以下の文章は、Fight for the Futureの「Statement: Corporate publishing lobby continues to issue false claims and smear authors opposing lawsuit that would reduce the rights of libraries nationwide」という記事を翻訳したものである。
以下は、非営利デジタルライツ団体 Fight for the Futureのリア・ホランド(キャンペーン&コミュニケーション・ディレクター、they/she)による声明である。
今朝、300人を超える小説家、詩人、学者、作家、出版アクティビストらの連帯が、図書館のデジタルライツ問題に関して出版業界に3つの要求を突きつけるオープンレターを公開した。
予想通り、出版業界の企業ロビイストたちは見下した態度で論点をすり替え、著者らの要求をかわそうとしている。こうした本質的な問題から注意を反らせる戦術はロビイストたちの常套手段だ。
全米作家協会(Authors Guild)の声明では、この書簡に署名した「複数の作家」が「そそのかされた」と感じていると、根拠を示すことなく主張されている。この主張は誤りである。全米作家協会に対し、その主張を証拠を示すか、あるいは撤回するよう要求する。
作家を代表すると称する業界ロビー団体が、ニール・ゲイマン、チャック・ウェンディグ、ナオミ・クライン、ロバート・マクナミー、バラトンドサーストン、ローレンス・レッシグ、コリー・ドクトロウ、アナリー・ニューイツ、ダグラス・ラシュコフら署名作家のアクティビズムを否定し、何らかの“誤解”によって、図書館を守るための簡潔かつ明確な要求を突きつけた書簡に署名したのだと主張しているのである。全くもって容認できない。企業出版ロビイストは、我々の書簡で述べられた見解に反対する自由はあっても、我々の組織や署名作家らについて虚偽の主張は容認できるものではない。
書簡公表直前の昨晩、全米作家協会の声明で取り上げられた作家の1人から、署名撤回の申し出があった。我々は当人の希望を尊重し、それに従った。だが、彼が署名に同意していなかったとか、その内容について我々が「誤解」させたという主張は、全くもって虚偽である。それを示す記録もある。ロビイストたちの主張は、簡単に否定できる程度の虚偽であり、求められれば我々のコミュニケーションのスクリーンショットをジャーナリストに提供してもいい。
出版ロビーが受け入れなければならない真実は、業界が求める著作権マキシマリズムシステムに内在する検閲と監視がクリエイティブワークへの公正な対価を保証するために必要なのだという出版社側のナラティブに、すべての著者とクリエイティブワーカーが同意しているわけではない、ということである。
作家のエリザベス・ケイト・スウィタジは、署名の際に「最近出版された私の本がインターネット・アーカイブに登録されていることを喜ばしく思う」と述べている。またダン・ギルモアは「大手出版社は、莫大な利益を得体がために、できることなら公立図書館を非合法化――少なくとも、図書館が従来どおり本を所蔵したり貸し出したりすることを不可能に――したいのだ。インターネット・アーカイブに対するキャンペーンは、その目標に向けた第一歩なのである」と語っている。サーシャ・コスタンザ=チョックは、出版社によるインターネット・アーカイブの提訴を「全く恥ずべきこと」だと述べ、ローラ・ギブスは「インターネット・アーカイブは私が最も利用する図書館で、そこに私の本があることを誇りに思う」と語る。
さらに、全米作家協会は会員宛のメールで、この書簡に複数の「バージョン」が存在し、Fight for the Futureが作家を騙してあるバージョンに署名させ、その後に不誠実にもたくさんの変更を加えたと主要しているようだ。全くのデタラメである。この書簡のバージョンはこれまで1つしか存在していない。
次に、こうした団体のなかに、禁書(book bans)との戦いへの取り組みを表明している団体があることには感謝している。だが図書館からデジタル書籍を所蔵・保存・貸出する権利を奪ってしまえば、作品へのアクセスにどのような結果をもたらされるのかをよく考えていただきたい。デジタルブックは若者や周縁化されてきたコミュニティがどこにいようともアクセスを提供する道筋になりうることを、全米の図書館はますます認識するようになっている。だが、出版社が許可した作品だけしか図書館が扱えないというのでは、将来を見据えているとは言えず、今日の社会的要請に耐えるものですらない。署名作家の中には、長く阻害されてきた作家たちがいる。彼らの作品にとっては、とりわけ切実な問題なのだ。
ロビイストがなんと言おうと、大手出版社は図書館にデジタルブックの購入・所蔵・保存を認める選択肢を提供してはいない。出版社がインターネット・アーカイブとの裁判に勝利を収めれば、すべての図書館が蔵書のデジタルスキャンを自ら作成する権利、つまりデジタルブックを所蔵する唯一の選択肢を失うことになる。こうしたデジタル化・貸出は、インターネット・アーカイブだけでなく、ボストン公共図書館などの機関でも採用されている。これがロビー団体は主張するような数百万冊もの書籍を「タダでばらまく」ようなものではなく、所蔵する紙の書籍の部数に応じて1対1の割合で貸し出し、デジタルブックであろうと紙の本と同様にアクセスや返却期限を管理している。
もちろん、出版ロビーは、公共図書館を訴えたり、「電子書籍海賊」と呼ぶことの外聞の悪さを認識している。だからこそ、あまり知られていないインターネット・アーカイブを狙ったのだ。だが、この訴訟の結果はすべての図書館に影響をおよぼすのである。
我々の生活がデジタル化されていくに従い、ますますデジタルブックがデフォルトの読書体験になっていくだろう。だがこのままでは、利益を最優先にする大手出版社の株主に書籍の所蔵とアクセスを独占的に支配される未来は回避できない。多くの人が図書館や司書の方を信頼しているのは当然のことだ。
インターネット・アーカイブ自体をどう思うかは別として(Fight for the Futureは素晴らしい、必要不可欠な機関だと考えている)、図書館の権利が後退すれば、作家の未来や多様な声へのアクセスにますます暗い影を落とすことになる。我々はそうした未来を断固として拒否し、デジタル時代にあっても図書館の伝統的な役割を維持すべく、今後も精力的に取り組んでいくつもりだ。
最後に、Fight for the Futureが独立したデジタルライツ団体ではないという、全く見当外れの、笑止千万な主張に反論する。我々は、ユーザ、クリエイター、とりわけ米国で伝統的に阻害されてきたコミュニティの権利を最大化する闘いを10年にわたって続けてきた。我々は、アーティストとアクティビストからなり、クイア女性が主導する、小さくも力強い組織である。そのことは、これまでの我々の取り組みと態度が物語っている。
Authors for Librariesのオープンレターは、我々のデジタルジャスティスを希求する闘いの1つに過ぎない。とはいえ、我々は出版領域への貢献を非常に誇りに思っているし、すべての作家にhttps://www.fightforthefuture.org/authors-for-librariesへの署名を求めたい。
全米作家協会などの団体と共闘できる問題は数多くある。反トラスト法、禁書、Amazonによる作家の搾取、大手出版社が最高益を上げる一方で十分な対価を得られない作家や出版関係者など、アーティストの権利を取り巻く重要な問題について、いつの日か連帯し、共に取り組みたいと願っている。その日まで、我々は大手出版社が文学界のデジタルな未来にもたらす脅威を認識する作家団体と共闘していくつもりである。
企業出版ロビーはすべての作家が出版社の肩を持ってくれる世界を望んでいるのだろうが、デジタル時代の書籍の所蔵と保存に関して、図書館が担うべき役割を縮小しようとする業界の考えを、多数の作家が否定していることを直視しなければならない。
Fight for the Future – Statement: Corporate publishing lobby continues to issue false claims and smear authors opposing lawsuit that would reduce the rights of libraries nationwide
Author: Lia Holland (they/she) / Fight for the Fiture
Publication Date: September 29, 2022
Translation: heatwave_p2p
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Alan Levine (CC0 1.0)