in First U.S. Case Challenging Dragnet Keyword Warrant | Electronic Frontier Foundation
Author: Jennifer Lynch and Andrew Crocker / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: Jube 30, 2022
Translation: heatwave_p2p
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