以下の文章は、Walled Cultureの「A database of public domain works could reduce upload filter overblocking; it’s absurd we need one」という記事を翻訳したものである。

Walled Culture

EU著作権指令第17条によって導入を求められているアップロードフィルタは、そのフィルタが過剰ブロッキングしてしまう可能性が高いという問題を抱えています。つまり、フィルタのアルゴリズムに欠陥があるため、完全に合法的な素材のアップロードが遮断されてしまうのです。ブロッキングされる合法的な素材のなかには、間違いなくパブリックドメイン作品も含まれることでしょう。

パブリックドメインはしばしば、著作権保護期間が切れた後の著作物の状態、あるいはクリエイター自身が著作権を行使しないことを明示的に選択した状態だと定義されます。この「著作権がない」という定義を、アップロードフィルタが完全に把握することはできません。昨年、ポール・ケラーとフェリックス・レダは、この問題を深掘りする論文を記し、次のような提案をしています。

我々は、(オンラインコンテンツ共有サービス・プロバイダが)オープンライセンス作品とパブリックドメイン作品の検証済みの情報を含む、パブリックアクセス可能な共有リポジトリの構築と維持に投資するよう提案したい。

こうしたデータベースでアップロードフィルターによる迅速なチェックを実施すれば、パブリックドメイン資料のブロッキングを防ぐのに役立つと思います。海賊党のパトリック・ブレイヤー欧州議会議員は、このアイデアを探究するパイロットプロジェクトの支援を欧州連合に提案しています。そしてEU議会はこのプロジェクトへの支援を承認しました

現実の市場の失敗および、パブリックドメイン作品の過剰ブロッキングのリスクを確認し、プラットフォームを含む技術的ニーズを決定し、ステークホルダーの賛同を得るための実行可能性調査。またこのプロジェクトでは、プラットフォーム、コンテンツプロバイダ、GLAMセクター機関(ギャラリー、図書館、博物館、美術館)やパブリックドメインおよびフリーライセンスコンテンツを扱う非営利組織が使用・参照・補強できるデータベースのプロトタイプを開発する。こうした自由で再利用可能な作品のパブリック・リポジトリは、これら作品の社会的価値の解放に役立ち、それによって文化へのアクセスやプロモーション、文化遺産への真のアクセスを実現する。上記のプロジェクトは、この分野における我々の知識を発展させ、このプロトタイプを完全に実用的なデータベースに発展させる必要性と機会を確認するためのパイロット版として位置づけられるものである。

アップロードフィルタの弊害を軽減するための実務的な作業が進んでいるのは良いニュースなのですが、二重の意味で残念でもあります。第一に、第17条の支持者たちが指令が可決されてもこの種の自動的監視は不要だとの(間違った)主張を再三繰り返してきたにも関わらず、アップロードフィルターというアイデアの有害性が全く問題になっていません。第二に、パブリックドメインは本来著作物のあるべき状態であるにも関わらず、あたかも奇妙で例外的な存在として扱われ、その逆になることはないのですから。

A database of public domain works could reduce upload filter overblocking; it’s absurd we need one – Walled Culture

Author: Glyn Moody / Walled Culture (CC BY 4.0)
Publication Date: December 6, 2022
Translation: heatwave_p2p