以下の文章は、エリザベス・ウォーレン米上院議員のプレスリリース「Warren, Wyden, Murray, Whitehouse, Sanders Introduce Legislation to Ban Data Brokers from Selling Americans’ Location and Health Data」を翻訳したものである。


過激主義的な最高裁が「ロー対ウェイド」撤回の構えを見せるなか、位置情報と健康データの保護はこれまで以上に重要さを増している。

データプライバシーの専門家:健康・位置情報データ保護法は「米国プライバシー法における最大の保護の欠落の1つを埋めるだろう」

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ワシントンD.C. – エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党・マサチューセッツ州選出)は、で0他ブローカーが米国民の最もセンシティブなデータである健康データと位置情報データを販売することを禁止する法案「健康および位置情報データ保護法」を提出した。この法案は、上院財務委員会委員長のロン・ワイデン議員(民主党・オレゴン州選出)、上院保険・教育・労働・年金委員会院長のパティ・マレー議員(民主党・ワシントン州選出)、シェルドン・ホワイトハウス議員(民主党・カリフォルニア州選出)、上院予算委員会委員長のバーニー・サンダース議員(無所属・バーモント州選出)が共同提案している。

「データブローカーは数百万人もの位置情報から利益を上げており、最もプライベートな情報を販売することで、世界中の米国民に深刻なリスクをもたらしている」とウォーレン議員は述べている。「過激主義的な最高裁がロー対ウェイド判決を覆す構えを見せ、各州が必須医療を犯罪化しようとする現在、消費者のセンシティブなデータの保護は、議会にとってこれまで以上に重要な課題となっている。健康・位置情報データ保護法は、ブローカーが米国民の位置情報と健康データを販売することを禁止し、巨大なデータブローカーを抑制し、この2000億ドル規模の産業に長年の懸案であったルールを設定するものである」。

「中絶が違法となれば、生殖医療をオンラインで調べること、生理カレンダーアプリをアップデートすること、病院にスマートフォンを携帯することはいずれも、全米の女性を追跡し起訴するために利用される恐れがある。これは子宮監視(uterus surveillance)にほかならない。議会は、女性の身体を支配しようとする極右政治家の濫用から米国民のプライバシーを守らなくてはならない。ウォーレン上院議員とともに健康・位置情報データ保護法を提出できることを誇りに思う」とワイデン上院議員は述べている。

「共和党の過激派議員らは、中絶などの必須の医療サービスを犯罪化するために24時間体制で活動を続けている。したがって、患者個人の健康データおよび位置情報は保護されねばならない」とマレー上院議員は述べている。「国民の最もセンシティブなデータを売って利益を上げることは、間違いであるだけでなく、危険であり、必要な治療を受ける米国民の安全にリスクをもたらす。とりわけ共和党が我々の生殖に関するすべての権利を攻撃していることを鑑み、国民のセンシティブな健康データを保護するために、同僚とともに健康・位置情報データ保護法を提出できることを誇りに思う。

「米国民は、自らの極めてセンシティブなデータが、同意なく入札者に売りさばかれることはないと確信できなければならない。とりわけ、中絶医療やその他重要な医療を禁止・犯罪化しようとする昨今の動きを考慮すると、個人の健康データや位置情報データの取扱いに関しては賢明な規制が必要である」とホワイトハウス上院議員は述べている。「ウォーレン上院議員とともに、この重要な法案を提出できることを嬉しく思います」。

データブローカーは、無数の米国民の膨大な個人データを、しばしば本人の同意や通告なしに収集・販売し、巨万の富を築いている。連邦法ではほとんど規制されていないデータブローカーの不愉快な商慣習は、世界中の米国民の現実の危険をもたらしている。データブローカーが収集したデータは、憲法修正第4条(訳注:不合理な捜索押収の禁止)を回避しLGBTQ+の人々を排除し個人をストーキング・嫌がらせし中絶クリニック訪問する人々の安全を脅かすために使用されている。

健康・位置情報データ保護法は、以下のルールを設定する。

  • データブローカーによる位置情報および健康データの販売・移転を禁止し、連邦取引委員会(FTC)に180日以内にこの法律を実施するための規則を交付するよう求める。ただし、HIPAAに準拠する活動、修正第一条の保護対象、正当な許可を得た開示については例外とする。
  • FTC、州検事総長、被害者に法の規定を執行する訴訟を起こす権限を付与することにより、法の規定の確実な執行を保証する
  • 連邦取引委員会に今後10年、本法の執行を含む業務遂行のため10億ドルの資金を提供する

本法案は、デューク大学、バージニア大学、ワシントン大学セントルイス校などの、幅広いデータ/セクシュアル・プライバシーの専門家から支持されている。

「健康データと位置情報データは極めてセンシティブであり、、消費者のプロファイリングや搾取、令状なしの市民へのスパイ行為、ストーカー行為や暴力の実行など、危害を加えるために利用されるおそれがある。企業が事実上何らの制限を受けることなく、米国民の健康データと位置情報データをオープンな市場で自由に売買するのを許してはならない。この危険な行為を強力な法規制によって抑制することは、すべての米国民、とりわけ女性、LGBTQIA+コミュニティ、有色人種、貧困層、その他の脆弱なコミュニティのプライバシーを守るために不可欠である」とデューク大学サンフォード公共政策大学院のデータ仲介プロジェクトフェロー兼リサーチリーダー、ジャスティン・シャーマンは述べる

「本法案は、我々の身近な生活のプライバシーに、重要な保護をもたらすものである。我々の健康や位置情報のデータは、販売・共有されるべきものではなく、最新の注意を払って扱われるべきものである。こうした情報は、我々の親密な関係、健康状態、通院など、我々がプライバシーを期待し、そのように扱われるべき個人の生活の詳細を描き出すものである。この法案には、健康データと位置情報データの共有に対する強力かつ明確なルールと、それを裏づける民事的制裁および差止命令等の救済が含まれている」とジェファーソン・スカラー財団シェンク特別教授、バージニア大学法学部カデル・チャップマン教授、サイバー公民権イニシアチブ副会長のダニエル・シトロンは述べている

「ウォーレン上院議員の健康/位置情報データ保護法案を支持できることを喜ばしく思う」とワシントン大学セントルイス校のコーク特別教授・コーデル研究所所長のニール・リチャーズは述べている。「あまりに長い間、データブローカーの闇のネットワークは、自らの利益のために我々のセンシティブなデータを無規制かつ非倫理的な取引を続けてきた。健康/位置情報データのプライバシーが、背信や操作、強制を恐れることなく生活をおくるために重要性を増す中、本法案は社会のすべての人に重要な保護を提供する。HLDPAは、人類と、そのデータを売買して利益を得る企業とのパワーバランスを回復するための重要な一歩となるだろう」。

「データブローカーは、センシティブなこじ情報を共有することで有害な監視を助長し、社会の最も弱い立場の人々を危険にさらしている。健康および位置情報データ保護法は、こうした侵入的な商習慣への規制をようやく開始し、この悪名高き無秩序な業界から人々を保護することを可能にするだろう」とジョージア大学法学部助教授のトーマス・カドリは述べている

「最高裁がDobbs 事件(訳注:中絶禁止法の合憲性を求めた裁判)の判決を下したあとには、位置情報が生殖医療を求める人々を追跡するために使用されるおそれがある。そのようなとりわけセンシティブな記事であることを考えれば、これはデジタル・プライバシーを保護する重要な法案である」とカリフォルニア大学デービス校法科大学教授のエリザベス・E・ジョーは述べている

「健康データや位置情報データは、非常に無防備な状態にある。人々の生活の最も私的な側面を露わにしてしまうと同時に、幅広い追跡、ハラスメント、不当な差別、経済的損失、身体的被害の危険にも晒すものである。だが、データブローカーは、危害や悪用を承知で、このデータを自由に販売・共有している」とノースイースタン大学法学・コンピュータサイエンス教授のウッドロウ・ハーツォグは述べている。「2022年健康および位置情報データ保護法は、我々の脆弱な部分を利用して取引するデータブローカーに実効性のある制限を課す。これは切実に必要とされてきた介入である。本法案は、効果が期待できない『通知と選択』アプローチを避け、極めてセンシティブなデータの販売と共有を明確に禁止している。本法案は、米国プライバシー法における最大の保護の欠落の1つを埋めるだろう」。

中絶と基本的な医療を受ける権利が最高裁と共和党の過激派によって全米で攻撃を受ける中、ウォーレン議員は中絶を受ける権利を守り、すべての米国民のセンシティブなデータを保護するために活動してきた。

  • 2022年6月7日、ウォーレン上院議員とマレー上院議員は、上院議員23名とともにバイデン大統領に書簡を送り、中絶の権利を含む米国民の基本的なリプロダクティブ・ライツを守るための国家計画を策定するよう連邦政府に指示する大統領令を直ちに発令するよう要請した。
  • 2022年5月18日、ウォーレン上院議員、ビル・カシディー上院議員(共和党・イリノイ州選出)、マルコ・ルビオ上院議員(共和党・フロリダ州選出)は、データブローカーが中国、ロシア、イラン、北朝鮮などの敵対国に軍人のリストを販売することを阻止し、米国軍人のデータを保護する「2022年軍人データ保護法」を提出した。
  • 2022年5月17日、ウォーレン上院議員は13名の上院議員とともに、データブローカー2者に対し、家族計画連盟などの中絶クリニックの訪問者の携帯電話ベースの位置情報の収集・販売に関する回答を求める書簡を送付した
  • 2022年5月10日、ウォーレン上院議員は米国上院の議場で、憲法における中絶の権利の保障、女性の健康保護法の可決、共和党過激派への対抗の必要性について演説した。
  • 2022年5月9日、ウォーレン上院議員は、マリ・クレール誌に、連邦法に中絶の権利を明記することの重要性についての論説を寄稿した。
  • 2022年5月3日、ロー対ウェイド判決を覆す最高裁意見書の草案がリークされた際、ウォーレン上院議員は最高裁の階段で、活動家、抗議者、国民に対し、中絶の権利を保護する必要性について2度にわたって演説した
Warren, Wyden, Murray, Whitehouse, Sanders Introduce Legislation to Ban Data Brokers from Selling Americans’ Location and Health Data | U.S. Senator Elizabeth Warren of Massachusetts

Author: Elizabeth Warren
Publication Date: June 15, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Claudio Schwarz


エリザベス・ウォーレン議員個人を支援・応援するつもりはないが、本法案は現代の米国において極めて緊急かつ重要な法案であることを鑑み、翻訳した。

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