TorrentFreak

3P(threesome)騒動の渦中にいるセレブ・カップルは、彼らの氏名公表の禁止命令がくだされるか否か、その判断を月曜まで待たされている。その一方で、アンチ・パイラシー会社 Web Sheriffは、そのニュース記事のリンク削除をGoogleに求めているが、そのすべてが拒否されている。

先月、「芸能界」に関わる人物が、彼の不倫セックスに関するゴシップを、英国タブロイド紙Sunに掲載されるのを阻止しようとしていることがあきらかになった。

イニシャルPJS(実際のイニシャルではない)が裁判所に提出した書面によると、この「よく知られた」人物は、4年以上前に、別のカップルと「3Pセックス」をしたと言われている。彼と結婚し、パートナーであるイニシャルYMAも業界人であるという。

第三者のカップル(ABとCD)は今年1月、Sun日曜版に接触し、PJSとの3Pセックスの詳細について語った。同紙はその後PJSの弁護士に連絡を取ったが、その後法廷闘争に発展した。

1月18日、PJSとYMAの弁護士は、Sun日曜版への記事の掲載を回避すべく裁判を起こした。高等裁判所はその申し立てを棄却したが、控訴審(PDF)が行われている間、公表の仮差し止め命令を下した。

その後行われた控訴審では、件の芸能人は、彼のセックスがあくまでもプライベートなものと認識していたとして、Sun日曜版が記事を公表することを禁じる判決がくだされた。しかし、その判決に不満を覚える人も少なからずいる。

Sun日曜版は可能であれば記事を公表するつもりでいるようだが、その一方で、この芸能人カップルの氏名は、スコットランドや、ヨーロッパ、米国、カナダで、ソーシャル・メディアやニュース記事で、数えきれないほど取り上げられている。

さて、それに対して何ができるのか? BBCによると、PJSの弁護士Desmond Browne QCは、この記事をTwitterやGoogleから削除するために「大変な努力」を払っているようだ。少なくとも、後者については確認することができた。

インターネット上の著作権侵害コンテンツの削除ビジネスといえば、ファイル共有界隈では英国の著作権削除会社 Web Sheriffがよく知られている。しかし、同社は事業拡張で多数のサービスを追加しており、そのなかに「プライバシー保護――評判マネジメント」事業がある。

こうした活動はめったに世間の目に触れることはない。しかし、Web Sheriffは最近、センシティブなコンテンツを検索インデックスから削除するようGoogleに申し立てているようだ。今回の件も、Googleの透明性レポートに掲載されている

web-sheriff-take

上記の画像からもわかるように、Web Sheriffは4月4日と4月11日に、174のURLをターゲットに削除を申し立てている。Web Sheriffは合計7回にわたってGoogleに通知を送付しているが、興味深いことに、Googleはそのほとんどすべてを削除していない。

Googleが削除しない理由は不明だが、海外の企業であるGoogleにとってリンクを削除する義務はないと考えているという可能性はある。また、Googleへの申し立てが著作権を理由にして行われ、削除の要件を満たさなかったということも考えられる。

web-sheriff-take2

いずれにしても、複数のニュース媒体において、当該の記事へのリンクのほとんどが「content not found」になっている。つまり、Googleはほとんど削除していない。このことは別の論点を浮かび上がら焦る。

Googleはしばしば、その検索エンジンでアクセスを可能にしている著作権侵害の(今回の件で言えばセンシティブな)コンテンツを抑止するために、できることがたくさんあるはずだと言われている。しかし、大元のコンテンツを削除するほうがよほど効果的である。実際、Web Sheriffはそうしているし、全体的にはうまくやれているようである。

ただ、ここで疑問となるのは、そうすることに意味があるのかどうか、だ。

ニュース媒体は、月曜にこのカップルの氏名公表の可否に関する判断がくだされることを待っているが、彼らの氏名はすでにインターネット中を駆け巡っている。もともとは数日で忘れられるようなゴシップであったのに、それをもみ消そうとしたことで、国際的な関心事にまで発展してしまった。

その一方で、禁止命令を無視した人びとには、圧力が掛けられている。この2人の氏名をインターネット上で公表したあるブロガーは、この芸能人の弁護団に脅されているという。しかし、彼は一向に心配する素振りを見せない。

「これは強力なストライサンド効果ですよ。実際、こうしてヨーロッパから取材を受けているわけですから」と彼は言う。

「(PJSの弁護団には)太陽(the sun)の登らないところへ隠しておけばいいんじゃないですか、と伝えました。建物のない英国、印刷機のない英国、サーバーのない英国に」

Jackson控訴審裁判官が、本件は公共の関心事に関わるという判断を示したため、すべての重要な審理は月曜、公開法廷で行われることになっている。

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: April 17, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Unknown

まさにストライサンド効果の典型といったところだろうか。この不貞ゴシップについてはさして興味はわかないのだけれども、それを封じ込めようとする試みが好ましいとは思えないので、その意味では気になる話題となってしまった。実際氏名公表の差止命令が出されたことで、一気にこのニュースが盛り上がってしまっている。

氏名公表の差止命令については、件の芸能人の行為を結婚生活を破綻させるものではないとパートナー自身が認めていること、2人の子どもへの配慮などは考慮されたものとのことだが、英国の司法権が及ばない外国のニュースメディアやブログ、ソーシャルメディアなどで芸能人の氏名が広く伝えられている。そのため、The Sun側は氏名公表を禁じた差止命令を解除せよ、と法廷に求めていると。その判断は本日月曜、そろそろとのこと。

その辺りについてはどうしたものかというところだが、海賊版コンテンツ削除会社が、だいぶおかしな経路で今回の件の削除要請をしているのが気になるところではある。もちろん、こうした名誉に関わることについて削除を求めるということ自体はやぶさかではないが、手続きとして正しいとは言い難い。著作権侵害の削除手続きを悪用しているともいえる。

DMCA削除についても、誤認、濫用などにより、不当に削除されているケースも多々ある。このような行為はたとえGoogleが要請を無視をしたからといって、許されて良いわけではないだろう。