米国などの著作権法では、ユーザが行った著作権侵害に関して、場を提供するプラットフォームの責任を免責するセーフハーバー条項を定めている。権利者から削除の要請があった場合には迅速に削除するなどの一定の条件を満たす必要はあるが、このセーフハーバーのお陰でユーザからの投稿を許すプラットフォーム――YouTubeやTwitter、Facebookなどの運営が可能になっている。しかし、こうしたセーフハーバーは世界中のすべての国で定められているわけではない。

オーストラリアが同国の著作権セーフハーバー条項の拡大プランを打ち切ったことで、ユーザ生成コンテンツを扱うGoogleやFacebookなどの企業に衝撃が走った。法改正によってアーティストが公正な対価を受け取ることができなくなると主張する著作権者の圧力が、この方向転換をもたらしたようだ。

オーストラリアでは、いわゆるセーフハーバー条項は国内のインターネット・サービス・プロバイダにのみ適用されている。これは、豪米自由貿易協定(AUSFTA)の草案に誤りがあったため、とも言われている。

これにより、Telstraなどの豪州国内ISPは著作権侵害の申し立てから保護されるものの、GoogleやFacebook、YouTubeなどのプラットフォームは法律上不安定な状態にある。

米国で運営されているテクノロジー企業に、豪州国内の企業と同様の保護を与えるため、著作権法の改正案が策定された。検索エンジンやソーシャルネットワークといったテクノロジー・プラットフォームへのセーフハーバー保護を強化するものであった。

しかしその改正法案は11時間ほど前に取り下げられ、夢は脆くも崩れ去った。

GoogleやFacebook、その他のプラットフォームにとって大打撃だ。政府は昨日、議会での審議を前に改正案を取り下げた。先週、マルコム・ターンブル首相がこの改正案を承認したばかりであったため、この取り下げは大きな驚きを持って迎えられた。

ミッチ・フィファルム通信大臣は「セーフハーバーに関連する条項は、議会への提出を前に削除された。他の重要な改革を遅らせずに、この改正案へのフィードバックを詳細に検討するための措置だ」との声明を公表した。

エンタメ業界団体の強力なロビー活動が奏功した結果と見て間違いない。ニューズコープが所有するThe Australianも、著作権者を後押しするシリーズ記事を掲載している。

今週公開された記事では、Googleやその他のプラットフォームが、米国や欧州でセーフハーバーによる保護を「躊躇なく悪用」し、著作権者は侵害コンテンツを削除するために膨大なお金や時間を浪費させられている、と非難している。

Googleなどの企業は、セーフハーバー条項のない国では、ビジネス展開やイノベーションにリスクを負うことになると主張している。数百万人の第三者が行った著作権侵害の責任を負うことになれば、莫大なコストが掛かる。リスクに見合ったビジネスとは言えないだろう。

スタートアップの業界団体StartupAUSは、今回の改正案の撤回を批判し、「オーストラリアの起業家への打撃だ」と批判した。

「オーストラリアの著作権法は、いまだインターネットの現実に追いついていない。法律はインターネットでビジネスする企業に、確実性や保護を提供できずにいる」とアレックス・マッコリーCEOは言う

「著作権セーフハーバーは、国際的なベスト・プラクティスであり、これなくしては、オーストラリアのスタートアップがコンテンツやアイディアの広大なグローバル市場に参加することはできない。政府には、セーフハーバー条項の必要性を再考するよう強く要請する」

しかし、エンターテイメント業界にとって、セーフハーバー保護はおいそれと認められるものではないようだ。

豪州レコード産業協会のダン・ローゼンCEOは、この撤回を歓迎し、今後同様の改正案を提出する場合には、事前に「第三者による、根拠に基づくレビュー」を行うよう求めた。
Australia Shelves Copyright Safe Harbor For Google, Facebook, et al – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: March 23, 2017
Translation: heatwave_p2p
カテゴリー: Copyright