以下の文章は、電子フロンティア財団の「The EU’s New Message-Scanning Regulation Must Be Stopped」という記事を翻訳したものである。
欧州連合の執行機関が、万人のプライバシーとセキュリティを危険に晒す提案を進めている。先月、この提案が欧州委員会から発表されたとき、我々はとんでもない考えだと非難した。我々は本日、欧州および世界中の70を超える組織とともに、この提案された法律がいかに危険なものであるかを訴える。
欧州委員会の提案は、児童に対する犯罪と戦うという名目で、数多くのテクノロジー企業にメッセージのスキャン、分析を義務づけている。電子メール、テキスト、ソーシャルメディアのメッセージ、DM、そのすべてが、平文でのアクセスとスキャンの対象になる。我々のデバイスにクライアントサイドスキャンがインストールされれば、エンドツーエンド暗号化は無効化されてしまうだろう
我々のオープンレター(邦訳)は、このEUのスキャン義務化がいかにしてすべての人を危険に晒すかを説明している。弁護士、ジャーナリスト、人権活動家、政治的反体制派、抑圧された少数民族など、安全な通信を最も必要とする人々が、最も悪影響を受けることになる。また、虐待を受け、危険に晒されている子どもたちが助けを求めるためには、信頼できる大人と安全に通信できなければならない。
こうした弱い立場にある人々が、EU域内で常に法執行機関のスキャンにさらされることになるのだ。EUの国境を越えれば、状況はひどくなりうる。ひとたびこのような特別なアクセスシステムが構築されれば、さらに権威主義的な国々が、我々のメッセージを盗み見るために同様のアクセス要求をテクノロジー企業に突きつけることは間違いない。
本日、我々は欧州委員会に対し、この規制案を撤回するよう公式に要請する。撤回されなければ、この規制を欧州議会で阻止するために激しく闘うつもりだ。オープンレターに記したように、EUはプライバシーとデータ保護の世界標準を設定し、「人権の道しるべ」となるべく戦ってきた。「だが、提案されたCSA規制によって、欧州委員会は権威主義、支配、オンラインの自由の破壊への逆コースを突き進んでいる」のである。
我々が自由でプライベートに会話する権利は、民主主義社会への参加に不可欠なものだ。EFFはこの権利のために戦い続け、どの国の議員に対しても、オンラインの世界には例外はないことを強く訴えていきたい。
The EU’s New Message-Scanning Regulation Must Be Stopped | Electronic Frontier Foundation
Author: Joe Mullin / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: June 8, 2022
Translation: heatwave_p2p
Header image: ROBIN WORRALL