以下の文章は、TorrentFreakの「New VPN Crackdown Underway in Russia, Government Confirms」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

ロシア当局は、VPNサービスへのアクセスを妨害する新たな取り締まりを実施していることを認めた。電気通信規制当局のロスコムナゾールによると、ロシア国内法に違反するVPNサービスへのアクセスを制限する「措置」が講じられているという。この違反には、政府がこれまでに違法とみなしたコンテンツへのアクセスを提供することも含まれている。

ロシアが国民のネット上での安全性を確保するための導入した法律が、来月で10周年を迎える。

社会的に有害なウェブサイトへの市民のアクセスを防ぐため、政府はこの「過激派サイトブロック法」に基づいて違反サイトのブラックリストを作成している。

この法律のもとでは、過激派、テロリスト、児童性虐待資料(CSAM)、違法薬物の宣伝などがネット上で拡散することは、もはや許されない。ISPは指摘を受けてから数時間以内に違反サイトをブロッキングしなければならず、それによってロシア社会全体が利益を得る。

滑りやすい坂のその後

政府は違法なコンテンツのみをブロッキングすること、政府が作成するブラックリストは独立した市民監視団体によって監督される余地があることを市民に約束した。だが実際には、通信規制当局のロスコムナゾールは自らを監督者に任命した。また、たしかに政府は違法コンテンツだけをブロッキングするという約束は守ったものの、多数のコンテンツを違法化することでブロッキングの対象を広げていった。

この10年、ロシアは数多くの法律を可決し、海賊版ストリーミングサイトやトレントポータル、TwitterやFacebook、Instagram、さらにはクレムリンが定義する事実報道から逸脱した「違法」ニュースサイトなどに網を拡大し、ブロッキングの権限を拡大させてきた。

その背景には、非正規メディアのブロッキング回避に慣れてきた市民が、VPNやTorを駆使して、ロシア国外の無検閲の世界を見渡せるようになったことがある。ロシア政府はこれに対し、ロシア国内のVPNサーバに厳しい規則を設けるとともに、「VPN法」によって違法な情報へのアクセスを許すインターネットツールを違法化することで対抗した。

VPNを標的とした情報戦争

ロシアはVPN禁止法に基づいて、Googleから数十万件のVPN関連リンクを削除してきたが(訳注:邦訳記事)、ウクライナ侵攻以来、そのペースを上げている。Torもこのブロッキング劇場の渦中にあり、現在は法廷闘争に突入している(訳注:邦訳記事)。

ここ数日、ロシアのVPNユーザは、ロシアにサーバを持たないNordVPNなどの大手VPNプロバイダにアクセスしようとすると、新たな問題が発生していると報告している。また、スイスに拠点を置くProton VPN、ピアツーピア検閲回避ツールのLantern、Windscribe、VPN作成ツールのOutlineなどの関連サービスにアクセスする際にも問題が生じているようだ。

Protonは「目下調査中だが、この問題は我々側の変更に起因するものではない」と説明している。「現地のISPや当局がVPN接続を妨害している可能性があり、その場合、この問題の解決はできないかもしれない。一部のサーバは引き続き機能する可能性がある。我々は、ブロッキングを回避するための取り組みを続けている」。

取り締まりを認めるロシア

通信監視当局のロスコムナゾールは、国内メディアへの声明の中で、ウェブサイトのブロッキング回避ツールは違法であり、アクセス制限措置がとられていることを改めて強調した。

「『通信に関する法律』では、違法コンテンツのブロッキングを回避する手段は脅威として認識されている。公共通信ネットワークの監視・コントロールセンターは、ロシアの法律に違反するロシア国内のVPNサービスの運用を制限する措置を講じている」と当局は述べている。

少なくとも歴史的には、通常VPNプロバイダには(訳注:何からの措置が講じられる前に)、法令を遵守するか処罰されるかを迫る通知が送付されてきたが、この数週間に今回対象となったプロバイダに通知があった形跡はない。直接的に影響したかは不明だが、Protonは以前、政府による検閲を回避するためにロシアのユーザに同社のサービスの無料提供を開始していた。

2022年3月15日、下院情報政策委員会のアレクサンドル・ヒンシュタイン委員長は、現在ロシア国内で少なくとも20のVPNサービスがブロッキングされており、プロバイダが法律に従わない場合、ロスコムナゾールはさらに多くのVPNサービスをブロッキングする意向であることを明らかにした。

プライバシーを重視するVPNプロバイダにとって、ロシアでの法令遵守は極めて困難な状況が続いている。ロシアでVPNを適法に運営するためには、連邦国家情報システムへの接続を義務づけられ、違法とみなされたサイトやURLへのアクセスを遮断しなければならない。多くのVPNプロバイダはそれを受け入れずロシアからの撤退を選択しているが、それを選択できなければ、カスペルスキーのように(訳注:邦訳記事)、政府によるブロッキングへの加担を余儀なくされるのである。

New VPN Crackdown Underway in Russia, Government Confirms * TorrentFreak

Author: Andy Maxwell / TorrentFreak (CC BY-NC 3.0)
Publication Date: June 3, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Ivan Bandura