以下の文章は、12月6日 、The Mozilla Blogに掲載された「Goodbye, EdgeHTML」というプレスリリースの翻訳である。

Microsoftは、独自の共有インターネットプラットフォームを正式に捨て去ることにしたようだ。MicrosoftがChromiumを採用したことで、Googleにオンラインの支配権をさらに譲り渡すことになった――。

メロドラマ風に聞こえるかもしれないが、そうではない。「ブラウザエンジン」――GoogleのChromiumとMozillaのGecko Quantum――はソフトウェアの「基盤」であり、私たち1人1人がインターネットでできることの大部分を決定している。消費者が閲覧できるコンテンツ、コンテンツを閲覧する際のセキュリティ、私たちがウェブサイトやサービスに許可する権限といったコア機能を決定するのである。Microsoftの決断は、私たち1人1人に何ができるかを独断で決定するGoogleの権限をさらに強化する。

Microsoftの決定は、ビジネスだけを考えれば妥当なのかもしれない。もはやGoogleは私たちのインターネット生活のインフラを完全に手中に収めつつあり、それに抗って競争したところで利益は望めない。かつてインターネットが私たちに提供してくれた自由と選択肢を諦めたところで、Microsoftの株主たちの利益が損なわれることはないのだろう。

Googleは才気あふれる従業員と、あふれるほどの資産を独占的に抱えた強力な競争相手だ。検索、広告、スマートフォン、データキャプチャなど多岐にわたるGoogleの支配力は、その競合にとって極めてバランスを欠いた環境を作り出している。

社会、市民、そして個々人のエンパワーメントの観点から、基盤たるオンラインインフラのコントロールを単一の企業に委ねてしまうことは極めて危険である。まさにそれこそがMozillaの存在理由だ。私たちがGoogleとの競争を続けているのは、ビジネスチャンスを掴みたいからではない。私たちがGoogleとの競争を続けているのは、インターネットやオンライン生活の健全性が競争と選択によって成り立つからだ。そうした健全な環境は、消費者がより良いものを求め、行動を起こせるからこそ醸成されるのだ。

Microsoftの決断は、Firefoxの未来をさらに困難なものにするのだろうか? そうかもしれない。Googleがより強力になれば、多くの面でリスクがもたらされるだろう。その答えの大部分は、サービスやウェブサイトを作り出すウェブ開発者や企業の行動にかかっている。Chromiumのような単一の製品に十分な市場シェアがあれば、ウェブ開発者や企業はサービスやサイトをChromium以外に対応させる必要はないと考えやすくなる。このことは、Firefoxがリリースされる以前、Microsoftブラウザが市場を独占していた2000年代前半にも起こった。それが再び繰り返されるかもしれない。

もしあなたが、いまオンラインの生活に忍び寄る何かを不安に思うのであれば、もう1度、Firefoxに目を向けてほしい。18ヶ月前に比べて劇的に改善され、スピードとパフォーマンスはけっして引けを取らないはずだ。1週間、デフォルトブラウザとしてFirefoxを試してから判断してほしい。もちろん、Firefoxをもっと強力にしたからといって、すべての問題を解決できるわけではない。ブラウザは、方程式の一部でしかない。だが、Firefoxが優れた製品だと思ったなら、あなたはFirefoxをもっと強力に使いこなせるはずだ。あなたがFirefoxを使うことで、ウェブ開発者や企業はきっと、Chrome以外にも目を向けてくれるだろう。そうなってくれれば、FirefoxとMozillaが選択、セキュリティ、競争の面でインターネットをよりよいものにしていく後押しになる。

Goodbye, EdgeHTML – The Mozilla Blog

Author: Chris Beard / The Mozilla Blog / CC BY-SA 3.0
Publication Date: December 06, 2018
Translation: heatwave_p2p

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