TorrentFreak

本日、欧州委員会は欧州の著作権法の改正案を公表した。この提案には、オンライン・サービスに著作権侵害フィルターの実装の義務化が含まれている。欧州委員会は著作権者の立場を強化することを意図しているが、反対者は有害無益であると警告している。

本日、欧州委員長のジャン=クロード・ユンケルは、欧州の著作権法を現代化するための複数のプランを公表した。

この提案(pdf)は、数年間にわたって議論されてきたデジタル単一市場改革の一環として提出された。

当初は、NetFlix等のストリーミングポータルへのジオ・ブロッキングが禁止されることが示唆されていたが、そのアイデアは最終テキストには盛り込まれなかった。そのかわり、著作権者の立場を改善する広範な改革が導入された。

多くの人々から懸念されている提案の1つが、オンライン・サービスに海賊版コンテンツの取り締まりを義務づけている第13条だ。これが意味するのは、多数のユーザ・アップロード・コンテンツを取り扱うオンライン・サービスは、著作権侵害ファイルをブロックするための電子指紋技術やフィルタリング技術を実装しなければならなくなる、ということである。

「欧州委員会の提案は、そのようなサービス・プロバイダに、ユーザがアップロードする作品の保護を確実にする妥当かつ適切な措置を実施することを義務づけるものである」と委員会は説明する。

たとえば、YouTubeのコンテンツIDシステムなどがそれに該当するのだろう。しかし、コンテンツID自体も多くの問題をはらんでいる

欧州委員会は、この要件は小規模のコンテンツ・プラットフォームには適用されないと強調しているが、「小規模」がどの程度であるのかの具体的な定義はされていない。また、何が「適切」で「効果的」なコンテンツ認識システムなのかは定義されておらず、かなりの不確実性を残している。

第13条
article13

デジタル権利団体のEDRiは、この提案は多くの欧州企業を危機に晒し、表現・言論の自由を脅かすものだと主張する。

「本日公開されたこのテキストは、欧州のインターネットにアップロードされたすべてのコンテンツをフィルタリングする可能性を含んでいます。この提案は、ユーザの権利や、欧州のホスティング企業の法的安全性を破壊するものです」

しかし欧州委員会は、この変更は権利者がユーザ・アップロード・コンテンツへのアクセスを提供するサービスとのライセンシング交渉を行う際に、著作権者の立場を強化するために必要なものだと記している。

こうした文言は、まさに最近、複数の音楽産業団体が声高に要求していたものと一致する。

たとえば、BPIは数カ月前、YouTubeのようなプラットフォームが、「ロイヤルティ・ヘイブン」化を目的としたセーフハーバー保護の濫用を防ぐための立法を求めている。今回の提案は、彼らの望みを部分的に叶えるものといえるだろう

TorrentFreakは、海賊党のジュリア・レダ欧州議会議員にコメントを求めた。彼女は海賊版フィルタリングの義務化に強く反対している。

「このアプローチは、数えきれないほどの問題を抱えています。まず第一に、GoogleはコンテンツIDを開発するために6000万ドルの投資をしています。すべてのスタートアップやコミュニティ・プロジェクトに同様の投資を求めるのは馬鹿げています」とレダ議員はいう。

ユーザがアップロードしたコンテンツを扱う多くのサービスにとって、コンテンツ認識システムに数百万ドルを投資することは不可能であり、そうなれば彼らは他社、たとえばYouTubeなどとライセンス契約をかわさなければならない、とレダ議員は言う。その結果、既に支配的なメジャープレイヤーの立場が更に強化されるだけに終わる。

さらに彼女は、自動化されたシステムがしばしば誤りを引き起こし、著作権の細かなニュアンスを扱うには不十分なものとして実装されることになる、と指摘する。

「著作物の一部をビデオに使用したとしても、その新しい作品が必ずしも著作権侵害になるわけではありません」とレダ議員はいう。

「たとえばパロディや引用など、EU各国で違いはありますが、著作権には多数の例外があります。そうした例外は、著作権で保護された作品を部分的に再使用することを認めているのです。しかし、アルゴリズムにそれを検出することはできません。その結果、適法なリミックスやマッシュアップまでもが削除されてしまい、表現の自由が抑圧されることになります」

数日前、我々の完全に合法的なビデオが不当に著作権侵害のフラグをたてられたことを考えれば、杞憂とは言えないだろう。

YouTubeなどのビデオプラットフォーム以外のプラットフォームも問題を抱えることになる。レダ議員は、多くのプラットフォームが自動化された認識システムには適さないという。たとえば、クリエイティブ・コモンズでライセンスされたコンテンツを使用するWikipediaや、ユーザがアップロードしたアートワークをホストするDeviantArt、楽譜をホストするMuseScoreなどだ。

「これらのフォーマットにおいて、著作権侵害を確実に検出できるテクノロジーは存在していません。欧州委員会はインターネット企業に不可能なことを求めているのです。その結果、インターネット上の協働コミュニティや欧州のスタートアップが危険に晒されることになります」

インターネットの後退を推し進めるプランはフィルタリングの義務化だけではない。

議論を巻き起こしそうなもう1つの提案は、出版者の権利の新設である。これはオンラインの新聞社が、彼らのテキストを利用する外部サービスとのライセンシング交渉を可能にするものである。たとえば、記事をクリッピングしているGoogleニュースなどが該当する。

複数の若手欧州議員を含む反対者たちは、この提案を「リンク税」だとして強く反発している。

#Savethelink

「このプランは私たちの知るインターネットを破壊することになるでしょう。今日、人々がニュースをインターネットで共有する方法――短いスニペット(断片)や記事の画像を含むリンクの投稿――は、事前にライセンス契約を結んでいなければ違法となってしまいます」とマリテ・シャーケ欧州議会議員は言う。

その影響の大きさを考えると、この提案が法制化されるのを阻止するために、「Save the Link」キャンペーンのような複数の反対運動が展開されることだろう。
EU Commission Proposes Mandatory Piracy Filters For Online Services – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: September 14, 2016
Translation: heatwave_p2p