以下の文章は英国のデジタル権利団体「Open Rights Group」の”We need copyright reform that does not threaten free expression“という記事を翻訳したものである。

物議を醸す著作権指令の行方を左右する投票が、9月12日に迫っている。この半年で3度目となる投票では、自動化されたゲートキーパーにあらゆるコンテンツの承認/拒否を決定させる第13条――あるいはさらに酷いもの――に新時代の扉を開かせるかどうかを欧州議員が投票する。

経済というレンズを通すと、この指令をめぐる議論は権利者とテクノロジー企業との対立と見られてきた。しかし、一般市民、インターネットのパイオニア、人権団体、クリエイターらの声が高まるに連れ、それまで無視されてきた人間的側面を含めた議論が巻き起こっていった。

Open Rights Groupは、インターネットにおける表現の自由という基本的権利を損ねる第13条(あるいは提案されている同様の修正案)に反対する。

今夏、欧州議員がこの指令の拙速な進行を否決したことで(訳註:日本語記事)、表現の自由の守護者たちは業界ロビイストに対する勝利の雄叫びを上げた。そして、その勢いはまだ続いている。英国の欧州議員の多くが態度を決めあぐねていることもあり、英国市民は、この指令の行方に大きく影響を及ぼすことができる。英国の議員による投票は、他のEU加盟国とは異なり、会派の影響はそれほど強くない。

今回、新たな修正案が追加されてはいるが、第13条と同様の原則を含むものが再び投票にかけられることになる。修正案には以下のものが含まれている。

プラットフォームの責任強化

インタネットプラットフォームがユーザのコンテンツに直接責任を負うことになれば、彼らは事実上、著作権の執行者として振る舞うことになる。これを回避することはほぼ不可能であり、プラットフォームは自動フィルターを用いてすべてのユーザコンテンツを監視しなくてはならない。しかし、企業は表現の自由を取り締まるには不適任である。プラットフォームは、罰則を避けようと、ユーザコンテンツを過剰にブロックすることになるだろう。

アップロードフィルタの暗黙的または明示的な導入

自動フィルターが文脈を理解する能力に欠けていることはこれまで何度も示されてきた。しかし、研究や批評、創作的作品、パロディなどを許す著作権の例外を判断するためには、文脈をきちんと理解できなくてはならない。アルゴリズムが間違った判断をすれば、著作権侵害コンテンツと共に、無辜の表現がブロックされ続けることになる。

全体監視の導入

あらゆるユーザコンテンツの全体監視は、自由でオープンなインターネットを後退させる。また、第13条で規定されているテキスト、オーディオ、ビデオ、イメージ、ソフトウェアといった幅広いフォーマットを網羅的に監視することは技術的に実現不可能である。

言いたい放題の第13条の唱導者、アクセル・ヴォス欧州議員は、「我々は検閲マシンを導入したいのではない。欧州議会の誰一人としてそんなことは望んでいない」と言う。

第13条における提案は、インターネットを自由かつクリエイティブな共有の場から、コンピュータが警告なしにあらゆるものを削除できる場へと変える。これは著作権執行のためとはいえ、あまりにも大きすぎる代償だ。基本的人権とデジタル権を犠牲にすることのない著作権リフォームが必要とされている。

英国市民の方は、9月12日水曜の投票までに、欧州議員にコンタクトしてほしい。以下に用意したツールを使えば、簡単にアクセスできる。

https://action.openrightsgroup.org/robocopyright-returns

英国外にお住まいの方であれば、以下のウェブサイトにアクセスしてほしい。

https://saveyourinternet.eu

Open Rights Group – We need copyright reform that does not threaten free expression

Author: Mike Morel (Open Rights Group) / CC BY-SA
Publication Date: September 04, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: François Grimonprez